スキルアップ
2014年12月15日
ビックデータのビジネス活用に役立つ「データ分析のフレームワーク」
『ビジネス活用事例で学ぶ データサイエンス入門』より
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(3)比較して見る


 「比較して見る」とは、問題が起きているデータと、問題が起こっていないデータとを比較して、その違いがなにによって発生しているのかを見つけ出す方法です。

 下図ではMECE に分解した各売上要素について、一番いい時期の状態を「あるべき姿」として左側に、そして「現状」を右側に表しています。売上のギャップが出たときに、たとえば、このような図を用意すると、「購入者数」が落ちているから「売上」が落ちている、ということが明らかになります。このようにMECEで分解した各要素を比較することは、データ分析を実施していく切り口として必ず行うことです。

図4●データを比較して見る ※クリックすると拡大

 こうしてデータ比較を実施する分析軸については、ある程度類型化できます。まず時系列で比較する場合として、

・前日と当日の比較
・前週と今週との比較
・過去の同じキャンペーンを実施した時期と、今回のキャンペーンを実施した時期との比較

など、過去のデータとの比較があります。

 また他の類似商品・サービスとのデータを比較する場合もあります。たとえば、

・競合他社との売上比較
・社内のサービス間での利益比較

であったりします。

 ユーザ属性での分析も、よく行う方法です。たとえば、

・20代と50代では購買意欲が異なる(年代別)
・男性と女性とでは購買率が異なる(性別)
・関東と関西では好まれる色や形状が異なる(地域別)

など、ユーザの属性として収集されているカテゴリ間の比較などが考えられます。

企画、開発、データ分析者が「現状とあるべき姿」をしっかりと共有することが重要


 解決すべき問題が明確になったら、その問題を検証するために必要なデータを集め、分析し、実際にアクションを実行するかどうかを検討します。

 このようにフレームワークを使ってビジネスのデータ分析を行うわけですが、全部が全部、必ずしもこの手順を踏むわけではないし、この順番どおりやらないといけないというものでもありません。しかしながら、ある程度経験を積んだデータ分析者となると、このようなフレームワークを意識的あるいは、無意識に活用していることが多くなります。

 たとえば、「問題発見」の打合せを行っている時点で、「あのデータあるかな?」「ここのデータは取れるかな?」「もしない場合は、これで代替できないかな?」というような「データ収集」、あるいは、「このデータをこの手法で分析していくから、過去のこのデータが必要になるな」というような「データ分析」に関しても、意識して進めていることが多くなります。

 打合せにおいてもこれらを議論し、認識が合っているか確認します。また打合せの後に、別途、今は保存されていない「データ収集」について相談したりもします。

 こうしたことはデータ分析者の個々人が経験とともに蓄えていくスキルといえますが、「現状とあるべき姿」の概念に関しては、実際には、データ分析者というよりは、ビジネス企画、開発、運用などのメンバー、すなわちデータ分析の依頼者が考えるほうが、データ分析をうまく回していくうえでは適切と言えるでしょう。つまり、あるべき姿を依頼者と分析者の間でしっかりと共有し、実際のアクションに向けてデータ分析を実行していくのが、ビジネスのデータ分析においてなによりも重要で、この部分をしっかり行っていることが、効果の上げやすい方法論となるのです。

 より詳しいデータの収集や分析方法、リアルな事例をベースとしたフレームワークの実際の使い方などは、『ビジネス活用事例で学ぶ データサイエンス入門』で解説していますので、興味のある方は読んでいただけると幸いです。

(了)
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ビジネス活用事例で学ぶ データサイエンス入門
酒巻隆治/里 洋平 著



【著者】酒巻 隆治(さかまき りゅうじ)
うらわ出身。株式会社ドリコム、データ分析グループ所属。得意技は、人間が環境に残す行動ログの分析。博士(環境学)。あたらしい自由を目指す通信会社で、マーケティングリサーチ、アイトラッキングなど、あたらしいマーケティング分析業務を経て、全社員英語で朝会を行う国産ECサイトの技術研究所に勤務。その後、ソーシャルゲーム、その他サービスのログ解析業を経て、DATUM STUDIO株式会社を設立。データ分析で会社を少しでもバラ色の未来にすべく、がんばっている。

【著者】里 洋平(さと ようへい)
種子島出身。株式会社ドリコム、データ分析グループ所属。得意技は、R言語によるデータ分析。Tokyo.R主催者。共著書に『データサイエンティスト養成読本』(技術評論社)、『Rパッケージガイドブック』(東京図書)がある。爆速の会社がまだ遅かった頃、その会社で推薦ロジックや株価予測モデル構築を行う。ついで遺伝子的な名前の会社で、データマイニングやマーケティング分析を行う。その後、データ分析環境の構築やデータ分析業を経て、DATUM STUDIO株式会社を設立。美しい統計理論を少しでもビジネス利用すべく、がんばっている。
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