ビジネス
2016年6月23日
英国離脱!? EUが抱える根深すぎる問題──世界史に学ぶ、国際ニュース
文・茂木 誠
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なぜドイツ経済だけが好調なのか?


 ヨーロッパの多くの国が財政赤字に苦しむ中で、ドイツ経済だけが好調を維持しています。

 資源に恵まれているわけでもないドイツが、なぜヨーロッパ経済全体を引っ張るような力強さを発揮できるのでしょうか。実は、この謎にもキリスト教が関係しています。

 カトリック教会は「勤労と蓄財は罪」だと説明しましたが、こうした教えを公然と否定したのが、ドイツのルターとスイスのカルヴァンです。いわゆる宗教改革ですね。

 彼らの教えを信じる新しいキリスト教徒を総称してプロテスタント(新教徒)といいます。

 プロテスタントは、寄付金集めに熱心なカトリック教会を否定し、勤労や蓄財を罪と見なさない。一生懸命働くことが、神のご意思にかなうことである、という教えです。教会で祈ることだけではなく、日々、自分の仕事を真面目に頑張ることを奨励された教徒たちは、がむしゃらに働きました。働くことが一種の信仰だったのです。

 このプロテスタントの勤勉さこそが、現代の「資本主義」のバックグラウンドとなっています。

 プロテスタントが広まったのは、ドイツ、イギリスをはじめとする北ヨーロッパの国々です。ちなみにフランスは、いちおうカトリックの国ですが、宗教改革の影響も強かったので、ドイツとイタリアの中間といえます。

 プロテスタントの教えが影響を及ぼしたのは、ヨーロッパだけにとどまりません。

 アメリカ合衆国が経済的な発展を遂げて、世界一の経済大国にのし上がったのも、プロテスタントという宗教的なバックグラウンドがあったからです。

 未知の大陸に渡って、アメリカ合衆国をつくったのは、主にイギリス系移民の新教徒(プロテスタント)でした。よく働く勤勉な人々だったからこそ、アメリカ合衆国は超大国となり得たのです。

 同じ時期にヨーロッパの移民が海を渡って開拓した中南米の国々が、アメリカ合衆国のような経済発展を遂げられなかったのはなぜでしょうか。合衆国と比べて資源も豊かなのに、なぜ...?

 中南米に乗り込んでいったのは、スペイン人とポルトガル人。
 つまりカトリック教徒だったのです。だから南欧諸国と同じように勤労に価値を見出せず、経済発展の面で後れをとったのです。このような歴史を見ていくと、宗教などの文化的背景が一国の経済にもたらす影響の大きさを実感できるでしょう。

(了)


ニュースの"なぜ?"は世界史に学べ
日本人が知らない100の疑問
茂木 誠 著



茂木 誠 (もぎ まこと)
駿台予備学校世界史科講師。 東京出身。大学在学中から塾で教壇に立ち、気がつけば駿台の講師になる。 iPadを駆使した視覚的講義は、多くの受験生から、圧倒的支持を得ている。「受験生が単語の暗記に追われて、世界史の醍醐味を知らずに受験を終えてしまうのは残念。その責任は、大学入試にある」と語り、細かな知識の暗記ではなく、世界史の「構造」を掴むことをモットーとしている。学習参考書を手掛ける一方、『経済は世界史から学べ!』『世界史で学べ!地政学』など、ビジネスマン向けの世界史学び直しの書籍もベストセラーになる。
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