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2015年9月24日
湯煙の町にロボットがやってきた!(2)~城崎温泉pepperプロジェクト~
[連載] 湯煙の町にロボットがやってきた!【2】
文・三津田治夫
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東京藝術大学のpepperへの取り組み


ソフトバンクロボティクスの「pepper」

「科学」の部分を受け持つのが、今回取材した、平田オリザ氏と共に東京藝術大学ロボット・パフォーミングアーツ研究グループで「ロボットの社会実装」を推進する、力石武信氏である。グループでは現在、教育や医療などの社会的な現場にロボットを導入する活動を行っている。活動の一環としてロボットの地域社会への導入というプログラムが組み込まれている。そのプログラムの一つが、城崎温泉pepperプロジェクトである。

 pepperが城崎温泉に導入されることは、町の国際的集客力の強化という意義も込められている。城崎温泉には、世界中から人が集まる。さらに、城崎国際アートセンターがあるという立地から、町にはフランスの芸術家がよく訪れる。フランス人が集まればアメリカ人が集まり、アメリカ人が集まれば中国人、アジア人も集まる。そしてひいては世界中の人が集まるだろう、という将来の展望が織り込まれている。

城崎国際アートセンター (c)西山円茄

 もう一つは、温泉とはきわめて日本的な場である。日本的な場に日本の象徴ともいえるロボットが世界中の観光客を招いたら、観光地、ひいては日本のキラーコンテンツになる。科学・芸術振興、町おこし、コンテンツ提供、観光客誘致、観光地の国際化、実験、検証、など、城崎温泉pepperプロジェクトにはさまざまなゴールが幾層にも組み込まれている。数年規模で計画された、壮大な構想を持つプロジェクトである。

東京藝術大学で「ロボットの社会実装」を推進する力石武信氏

 まずは、pepperを現場に導入し、その機能をフルに駆使し、細かなアップグレードを加えながら、pepperに人間とのさまざまなインタラクションを与えていく。科学的な仮説を立てて検証しながらコンテンツを実装していくのではなく、あくまで現場に重点を置いた開発・実装をポリシーとする、と、力石武信氏は語る。コンテンツの実装と並行し、ロボット演劇で長年培われたノウハウを駆使し、pepperが人間に与える心理的な影響をジェミノイドなど他のロボットと比較する、などの実験も行われる。

 このプロジェクトでは非エンジニアの関与を重視している。力石武信氏と共にpepperのデモを作っている研究員は舞踊研究者の深澤南土実氏である。
 「専門家に知識が閉じないことがスタンダードになるキーワード」と力石氏は言う。pepperはそもそも市民社会に入り込んでスタンダードになるべきロボット。だからこそ「文系でも扱えるロボット」が重要だ。









Pepperプログラミング
基本動作からアプリの企画・演出まで
ソフトバンクロボティクス 村山 龍太郎 + 谷沢 智史、西村 一彦 著
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