スキルアップ
2017年9月7日
練習問題で「インチキにダマされない」思考力を身につけよう
文・福澤 一吉
「自分がダマされるはずがない」「自分の会社が倒産するはずがない」「奥さんと別れて自分と結婚するはず」──誰が見ても、そうでないことは明らかなのに、それを当事者が信じてしまうのは、なぜなのでしょうか。それには「バイアス(偏見、先入観)」が関係してるようです。『論理的思考 最高の教科書』の著者である早稲田大学教授の福澤一吉先生に伺いました。
あなたは4枚のカードのどれを裏返す?
私たち人間の観察・認知には知らず知らずのうちに「バイアス」が入っているものです。バイアスという言葉の基本的な意味は「偏見、先入観」で、これはいろいろな文脈で使われますが、ここでは認知心理学や社会心理学で用いられる認知バイアスのことを指します。物事を観察したり認知する際に、その結果を知らず知らずのうちに歪めてしまうような思い込みのことを言います。
バイアスのうち、ここで紹介したいのは「確証バイアス」です。これは、人間の認知スタイルを知るうえでもっとも分かりやすいバイアスのひとつです。
確証バイアスを示す事例としては、ウェイソンという心理学者が1966年に報告した「4枚カード問題」が有名です。ちょっと抽象的な問題ではありますが、この問題を通して私たちの論証・推論スタイルを見ていきましょう。
まず、次のような4枚のカードがあります。どのカードも、一方の面に「文字(アルファベット)」が、もう一方の面に「数字」が書かれています。
「E」「4」「K」「7」
これらのカードには規則があります。
【もし一方の側に書かれている文字が母音なら、その裏に書かれている数字は偶数である】
というものです。この規則を、ひとつの仮説と見立ててもいいでしょう。その場合、4枚カード問題は、この仮説が正しいかどうかを検証する問題であると考えられます。
さあ、ここで質問です。ここに提示されているカードが上記の規則(仮説)に合致するかどうかを確認するには、どのカードを裏返すべきですか?
あなたならどうしますか。
「◯◯を裏返します。なぜなら、◯◯はこれこれしかじかだからです」
という理由を考えてみるといいでしょう。この問題を初めてご覧になる方は、ご自身で考えてから読み進めると面白いかと思います。
福澤一吉(ふくざわ かずよし)
1950年生まれ。1982年ノースウエスタン大学コミュニケーション障害学部言語病理学科を卒業後、東京都老人総合研究所(現地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)リハビリテーション医学部言語聴覚研究室研究員を経て、1998年より早稲田大学文学学術院心理学コース教授。言語病理学博士。専門は認知神経心理学。著書に『論理的に説明する技術』(サイエンス・アイ新書)のほか、『議論のレッスン』『クリティカル・リーディング』(NHK出版)、共訳に『議論の技法』(東京図書)など多数。
1950年生まれ。1982年ノースウエスタン大学コミュニケーション障害学部言語病理学科を卒業後、東京都老人総合研究所(現地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)リハビリテーション医学部言語聴覚研究室研究員を経て、1998年より早稲田大学文学学術院心理学コース教授。言語病理学博士。専門は認知神経心理学。著書に『論理的に説明する技術』(サイエンス・アイ新書)のほか、『議論のレッスン』『クリティカル・リーディング』(NHK出版)、共訳に『議論の技法』(東京図書)など多数。