ビジネス
2013年11月30日
ディズニーの仕事術。シンプルな目標と仕組みが大事
インタビュー・鎌田 洋
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今年で30周年を迎える東京ディズニーリゾート。リピート率90%以上の秘密はどこにあるのか。自分の企業に活かすことはできるのか。シリーズ累計63万部の『ディズニーの神様』シリーズの著者であり、東京ディズニーランドの全スタッフの指導、育成に携わってきた鎌田 洋 氏に、ディズニーのスタッフ教育法や「おもてなし」の精神について伺った。


ビジネスの原点は人を喜ばせること


───ディズニーランドのリピート率は90%以上と言われています。多くの企業が、その秘密を知りたいと思うのですが

 確かにいろんな企業が私のところにも聞きにきます。それに対して私は、ディズニーは「正道」、正しい道をやってるだけなんですよと応えています。「奇策はありません、当たり前のことを当たり前にやってるだけです」と。ビジネスの場合、それは人を喜ばせることです。

───人を喜ばせることで、お客さんが集まって来ると

 ディズニーの有名なエピソードに、雨が降ってパレードが中止になって、がっかりしているゲスト(ディスニーではお客さんのことをゲストと言う)を見たキャスト(ディズニーで働いている従業員のこと)が、ほうきの先を水たまりに入れて、筆のようにしてミッキーマウスの絵を描いたっていうのがありますよね。普通の企業なら、怒られますよ。仕事中にマンガ描いて遊んでるんじゃないって(笑) ところが、ディズニーでは怒らない。ゲストが喜んでいるのを見て、ほかのキャストも上司も「何で喜んだの?」て聞いて、「それ、いいね!」って言うんですよ。「それ、いいね!」って言えるかどうか。ディズニーで働いているキャストたちも含め、会社全体でお客さんを喜ばせようとして一生懸命なんです。

 先日亡くなった「やなせたかし」さんが言ってた言葉に「人間にとって、生きていく最大の喜びは人を喜ばせること」っていうのがあるんですが、私もいつも言ってるんですよ。「人を喜ばせることは人生の喜び」だと。ビジネスの原点はお客様を喜ばせること。そして、人生の喜びは周りの人を喜ばせること。だから、この2つがあれば、鬼に金棒ですよね。ディズニーは、お客さんを喜ばせる、おどろかせる、びっくりさせる、それに集中しているだけなんです。

───とてもシンプルですね

 そう、シンプル。ディズニーにはパッとかけたら、パッと変わるような金の粉のような仕組みがあるに違いないと思って、みんな私のところに話を聞きにくるんだけど、そういうものはないんですよ。


ディズニー ありがとうの神様が教えてくれたこと
鎌田 洋 著



【著者】鎌田 洋(かまた ひろし)
1950年、宮城県生まれ。商社、ハウスメーカー勤務を経て、1982年、(株)オリエンタルランド入社。東京ディズニーランドオープンに伴い、初代ナイトカストーディアル(夜間の清掃部門)・トレーナー兼エリアスーパーバイザーとして、ナイトカストーディアル・キャストを育成する。その間、ウォルト・ディズニーがこよなく信頼を寄せていた、アメリカのディズニーランドの初代カストーディアル・マネージャー、チャック・ボヤージン氏から2年間にわたり直接指導を受ける。その後、デイカストーディアルとしてディズニーのクオリティ・サービスを実践した後、 1990年、ディズニー・ユニバーシティ(教育部門)にて、教育部長代理としてオリエンタルランド全スタッフを指導、育成する。1997年、(株)フランクリン・コヴィー・ジャパン代表取締役副社長を経て、1999年、(株)ヴィジョナリー・ジャパンを設立、代表取締役に就任。著書に『ディズニーそうじの神様が教えてくれたこと』『ディズニーサービスの神様が教えてくれたこと』『ディズニーありがとうの神様が教えてくれたこと』(共に、SBクリエイティブ)、『ディズニーの絆力』(アスコム)がある。
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