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2016年11月24日
「ドンシャリ」それとも「ボーカル主体」? 自分好みの周波数特性を見つけて、心地よい音楽を聴こう!
文・ 中村和宏
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三択で自分好みの「周波数特性」を選ぶ


写真2●再生音源の周波数特性はフラット

 では、好みのスピーカーを見つけるコツは何でしょうか。私のお勧めは「自分の好みを知る」ということです。マーケットではあまりにも「原音忠実再生」が叫ばれ、なんだか「それがすべて」のようになっていますが、私が、多くの方と音についての話をしてきた経験では、一般的な方は大きく分けて「3種類の周波数特性のうちのどれかを好む」ことが多いようです。ということであれば、どの周波数特性が自分の好みなのか知っていれば、好みと違うスピーカーを選んでしまうリスクが減り、製品を選ぶときも絞り込めます。また、店員さんに自分の好みを伝えやすくなります。

 では、実際に見ていきましょう。再生音源の周波数特性はフラットです(写真2)。

写真3●「右肩下がり型」。多くの人が「心地良い」と感じやすい

 1つめは「右肩下がり型」(写真3)です。床面に設置するスピーカー(トールボーイ型)など、大型スピーカーに多く見られる周波数特性です。日本人でインストルメント曲が好きな方に多いようです。低周波が高周波よりやや強く、低周波から高周波にかけて「なだらかに」下がっていく周波数特性です。つまり「低音がしっかり出て、あまり高音がシャリシャリしない」音になります。多くの人が「心地良い」と感じやすい周波数特性です。

写真4●「ドンシャリ型」。ロックを好む人に向く

 2つめは、いわゆる「ドンシャリ型」(写真4)です。小型スピーカーから大型スピーカーまで、幅広い製品がこのタイプです。真ん中の周波数より低周波と高周波が強いグラフ形状になります。アメリカ人にこの型を好む方が多いようですが、手ごろな価格の製品は、大なり小なりこの型であることが多いです。低音と高音がともに強いので、真ん中の帯域を占めるボーカルは引っ込み気味ですが、ドラムやベースの音が強くなり高音も強めなので、右肩下がりよりも「バックの楽器の演奏がしっかり聞こえる」ようになります。ジャズや、タイトでハイファイ(高再現性)なロックを好む方に向いていることが多いです。

写真5●「かまぼこ型」。ボーカル主体で聞きたい人向け

 3つめは「かまぼこ型」です(写真5)。低周波と高周波が真ん中の周波数より弱いグラフです。要は「ドンシャリの逆」です。この周波数特性はあまりお国柄には関係なく、ポピュラー音楽のなかでも「ボーカル主体でオケの演奏があまり強くない曲」、いわゆる「歌モノ」を好む方はかまぼこ型を好むことが多いです。低音と高音が丸められる(≒弱い)のでソフトに聞こえることが多く、ボーカルが他の2つの周波数特性より断然前に出てきます。よって「オケよりボーカル主体で聴きたい」方が好むのです。「オケがボーカルを邪魔しない」という言い方をする人もいます。

 「ボーカルはしっかり」「オケは控えめ」が好みなら、かまぼこ型の周波数特性が好みと思われますから「ボーカルの再生に優れた」スピーカーを中心に探します。「ボーカルも大事だけどオケの演奏がしっかり聞こえるほうが好み」ならドンシャリ型の周波数特性が好みと思われます。「オケの演奏はしっかり聴きたいけど、シャリシャリするのはイヤ」「全体のバランスが良いほうがいい」なら右肩下がり型が好みでしょう。こうして自分の好みを見つければしめたものです。試聴のとき、そのスピーカーが自分の好みかどうかをすぐ判断できるからです。

 とはいえ、これはあくまでガイドラインです。自宅にスピーカーがあるならお気に入りの曲を聴いて、同じ曲をお店に持参して聴き比べてください。このとき、上の3つの周波数特性のうち、「自宅のスピーカーはどれだろう」「お店のこのスピーカーはどれだろう」と考えながら聴いてください。

 なお、1件目のお店でいきなり1台目のスピーカーを買うことはお勧めしません。何台ものスピーカーで同じ曲を再生して比較し、相対的に低音が強いか弱いか、高音が強いか弱いかを、まず実感してください。そこからゆっくりと候補のスピーカーを絞り込めば良いのです。焦りは禁物です。スピーカーは「ゆっくり、じっくり」選んでください。

(了)


本当に好きな音を手に入れるためのオーディオの科学と実践
失敗しない再生機器の選び方
中村和宏 著



中村和宏(なかむらかずひろ)
1967年、大阪府生まれ。5歳からピアノを習う。14歳のころからギターを独学で習得し、作曲も開始。自作曲を演奏するため、ベースも弾くようになる。慶應義塾大学経済学部入学後、バンド活動に勤しむ。ギター、キーボード、ボーカルを担当して、オリジナル・カバー問わずさまざまなバンドやセッションに参加。大学卒業後、サウンドデザイナーとして株式会社ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)に入社。効果音制作、音声収録、楽曲制作とゲームサウンド制作全般に従事。「エアーコンバット22」「タイムクライシス」など、おもにアーケードゲームのサウンド制作を手がける。開発機材の導入アドバイザー業務も並行して担当し、当時、まだポピュラーではなかった音響制作機材、Avid Technology「Pro Tools」の導入に関わる。2006年、バンダイナムコゲームス退社後、有限会社モナカに作・編曲家として参加。「テイルズ オブ イノセンス」(Nintendo DS)「同R」(PlayStation Vita)などのサウンドを担当。2010年、同社退社。現在はフリーランスの作・編曲家として活動中。民生機器の音響調整にも関わる。最新作は「タイムクライシス5」。
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