カルチャー
2014年7月25日
「V-22オスプレイ」が日本全土の空を飛ぶ日
文/写真・青木謙知
  • はてなブックマークに追加

「V-22オスプレイ」の事故は、何が原因だったのか?


 通常飛行機は、離陸と着陸のために、一定距離の滑走を必要とする。その結果、飛行機の運用には滑走路を備えた飛行場の設置が不可欠となり、かなりの面積の土地を取得しなければならない。この問題を解決した乗り物がヘリコプターで、滑走なしで離着陸することができ、さらに空中で停止(ホバリング)することも可能という、1つの夢を実現した。その運用には、理屈上は、1機分の地上への投影面積のスペースだけがあればよい。

 しかしヘリコプターはこうした能力の実現のために、多くの代償を払っている。同じクラスの通常形式の飛行機と比較すると、搭載できる重量ははるかに軽く、飛行速度は圧倒的に遅く、そして飛行できる距離も大幅に短いのである。

ティルトローター機は、ヘリコプターの機能を有するとともに、固定翼機と同等の飛行性能や運動性を発揮できる ※クリックすると拡大

 このヘリコプターの欠点を克服し、通常形式の航空機並みの性能を得る試みが、「転換型」と呼ばれる航空機の開発であった。「転換型」航空機ではいくつかの方式が研究されたが、最も現実的で実用性が高いとされたのが、ティルトローターと呼ばれる方式であった。これは、主翼の両端にエンジンを付けてその先端にプロペラ(ティルトローター機ではプロップローターと呼ぶ)を取り付けて、離着陸時や飛行中にエンジン全体の角度を変えるというもの。エンジンを垂直にするとプロップローターの回転面が水平になってヘリコプターのローターと同じ働きをし(ヘリコプター・モード)、エンジンを水平にすれば回転面が垂直になるから、通常形式機のプロペラの機能を果たす(固定翼機モード)。これによって、ヘリコプターと通常形式機双方の利点を発揮することが可能となるのである。

 アメリカのベルとボーイングが協同で開発したV-22オスプレイは、世界初の実用ティルトローター機で、1989年3月19日に初ホバリングを行い、9月14日に完全な転換飛行に成功した。飛行の原理は、ヘリコプター・モードではヘリコプターと、固定翼機モードでは通常の航空機と同じで、ヘリコプター・モードではプロップローターが、固定翼機モードでは主翼が揚力を発生する。また固定翼機モードで機体の操縦制御を行うために、主翼と尾翼には舵が付いている。

 オスプレイは、アメリカ陸軍、空軍、海軍および海兵隊の全軍が揃って装備する計画だったが、陸軍はほかのヘリコプターでまかなえるとして装備を取りやめた。海兵隊は兵員などの輸送用に、空軍は特殊部隊の活動支援用に装備を進めている。海軍は、装備計画自体は維持しているものの、用途の共通性などから、海兵隊と機体を共用することも検討している。こうしたことから、計画当初は1,200機を越す製造が考えられていたが、いまではアメリカ全軍合計でも装備計画機数は450機強に減っている。ただオスプレイ自体はこれまでの試験や運用で、最大水平速度509km/h、最大巡航速度463km/h、最大搭載量9,072kg、航続距離1,296km以上(垂直離着陸・軽量時)/1,795km(短距離滑走離陸時)、ホバリング高度限界1,646mという、期待に違わない飛行性能を実証している。

 オスプレイで常に問題となるのが安全性で、確かに開発初期の段階で4件の重大事故を起こし、また実用化後も3件の墜落事故を起こしている。ただこれらの事故のほとんどが、乗員が機体に不慣れだったことが基本的な原因で、実用飛行時間が増えるに従って事故も発生しなくなっている。最後の事故は2012年6月13日で、それから2年あまりの間、重大事故が起きていないから、オスプレイの事故率はほかのヘリコプターと同程度になっていると見てよいだろいう。とはいっても事故が起きれば、地上にも被害をもたらす可能性があるので、アメリカ軍にはこれからも、その安全な運用に十分留意してもらう必要はある。



徹底検証!V-22オスプレイ
ティルトローター方式の技術解説から性能、輸送能力、 気になる安全性まで
青木謙知 著



青木謙知(あおき よしとも)
1954年12月、北海道札幌市生まれ。1977年3月、立教大学社会学部卒業。同年4月、航空雑誌出版社「航空ジャーナル社」に編集者/記者として入社。1984年1月、月刊『航空ジャーナル』の編集長に就任。1988年6月、月刊『航空ジャーナル』廃刊にともない、フリーの航空・軍事ジャーナリストとなる。航空専門誌などへの寄稿だけでなく新聞、週刊誌、通信社などにも航空・軍事問題に関するコメントを寄せている。著書は、サイエンス・アイ新書『ユーロファイター タイフーンの実力に迫る』『第5世代戦闘機F-35の凄さに迫る!』『F-22はなぜ最強といわれるのか』『ジェット戦闘機 最強50』『自衛隊戦闘機はどれだけ強いのか?』『世界最強! アメリカ空軍のすべて』『徹底検証!V-22オスプレイ』など多数。日本テレビ客員解説員。
  • はてなブックマークに追加