カルチャー
2015年7月17日
楽しみながら理科の知識を深めよう! 親子でハマる科学マジック
文・渡辺 儀輝
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 科学実験ショーは科学館の人気コーナーの1つ。たくさんの親子連れ、子どもたちであふれかえり、売店で売られるショーでお披露目されたグッズは、帰りにはたちまち売り切れてしまいます。演出も最近はこったものが多く、浮いたり色が変わるのはもはやあたり前。科学的な素養(リテラシー)を高める目的ではあるものの、興味を引きつけるため、まるでマジックショーのようなものまででてきました。公民館で、子ども会の催しで、PTAの行事で実験ショーが行われることもめずらしくなくなり、ここ数年で大きなブームになっているようです。

 子どもといっしょに参加したおとなの中には、こんな気持ちになる人もきっといるはずです。

「自分もやってみたいな...」

 子どもだったころの思いがフツフツとよみがえり、ただ体験したり子どもを連れて行くだけでなく、自分でも演出してみたいと考えるのは当然です。仕事ではいろいろなプロジェクトを進めてきた人にとって、子どもたちから拍手喝采を浴びる実験ショーも魅力あるステージの1つでしょう。

 そのような場合、多くの人がインターネットを利用し、動画サイトからいろいろな実験例を拾い集めてきます。身近な道具、ペットボトルやら醤油やら油やらを用意し、はさみ、カッター、のりなどで装置をつくり、台所や書斎でコソコソと準備をする。子どもの喜ぶ顔を思い浮かべながら、あれだけ映像でしっかり見ているし、理科好きになってもらうためにも、ここは1つがんばらないと、などと考えながら。

 夕方になり、家族を前にして、いざ!とやってみると...、これがまったくうまくいかない。科学館ではあんなに簡単に学芸員の人がやっていたのに...。映像ではスルスルッとスマートに決めていたのに...。かっこわるいところを見られてしまい、あれれ? となってしまって、それっきり。逆に家族から励まされたり、なぐさめられたり。いやな印象しか残らなく、おとな自身が理科ギライになってしまうとか。けっこうそんな場面が多いと聞きます。

 科学マジックはきらびやかな演出の前に、いろいろ準備が必要です。いとも簡単にやっているように見えても、そこには間違いなく「コツ」というものがあります。そのコツを修得するためには、繰り返し繰り返し練習するだけでなく、演技者自身が「正しい科学の知識」をもっていることが必要です。なぜこんなふしぎなことが起こるのか、子どもたちの目線で、経験を交えながら、正しい科学用語を使いながら、論理的に説明できるといいですね。原理を知ると、奥が深いことにびっくりされるかもしれません。

 7月16日に刊行した『親子でハマる科学マジック86』は、このような「正しい科学の知識」に裏づけされた科学マジック集です。実物を見ただけ、インターネットの映像を見ただけではわからない裏側に潜むコツを、イラストを交えてやさしく解説しました。この本の発売を記念して、ここでは身近なものでできる定番中の定番の科学マジックを2つ紹介しましょう。



親子でハマる科学マジック86
渡辺 儀輝 著



渡辺儀輝(わたなべ よしてる)
1966年、北海道生まれ。北海道大学大学院地球物理学専攻修了。理学修士( 地球物理学専攻)。北海道当別高等学校、同南茅部高等学校、同函館東高等学校、市立函館高等学校(公立はこだて未来大学非常勤講師兼務)を経て、現在は立命館宇治中学校・高等学校専任教諭。京都市在住。函館新聞に執筆している「レッツトライ理科実験」(毎週土曜日掲載)は連載16年を超えるロングコラム。京都市内はもとより日本国中でサイエンスショーを開催し、日々、科学の魅力を伝えている。「青少年のための科学の祭典」函館大会事務局長を務め、日本物理教育学会より、学会賞である大塚賞( 実践部門)を平成17年度に受賞。著書に『おもしろ実験と科学史で知る物理のキホン』(サイエンス・アイ新書)、『なぜ救急車が通り過ぎるとサイレンの音が変わるのか』(宝島社)がある。
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