ビジネス
2016年6月23日
英国離脱!? EUが抱える根深すぎる問題──世界史に学ぶ、国際ニュース
文・茂木 誠
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ユーロはどん詰まり


 1999年の誕生以降、通貨ユーロを導入する国は拡大を続け、約20か国で共通通貨として採用されています。

 しかし、今のユーロはどん詰まりの状態と言わざるを得ません。
 いちばんの問題は、ギリシアやイタリア、スペインなど財政赤字や経済面で足を引っ張っている国の存在です。

 たとえて言えば、大家族の中にほとんど働かずに趣味に熱中している兄弟が2~3人いる状態です。今は、ほかのお兄さんたちが一生懸命、面倒を見ていますが、このままダメな弟たちを一生面倒見るか、それとも勘当するか、覚悟を決めなくてはならないでしょう。

 財政赤字の問題を抱えているのは、ギリシアだけではありません。

 ギリシアに加えて、ポルトガル、イタリア、アイルランド、スペインも巨額の財政赤字を抱えていることが明らかになっています。
 これら5カ国の頭文字をとってPIIGS(ピッグズ)と呼びます。

 「イタリアは昔、ローマ帝国があんなにすごかったのに、今はなんでダメなの?」

とよく質問されますが、原因は宗教にあります。

 イタリアやスペイン、ポルトガルといった南ヨーロッパの国々が財政赤字に陥った原因は、彼らが信じるキリスト教のカトリック教会の教えにあるのです。
 中世のカトリック教会は、「蓄財は罪」と教えました。だから、お金が貯まったら教会に寄付することが奨励されていました。教会が販売する贖宥状(免罪符)というお札を購入すれば、罪をあがない、神の赦しを得ることができるというわけです。

 「金儲けは罪」
 「教会に寄進をすれば救われる」

という教えでは、頑張って働いて、お金を稼ごうというモチベーションが起こりません。蓄財より消費に励み、教会にどんどん寄進するような国民性が育まれていったのです。

 現在、財政赤字に陥っている南欧諸国とアイルランドがカトリック教国であるのは、偶然ではありません。

 また、イタリアやスペインは、ギリシアと同じく冷戦中は親米軍事政権で、さまざまな支援を受けられた。つまり「甘やかされていた」ことも財政が悪化した原因のひとつといえます。



ニュースの"なぜ?"は世界史に学べ
日本人が知らない100の疑問
茂木 誠 著



茂木 誠 (もぎ まこと)
駿台予備学校世界史科講師。 東京出身。大学在学中から塾で教壇に立ち、気がつけば駿台の講師になる。 iPadを駆使した視覚的講義は、多くの受験生から、圧倒的支持を得ている。「受験生が単語の暗記に追われて、世界史の醍醐味を知らずに受験を終えてしまうのは残念。その責任は、大学入試にある」と語り、細かな知識の暗記ではなく、世界史の「構造」を掴むことをモットーとしている。学習参考書を手掛ける一方、『経済は世界史から学べ!』『世界史で学べ!地政学』など、ビジネスマン向けの世界史学び直しの書籍もベストセラーになる。
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