間違ったらダメだという価値観を、捨てる

　「石井さんは、何を聞かれても即答ですね」と言われます。
　自分の中で明確な軸がすでにあるから、決められるだけです。

　「ゼロ秒で決断することが正義。
　間違ったら、あとで『やっぱりやめた！』と開き直る」

　という軸を作ればいいだけなのです。

　「間違ったらどうしよう？」と考えている時間が、時間の無駄です。
　間違ったら、「ごめん。間違えた！」と言えばいいのです。

　そう決めた瞬間に、決断に「正しい決断」「間違った決断」が存在するという概念はなくなります。
　「ごめん。間違えた」
　と開き直れる度胸があるか、度胸がないかという問題に変わるのです。

　そもそも、多くの人が"正しい決断"をしようと思っています。
　違います。

　正しいものを選ぼうとするのは、「判断」です。
　間違ったものでも勇気を持って選ぶのが、「決断」です。

　10人中９人がいいなあと思っているものを選ぶのは、「判断」です。
　10人中９人があり得ないと思っているものを選ぶのが、「決断」です。

　「犬を飼おうか迷っている」というときにするのが「判断」。
　「キリンを飼おうか迷っている」というときにするのが「決断」です。

　家の庭でキリンを飼おうとするのは、10人中９人が間違っていると考えます。
　どう考えても、大変すぎるだろうと誰しも思います。
　そんななか、キリンを飼うのが「決断」です。

　常識的なことで迷うのは、しょせん「判断」なのです。

　「イケメンと付き合うべきだろうか」というのは「判断」。
　「借金１億円で、女癖も悪く、性格も悪い男と付き合うべきだろうか」というのが、「決断」です。

　判断をしている人に、個性は生まれません。
　決断をする人に、個性は生まれるのです。

時間をかけても実力以上の決断はできない

　「Ａにするか、Ｂにするか、ゼロ秒で決めてください」と言うと、
　「少し考えさせてください」と言う人がいます。

　時間の無駄です。

　少し考えてもゼロ秒で決断しても、今のその人の力量以上の決断はできないのです。

　「時速１５０キロのボールを投げてください」
　と言われて、

　「少し待ってください。これから練習しますので」
　と言っても、時速１５０キロのボールは投げられません。

　もし、ダルビッシュ投手ならば、言われた瞬間に投げることができるでしょう。

　その瞬間で投げられない投手ならば、少し時間をかけたくらいではできないのです。

　「この案件をやりますか？」
　と聞かれたら、ゼロ秒でＹＥＳかＮＯかを答えます。
　その時点でのあなたの力量において、ゼロ秒で決断するのです。

　すでに決断をするためのベースができていれば、ゼロ秒で答えられます。
　準備ができていなければ、いくら考えても、優れた答えは出ません。
　決断は考えることではなく、「準備」なのです。

（1）あなたが「このビジネスはいけるぞ！」とゼロ秒で下した決断
（2）ソフトバンクの孫正義社長が「このビジネスはいけるぞ！」とゼロ秒で下した決断

　この２つであれば、どちらが正しいでしょうか？

　もちろん、後者のはずです。
　その理由は、それまでの経験量が違うからです。
　それでも、「ゆっくり時間をかけて考えれば、いい決断が下せる」と考えている人
がいます。

　では、

（1）あなたが５年考えて、「このビジネスはいけるぞ」と下した決断
（2）孫正義社長がゼロ秒で「このビジネスはいけるぞ！」と下した決断

　であれば、どちらのビジネスが優れたビジネスでしょうか。
　間違いなく、ほとんどの方が後者を選ぶはずです。

　ということは、決断に時間をかけることに、意味はないのです。
　ゼロ秒で決断する以前に、経験値によって、勝負は決まっているのです。