スキルアップ
2015年3月2日
決算書を読むコツは、目の運び方にあった!
文・前川 修満
貸借対照表も真っ先に「下」の項目から見る
同じように、貸借対照表においても、上にある資産の明細などをすっ飛ばし、一番下に記載されている「純資産合計」と「負債純資産合計」を真っ先に見るべきなのです。
貸借対照表というのは、会社の財政状態を示す書類です。
全体として財政状態が良好なのか悪いのかは、一番下に記載されている「純資産合計」と「負債純資産合計」を見れば、会社の財務状況の概略がわかるのです。
東京電力の場合、負債純資産合計が14兆6197億円に対し、純資産合計が8317億円ありますが、この2種類のデータを対比して読むのがコツです。
純資産合計の8317億円は、負債純資産合計の14兆6197億円と比べ、ずいぶん小さいのですが、これは東京電力の財務基盤が脆弱になっていることの表れです。
ちなみに、東日本大震災が起きる前の事業年度である2010年3月期における東京電力の純資産合計は2兆1606億円もありました。
つまり、東京電力は、2011年の東日本大震災による大損害によって、2兆円もあった純資産が見る見る減少してしまい、8000億円程度にまで減ってしまったのです。
実に前年比60%もの減少です。このように、東日本大震災によって、東京電力の財務基盤が極めて脆弱になったことが、貸借対照表の一番下で露わになっているのです。
先ほど「目は口ほどに物を言う」ということわざを引用しましたが、貸借対照表における「目」に相当するのが、負債純資産合計と純資産合計の2項目なのです。
ですから、貸借対照表についても、損益計算書と同様に、表の項目を上から順番に読むのではなく、真っ先に一番下の項目を見てほしいのです。
ここを先に見て、財務基盤が強固か脆弱かを見たうえで、ほかの項目に目を移してほしいのです。
ポイントは、「決算書を手にする人は、真っ先に、いちばん下に記載されている重要項目を見て、そのあとでほかの項目に目を移す」ということです。
これが、やさしく、手っ取り早く、正しい決算書の読み方なのです。
つまり、決算書は「下」から読む、が正解なのです。
このことは3月16日刊行の『決算書は「下」から読む、が正解!』(SB新書)でも詳しく説明していますので、興味がある方はぜひ読んでいただけると幸いです。
(了)
【著者】前川 修満(まえかわおさみつ)
1960年金沢市生まれ。公認会計士・税理士。日本証券アナリスト協会検定委員。同志社大学卒。澁谷工業、KPMG港監査法人(現、あずさ監査法人)を経て、フリーに。2006年にアスト税理士法人を設立。代表社員に就任し、現在にいたる。日本税務会計学会会員。著書に『決算書はここだけ読め!』『危ない会社は一発でわかる』(以上、講談社)、近著に『決算書は「下」から読む、が正解!』(SBクリエイティブ)などがある。
1960年金沢市生まれ。公認会計士・税理士。日本証券アナリスト協会検定委員。同志社大学卒。澁谷工業、KPMG港監査法人(現、あずさ監査法人)を経て、フリーに。2006年にアスト税理士法人を設立。代表社員に就任し、現在にいたる。日本税務会計学会会員。著書に『決算書はここだけ読め!』『危ない会社は一発でわかる』(以上、講談社)、近著に『決算書は「下」から読む、が正解!』(SBクリエイティブ)などがある。