スキルアップ
2014年9月9日
なぜ米GEは創業事業の家電事業を売却したのか?
『1分間ジャック・ウェルチ』より
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9月8日、米ゼネラル・エレクトリック(GE)は家電事業をスウェーデンのエレクトロラックスへ売却することに合意しました。米GEにとって100年以上の歴史がある家電事業の幕を、なぜ閉じることにしたのでしょうか。それは、前CEOのジャック・ウェルチの名言を紐解くことで見えてきます。『1分間ジャック・ウェルチ』から、その名言を紹介しましょう。


【名言1】ナンバーワンかナンバーツーの事業だけで勝負をする。


 「ナンバーワン、ナンバーツー戦略」は、ジャック・ウェルチの最もよく知られた戦略である。

 ウェルチがCEOとして腕を振るったGEは米国を代表する複合巨大企業である。現在のビジネス分野は、家電から航空エンジン、金融、医療、電力、放送まで幅広い。

 だが、かつては総合電機メーカーで、全米最大ではあったものの、コンピュータでは業界の巨人IBMとの戦いに敗れて1970年にメインフレーム(大型汎用 機)から撤退、1980年代初めには家電やハイテク製品の輸出を強める日本企業に追い上げられて伸び悩んでいた。

 ウェルチは強い危機感を持っていた。GEには43もの事業部門と350の事業があるが、実際には15の事業が収益全体の90%を稼いでいるに過ぎない。それ以外の事業は収益性が低いか、市場での地位が低く21世紀につながる見通しがなかった。不振事業はもう切り離すべきだった。

 「市場でナンバーワンかナンバーツーの事業だけで勝負をするGEにしよう」

 勝ち残る事業は3種類だけだ。

(1)市場でナンバーワンかナンバーツー
(2)他社と差をつける優秀な技術を持つ
(3)ニッチ市場で優位性を発揮できる

 ウェルチはGEの事業を、この基準に従って書き分けた。継続事業は円の中に、やめたい事業は円の外に書いたのだった。

【名言2】穏やかでバランス感覚のあるリーダーになろうと思ってはダメだ。


 ナンバーワン、ナンバーツー戦略によって円の外に書かれた事業には、3つの選択肢が示された。再建か閉鎖か売却か。再建できなければ消滅である。

 当然、不満が噴き出た。3位、4位につけていて、それなりの利益を上げていても円の外に書かれるのかと。特にトースターやアイロンなど、電機メーカーとしてのGEの本流だった事業は猛烈に反発した。確かに家電製品は長くGEを支えてきた稼ぎ手だったし、米国のほとんどの家庭に行き渡ったブランドの象徴だった。

 しかし、それらが21世紀のGEを支えられるものではないことは明らかだった。すでに安価な日本製品に押され、GEの強みではなくなっていた。

 重要なのは伝統を守ることではなく、競争に勝つことである。

 ウェルチは、ジェットエンジンや新世代のプラスチック、医療用の画像診断機器など、他社が簡単には真似できない事業を選び、圧倒的に強くするために資金や人を投じることにした。家電製品や炭鉱といった117の事業は売却された。

 ウェルチは「穏やかでバランス感覚のある、思慮深いリーダーになろうなどと思っていてはダメだ」と言っている。そんなことでは、過去に大成功した事業や創業者に由来する事業をやめることなどできない。ウェルチは断固とした実行者だった。



1分間ジャック・ウェルチ
勝利に徹する不屈のリーダー戦略77
西村克己 著



【著者】西村克己(にしむらかつみ)
岡山市生まれ。芝浦工業大学大学院客員教授、経営コンサルタント。1982年東京工業大学「経営工学科」大学院修士課程修了。富士写真フイルム株式会社を経て、1990年に日本総合研究所に移り、主任研究員として民間企業の経営コンサルティング、講演会、社員研修を多数手がける。2003年より芝浦工業大学大学院「工学マネジメント研究科」教授、2008年より芝浦工業大学大学院客員教授。専門分野は、MOT(技術経営)、経営戦略、戦略的思考、プロジェクトマネジメント、ロジカルシンキング、図解思考。著書に、『よくわかる経営戦略』(日本実業出版社)、『論理的な考え方が身につく本』(PHP研究所)、『経営戦略1分間トレーニング』『1分間ドラッカー』『1分間コトラー』『1分間マイケル・ポーター』(共にSBクリエイティブ)など多数。
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