スキルアップ
2015年9月14日
データ分析とデータ整理は、根本的に違う!
[連載] できる人のデータ・統計術【1】
文・柏木 吉基
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もう1軸加えるだけでこんなにも世界が広がる


 次に、「それぞれの項目を改善すると、その結果として「総合評価」は改善するのだろうか」ということが関心事として考えられるのではないでしょうか。そのためには、各項目と「総合評価」との関連性の強さに着目します。そこで使えるのが「相関係数」と呼ばれるものです。相関係数が、「1」に近いほど「総合評価」との関連性が強いと言えます。
 相関係数算出の詳細な説明は省きます(Excelで簡単に出せます)が、各項目の「総合評価」との相関係数をもう一つの軸(横軸)に取り、散布図に示したものが図2のグラフです。

図2

 縦軸の高低は先の棒グラフと同じで、横軸だけが加わったことに着目下さい。分かり易いように、縦軸には「総合評価」の平均点である62点で、横軸には「相関がある」を判別する一つの指標として0.5に線を引きました。
 すると、各項目が全体を4分割したカテゴリーに分けられました。

左上:平均点が高いが、「総合評価」との関連性は薄い
左下:平均点は低いが、「総合評価」との関連性も薄い
右上:平均点は高く、「総合評価」との関連性も高い
右下:平均点が低く、「総合評価」との関連性が高い

 さて、みなさんであれば、どのカテゴリーをどのような理由で優先的に着手するでしょうか?
 例えば、次のような考え方ができることでしょう:

・平均点が低い項目は改善余地が多い。中でも「総合評価」への影響が高い「接客」や「待ち時間」の改善が最優先だ
・平均点が高く、「総合評価」への影響が高い「味」は、更に質を高めることで、レストランの圧倒的な強みにすることができる。それによって、「総合評価」を更に引っ張ることができるかもしれない。

 いずれにせよ、先に平均点1軸だけで出した結論「店の雰囲気の改善」は、全く意味がないとは言えないまでも、最優先事項とは言えないことが分かりますね。ここに多大なリソースをつぎ込んで点数が改善できたとしても、お客様はさほど気にしておらず、結果として総合評価は変わらず、リピート率の改善にも繋がりにくいというオチになり兼ねません。

データの組み合わせ=データ分析の視点


 この例は、無機質で平面的なデータを、多面的な視点で見ることで、多くの情報を引き出せる「データ分析」の基本的な考え方、見方を示しています。データ分析といっても、高度な分析手法を導入したわけでも、小難しい統計知識を持ちだしたわけでもありません。視点(軸)を一つ加えただけです。

 もちろん、この1軸にどのようなものを持ってくると良いのかは、事前にある程度の仮説とひらめきが必要なこともあります。そうでなくとも、いくつかの組み合わせを試してみて初めて価値ある組み合わせに出会うという地道なアプローチが必要な場合も少なくありません。

 逆に、このような視点の持ち方を知らずに、いくら高度な分析ツールを導入しても、データ収集にお金を掛けても、恐らく価値ある情報を引き出すことは難しいでしょう。なぜなら、ツールもビッグデータもそれだけでボタン一つでほしい答えをポンっとは出してくれないからです。

 私の研修や本、実務サポートでも、この点を身に付けることを重要なポイントの一つとしてフォーカスしています。これこそが「データ分析」の土台だからです。

(了)





それちょっと、数字で説明してくれる?と言われて困らない できる人のデータ・統計術
柏木吉基 著



【著者】柏木吉基(かしわぎよしき)
データ&ストーリー代表。多摩大学大学院 ビジネススクール客員教授。 横浜国立大学・亜細亜大学 非常勤講師。 神奈川県生まれ。慶應義塾大学理工学部卒後、日立製作所入社。2003年MBAを取得後、2004年日産自動車へ。海外マーケティング&セールス部門、組織開発部等を経て2014年独立。グローバル組織の中で、社内変革プロジェクトのパイロットを務め、経営課題の解決、新規事業の提案等、データやロジックを組織の意思決定に活かした数多くの実績と経験を持ち、これらを強みに活動している。現在、大手百貨店やメーカー、地方自治体などへの企業研修や実務で成果を出せるデータリテラシー定着のためのコンサルティングやスキル育成サポートを行なう。大学や大学院での実践的なビジネス授業も英語・日本語で展開している。世界120か国、旧東海道500キロを踏破。 著書に『それちょっと、数字で説明してくれる?と言われて困らない できる人のデータ・統計術』(SBクリエイティブ)など。
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