カルチャー
2015年3月17日
航空戦力は開く一方!? 「爆買い」パワーがもたらす中国の軍事力強化
文・青木謙知
機数から見た戦力差は、日本とは開く一方
中国の現役最新小型戦闘機は殲-10で、2000年代前半に戦力化され、今日では搭載電子機器の新世代化やステルス要素の導入などの改良作業も実施されている。この機種に対抗するのは、F-2である。殲-10Aの最大離陸重量は、F-2Aの22,100kgに対して18,600kgと軽量で、そのため推力重量比が0.15kg/N(F-2Aは0.17kg/N)、翼面荷重は474.5kg/m2(同561.9kg/m2)と、ともにF-2よりもすぐれた数値を示しているが、大きな差ではない。しかしこうしたデータよりも重要なことは、日本ではすでにF-15もF-2も製造していないから機数が増えないのに対し、殲-10や殲-15ファミリーは確実に、それも年間数10機のペースで機数を増やしていくと考えられる点だ。戦闘機の機数から見た戦力は、これからは開く一方なのである。
日本は新戦闘機として、ロッキード・マーチンF-35AライトニングIIの導入を決めて、調達を開始している。当面の装備計画機数は42機だが、平成27(2015)年度までの累計予算化機数はまだ16機である。今後毎年度10機のペースで予算化できたとしても、42機の予算化が終わるのは平成30(2018)年度になり、42機目を受領するのは平成35(2023)年度という計算になる。中国のペースに追いつけないことは明白だ。
中国でF-35に対抗するのが、独自開発の第5世代戦闘機といわれる殲-31である。2014年のエアショー・チャイナでは、飛行展示も行った。まだ開発の初期段階ということもあってその能力は未知数だが、エンジンが双発である点を除けばF-35によく似ている、というのが世界的な評価だ。似ていることイコール能力同等ということにはならないし、特に第5世代戦闘機で重視されるステルス性やネットワーク接続性などは、見た目ではわからないので評価は難しい。しかし、将来的には艦上戦闘機にもなりえるともくされており、注目し続けなければならない機種だ。
中国でもう1機種、第5世代戦闘機とされているのが、殲-20である。総重量約36.3トンは、アメリカのF-22の30.1トンを凌ぎ、ロシアのスホーイT-50の37トンに匹敵するものであり、また中国でもっとも大きかった殲-8IIの18.9トンのほぼ2倍にもなっている。こうした大型の重戦闘機を装備できるようになったことも、特筆すべきことであろう。
筆者が執筆した3月刊行の『中国航空戦力のすべて』(サイエンス・アイ新書)では、第二次世界大戦後の中国の航空産業の勃興期から今日に至るまで、中国で開発され、また製造された航空機を、戦闘機を主体にほぼ全網羅した。近年の中国製軍用機が、決して侮れないものであることを知っていただきたい。
(了)
青木謙知(あおき よしとも)
1954年12月、北海道札幌市生まれ。1977年3月、立教大学社会学部卒業。1984年1月、月刊『航空ジャーナル』編集長。1988年6月、フリーの航空・軍事ジャーナリストとなる。航空専門誌などへの寄稿だけでなく新聞、週刊誌、通信社などにも航空・軍事問題に関するコメントを寄せている。著書は『F-2の科学』『徹底検証! V-22オスプレイ』『第5世代戦闘機F-35の凄さに迫る!』『F-22はなぜ最強といわれるのか』『ユーロファイター タイフーンの実力に迫る』『自衛隊戦闘機はどれだけ強いのか?』『世界最強! アメリカ空軍のすべて』『ジェット戦闘機 最強50』(サイエンス・アイ新書)など多数。日本テレビ客員解説員。
1954年12月、北海道札幌市生まれ。1977年3月、立教大学社会学部卒業。1984年1月、月刊『航空ジャーナル』編集長。1988年6月、フリーの航空・軍事ジャーナリストとなる。航空専門誌などへの寄稿だけでなく新聞、週刊誌、通信社などにも航空・軍事問題に関するコメントを寄せている。著書は『F-2の科学』『徹底検証! V-22オスプレイ』『第5世代戦闘機F-35の凄さに迫る!』『F-22はなぜ最強といわれるのか』『ユーロファイター タイフーンの実力に迫る』『自衛隊戦闘機はどれだけ強いのか?』『世界最強! アメリカ空軍のすべて』『ジェット戦闘機 最強50』(サイエンス・アイ新書)など多数。日本テレビ客員解説員。