カルチャー
2014年7月1日
認知症は意外な食材で予防できる!!
文・雨野 柊
アルツハイマー病は3型糖尿病
アルツハイマー病は"3型糖尿病"とも呼ばれるように、脳内のインスリンの効きが悪くなり、神経細胞がエネルギーであるグルコース(ブドウ糖)を使えなくなって死んでしまう、いわば"脳の糖尿病"です。
しかし、神経細胞はグルコース以外に「ケトン体」という脂肪酸の代謝産物をエネルギー源として利用することができます。ケトン体は、"中鎖脂肪酸"が肝臓で分解されて生成される物質です。そのケトン体を作る "中鎖脂肪酸"は、ココナツオイルに約60%も含まれています。アルツハイマー病の発症により、グルコースが使えない状態に陥っても、ケトン体が供給され続ければ、神経細胞はその活性を維持することができるのです。
実際、ココナツオイル摂取後のスティーブを調べると、血液中のケトンレベルが上昇していることが確認できました。しかし、その後の検査で、ケトン体の血中濃度の上昇は長時間続かないことがわかったのです。そこで、ココナッツオイルを朝、昼、晩と日に3度食べさせてみたところ、スティーブの状態は目に見えて安定していきました。
このスティーブの例からもわかるように、認知症はある日突然発症するのではありません。脳の神経細胞がエネルギーを取り込めなくなるにつれて、本人も気づかないうちに、ゆっくりと進行していきます。神経細胞が取り返しのつかない大きなダメージを被る前に、ケトン体を摂取してエネルギーを与えておけば、認知症の予防にもつながります。
ココナツオイルの摂取を初めてから5年後の2013年4月、メアリーはこう述べています。
「深刻な後退にも幾度か見舞われたけれど、わたしはまだスティーブを失っていない。日に数回、わたしをぎゅっと抱きしめて、愛しているよと言ってくれる。これ以上、何を望むことがあるだろう」
アンチエイジングにも効果が!
スーパーモデルのミランダ・カーも愛用していることで、一躍ブームとなったこのココナツオイル。日本でもTBSの『はなまるマーケット』(番組終了)やNHKの『あさイチ』でその効果が紹介されると、売り切れ続出となりました。
ココナツオイルが体内で分解されてできるケトン体には、活性酸素を押さえる働きもあり、マウスの実験では、活性酸素のみを投与したマウスは老化現象が見られたものの、ケトン体の投与後に活性酸素を与えられたマウスには、活性酸素の影響が見られなかったそうです。
また中鎖脂肪酸は、CMでおなじみのように、体に脂肪がつきにくく、脂肪組織に蓄積された中性脂肪を減らす作用もあります。
このようにココナツオイルには、認知症予防、アンチエイジング、ダイエットと、幅広い効果が期待できます。
なお、ココナツオイルを選ぶ際には、品質にも注意が必要です。化学薬品やトランス脂肪酸を含まず、熱処理されていないものを選択しましょう。バージン(未精製)やオーガニック(有機)ものは、より高品質であるといえます。
ココナツオイルは独特の香りがありますが、エスニックのカレーに加えたり、サラダにしたりと、幅広く利用できます。時間のない方へのオススメはココナツオイルとメープルシロップ(砂糖でも可)のトースト。レシピはこちらのサイトをご参照ください(http://www.sbcr.jp/oil/)。
(了)
【著者】メアリー・T・ニューポート
医学博士。オハイオ州シンシナティで育ち、シンシナティ大学医学部を1978年に卒業。同地の小児病院で小児科の研修を受け、サウスカロライナ州チャールストンの大学付属病院で特別研究員として新生児学を修める。1983年にフロリダへ移住。タンパベイ地区の2か所の新生児集中治療室の医長として診療を続けている。夫スティーブ・ニューポートとは1972年に結婚し、娘ふたり、孫ひとりがいる。2008年に「アルツハイマー病の治療法があるのに、誰もそれを知らないとしたら?」と題するレポートを執筆。それが世界中に広まり、ギリシャで開かれた2010年アルツハイマー病国際会議での講演のテーマとなっただけでなく、この本のテーマともなった。
【監修】白澤卓二
順天堂大学大学院医学研究科 加齢制御医学講座 教授。神奈川県生まれ。1990年千葉大学大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。東京都老人総合研究所を経て2007年より現職。専門は、寿命制御遺伝子の分子遺伝学、アルツハイマー病の分子生物学、アスリートの遺伝子研究。日本抗加齢医学会理事ほか所属学会多数。著書は『100歳までボケない101の方法』『「砂糖」をやめれば10才若返る!』等ベストセラー多数。NTV「世界一受けたい授業」、TBS「はなまるマーケット」、NHK「いっと6けん」、テレビ東京「L4 YOU!」ほか、新聞、雑誌などでも活躍中。
【訳者】日向やよい
会津若松市出身。東北大学医学部薬学科卒業。おもな訳書に「新型殺人感染症」(NHK出版)、「異常気象は家庭から始まる」(日本教文社)、「プリンセス願望には危険がいっぱい」(東洋経済新報社)などがある。
医学博士。オハイオ州シンシナティで育ち、シンシナティ大学医学部を1978年に卒業。同地の小児病院で小児科の研修を受け、サウスカロライナ州チャールストンの大学付属病院で特別研究員として新生児学を修める。1983年にフロリダへ移住。タンパベイ地区の2か所の新生児集中治療室の医長として診療を続けている。夫スティーブ・ニューポートとは1972年に結婚し、娘ふたり、孫ひとりがいる。2008年に「アルツハイマー病の治療法があるのに、誰もそれを知らないとしたら?」と題するレポートを執筆。それが世界中に広まり、ギリシャで開かれた2010年アルツハイマー病国際会議での講演のテーマとなっただけでなく、この本のテーマともなった。
【監修】白澤卓二
順天堂大学大学院医学研究科 加齢制御医学講座 教授。神奈川県生まれ。1990年千葉大学大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。東京都老人総合研究所を経て2007年より現職。専門は、寿命制御遺伝子の分子遺伝学、アルツハイマー病の分子生物学、アスリートの遺伝子研究。日本抗加齢医学会理事ほか所属学会多数。著書は『100歳までボケない101の方法』『「砂糖」をやめれば10才若返る!』等ベストセラー多数。NTV「世界一受けたい授業」、TBS「はなまるマーケット」、NHK「いっと6けん」、テレビ東京「L4 YOU!」ほか、新聞、雑誌などでも活躍中。
【訳者】日向やよい
会津若松市出身。東北大学医学部薬学科卒業。おもな訳書に「新型殺人感染症」(NHK出版)、「異常気象は家庭から始まる」(日本教文社)、「プリンセス願望には危険がいっぱい」(東洋経済新報社)などがある。