スキルアップ
2014年12月15日
ビックデータのビジネス活用に役立つ「データ分析のフレームワーク」
『ビジネス活用事例で学ぶ データサイエンス入門』より
  • はてなブックマークに追加

「現状とあるべき姿」を把握する


 では、問題とはなんでしょうか?

 たとえば「ある商品の売上が下がってきている」という現象を考えてみます。売上は下がってはいるが、それが会社にとっては注力をしていない商品で、「近々販売を終了する」という前提があるなら、それは大きな問題にはならないでしょう。逆に、それが会社の収益に対して大きな影響をもつ商品である場合は、問題となります。

 また異なるケースとして「ある商品の売上が、上がってきている」という現象を考えてみます。普通に考えれば、売上が上がっている状況は、とくに問題にはならなさそうですが、「実はその商品にかけている広告費に見合っていない状況だった」という前提がついた場合、これは問題となります。

 このように「問題」は、そのときの、そのビジネスがおかれている環境から作り出される「あるべき姿」によって変わります。つまり、「本来あるべき姿」と「現状」にギャップがあってはじめて、問題となります。

「現象」と「問題」とを区別する


 データ分析においては、「現象」と解決すべき「問題」とは、明確に区別する必要があります。

 「売上が落ちている」や「顧客が離脱している」などは、ビジネスの文脈では通常「問題」として挙げられます。しかし、前述したようにデータ分析の文脈では、実はこれらはただの「現象」にすぎません。これらの「現象」をもとに、企画職・エンジニア職・サービス運用職など、ビジネス担当者でしっかりと議論し、解決すべき「問題」を見つけ出すことが重要です(図2を参照)。すなわち「あるべき姿」の当事者間での共有こそが、効果的なデータ分析を行ううえで必須となり、この共有こそが、データ分析の文脈では「問題発見」という言葉で発せられることが多いのです。

図2●解決すべき問題を見つけ出す ※クリックすると拡大

 「現象」が共有でき、「あるべき姿」が共有されたとき、はじめてデータ分析を行う土台ができたことになり、データ分析によってこの差異のもととなっている原因を検証していくというスタートが切れます。

問題発見のための3つの切り口


「あるべき姿」をイメージして、「現状」のギャップを意識する

 では、「問題発見」を行う、つまり、具体的な問題点を見つけ出すにはどうすればよいでしょうか? 問題を見つける効果的な方法の1つとして、「問題が起きていない状態=あるべき姿をイメージする」ことがあります。

 この状態を当事者みんなで考えていくことが非常に重要になります。「売上が上がった/下がった」ということは、データ分析を行ううえでは、現象でしかありません。そこに「あるべき姿」を考え、その「あるべき姿」と「現状」のギャップの構造を理解することで、初めてなにが根本的な問題なのか? を考えることができるのです。

 では、この「あるべき姿」と「現状」のギャップを理解するにはどうすればよいでしょうか? データ分析を用いたアプローチでは、まずデータを以下のような切り口で見ていくのが常套手段です。

(1)大きさを見る
(2)分解して見る
(3)比較して見る



ビジネス活用事例で学ぶ データサイエンス入門
酒巻隆治/里 洋平 著



【著者】酒巻 隆治(さかまき りゅうじ)
うらわ出身。株式会社ドリコム、データ分析グループ所属。得意技は、人間が環境に残す行動ログの分析。博士(環境学)。あたらしい自由を目指す通信会社で、マーケティングリサーチ、アイトラッキングなど、あたらしいマーケティング分析業務を経て、全社員英語で朝会を行う国産ECサイトの技術研究所に勤務。その後、ソーシャルゲーム、その他サービスのログ解析業を経て、DATUM STUDIO株式会社を設立。データ分析で会社を少しでもバラ色の未来にすべく、がんばっている。

【著者】里 洋平(さと ようへい)
種子島出身。株式会社ドリコム、データ分析グループ所属。得意技は、R言語によるデータ分析。Tokyo.R主催者。共著書に『データサイエンティスト養成読本』(技術評論社)、『Rパッケージガイドブック』(東京図書)がある。爆速の会社がまだ遅かった頃、その会社で推薦ロジックや株価予測モデル構築を行う。ついで遺伝子的な名前の会社で、データマイニングやマーケティング分析を行う。その後、データ分析環境の構築やデータ分析業を経て、DATUM STUDIO株式会社を設立。美しい統計理論を少しでもビジネス利用すべく、がんばっている。
  • はてなブックマークに追加