ビジネス
2018年10月19日
実は知らないことばかり。サウジアラビアの政治事情
『学校では教えてくれない世界の政治』より
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サウジアラビア関連の記事が、連日メディアを賑わせています。記事の概要は、サウジアラビア政府に批判的だった記者が、トルコのサウジアラビア総領事館で行方不明になったというものですが、そもそもサウジアラビアが国政選挙のない絶対君主国ということを知っている人は、意外と少ないのではないでしょうか。ここでは、SBビジュアル新書『学校では教えてくれない世界の政治』から、サウジアラビアの政治事情について紹介していきましょう。


学費や医療費のみならず、住宅も無償支給!?


 サウジアラビア王国(以下「サウジアラビア」とする)は、中東にある絶対君主制の国家です。面積は約215万平方メートルであり、これは日本の5倍くらいになりますが、国土の約3分の1が砂漠地帯となっています。

 宗教について、サウジアラビアではイスラム教が国教とされ、国内にはイスラム教の最大の聖地であるメッカがあります。国民が他の宗教を信仰することは禁じられており、サウジアラビアの国籍を取得する際には、イスラム教への改宗が義務づけられています。

 経済については、世界第2位の原油埋蔵量を有し、比較的裕福な国といえます。国家による国民への支援は大きく、基本的に学費や医療費は無料、場合によっては住宅(手当)まで無償で支給されます。

立法権・行政権ともに、国王に集中


 サウジアラビアは絶対君主制の国なので、国家権力は国王に集中しています。サウジアラビアには首相もいますが、首相も国王が兼任します。

 そして、これを国会といえるかは別として、他国でいう立法機関にあたるものとして「諮問評議会」という機関があります。諮問とは"意見を求める"ことを意味しますが、この議会には「法案提出権」しかなく、実質的な立法権は国王に属します。「このような法律はどうでしょう」と意見を出す機関のイメージでしょうか。ちなみに、議員数は150人で、任期は4年です。

 この諮問評議会は一院制で、議員は専門的な知識などを有する、誠実で有能な30歳以上の生まれながらのサウジアラビア人から選ばれます。議員を選ぶのは国王であり、つまりは国王による任命制です。

 また、日本の内閣にあたる機関としては「閣僚評議会」という機関があります。

サウジアラビアの政治体制 ※クリックすると拡大


国民には全く選挙権がないのか?


 諮問評議会の議員は国王が任命するとなると、国民には選挙(権)がない?と思うかもしれません。確かに、国政レベルについては、国民に選挙権はありません。

 しかし、サウジアラビアにも日本の地方自治体にあたるような「自治評議会」という機関があり、この議員の選出については、国民に選挙権があります。この自治評議会のメンバーの3分の2が選挙で決まり、残りは政府から任命されます。2015年12月に行われた選挙では2,106もの議席数が争われ、6,917人が立候補しました。

 ただし、この自治評議会も地方政府に対する助言機関とされ、法令をつくる権限がないため、実質的に立法権があるとはいえません。しかし、自治評議会にも、街づくりなどに関して行政に助言をする権限がある以上、国民の意思が政治に反映される可能性はあります。2015年12月の選挙において、全体の投票率は47%とやや低めでしたが、自治評議会の権限から考えると、特に低い投票率ではないのかもしれません。



学校では教えてくれない世界の政治
コンデックス情報研究所 編/串田誠一 監修
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