ビジネス
2013年11月30日
ディズニーの仕事術。シンプルな目標と仕組みが大事
インタビュー・鎌田 洋
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風通しのよい環境を整えるには


 話は変わるけど、つい先日、私のセミナーに来ていた人で、何千回もディズニーランドに行っているという方とお話をしたんですよ。

───すごい回数ですね

 その理由を尋ねたら「ゲストの顔を見るのが好きだから」ですと。彼の答えは、アトラクションでも、ショップでも何でもないんですよ。そこで楽しんでるゲストの顔を見たいから来るんだって。それをいちばんよく表しているのが、ディズニーシーのゴンドラですね。

───イタリアのベネチアにあるような乗物の?

 私ね、ゴンドラに一人で乗るのが好きなんですよ。みんなカップルで乗りますよね。そして写真撮るとき、必ず向かいの人に頼むんです。それで、イヤだとう人は一人もいない。みなさん「いいですよ!」ってニコニコにしながら快諾する。誰もが仲良くなれる場所なんですよ。だから、企業も本当はそうならないといけないんと思うんです。最近、企業の中で働くのが辛いっていう感覚が蔓延してないですか?

───「ブラック企業」という言葉もありますよね

 もう最悪だよね。だって1日、何時間も同じ会社の中いるんだよ。その中で、お互いに助け合う精神がなかったら、我慢大会のために会社に行ってるようで、とてもつらいよね。だから同じ会社の中でも、お互いに助け合う組織文化、認め合う文化、そういたものを作っていったらどうかなって思うんですよ。企業の中でそれが成功しているのが「ピーチ」(LCC格安航空)。ピーチでは、社長も含め有志が集まって、いろいろなアイデア出しができるミーティングをたくさんやっているんですよ。「それいいね!」「やってみるか!」みたいな感じのね。そういうものが組織の中に根付いていてね。

───風通しがいいんですね

 そうそう。みんな風通しがいい組織文化ってほしがってるんだよね。それを実現するのが「多様性」じゃないかな。いろんな個性の集まった人たちがいて、いろんなアイデアが出てきて、新しい市場ができる。これはドラッカーの考え方なんですよ。ディズニーも、そういった多様性ってものを、よしとしますからね。たとえば商品開発に、「I have idea.」という制度があって、キャストのアイデアを商品化するという仕組みを取り入れている。それで、商品化になったものもけっこうあるんですよ。

───確かに、ディズニーって大きい組織なのに風通しがよくて、多様性がありますよね

 もちろん仕組みもちゃんとある。さっきも言ったように、いつも僕は、仕組みも大事だと言ってるのですが、ディズニーでは情報のツールを巧みに使って、ゲストのお褒めやお叱りの言葉などを、全キャストに配信している。それを専門に行う部署もあるんですよ。また、新しいアトラクションがオープンすると、カストーディアル(そうじを行うキャスト)も含めてすべてのキャストが、そのアトラクションを体験するチャンスが与えられる。このアトラクションってこういうものなんだって。体験して初めて分かるじゃないですか。これも、コミュニケーションの1つですよね。

───仕組みでキャスト同士がコミュニケーションできる環境が整っているのですね

 それが、大きな会社になると、縦割りだからね。縦割りだと、自分たちの情報は自分たちで消化してしまうんですよ。

───ほかの部署からは何をしているかが分からなくなると

 そうそう。よく企業が異業種交流と称して、いろんな企業さんと交わりを求めて、そういう講習に参加させるじゃないですか。もちろん、それは大事なんだけど、私は会社の中で異業種交流やったらどうかって。絶対風通しがよくなりますよ。

みんなに愛される「おもてなし」のヒミツ(ディズニーの仕事術)に続く


ディズニー ありがとうの神様が教えてくれたこと
鎌田 洋 著



【著者】鎌田 洋(かまた ひろし)
1950年、宮城県生まれ。商社、ハウスメーカー勤務を経て、1982年、(株)オリエンタルランド入社。東京ディズニーランドオープンに伴い、初代ナイトカストーディアル(夜間の清掃部門)・トレーナー兼エリアスーパーバイザーとして、ナイトカストーディアル・キャストを育成する。その間、ウォルト・ディズニーがこよなく信頼を寄せていた、アメリカのディズニーランドの初代カストーディアル・マネージャー、チャック・ボヤージン氏から2年間にわたり直接指導を受ける。その後、デイカストーディアルとしてディズニーのクオリティ・サービスを実践した後、 1990年、ディズニー・ユニバーシティ(教育部門)にて、教育部長代理としてオリエンタルランド全スタッフを指導、育成する。1997年、(株)フランクリン・コヴィー・ジャパン代表取締役副社長を経て、1999年、(株)ヴィジョナリー・ジャパンを設立、代表取締役に就任。著書に『ディズニーそうじの神様が教えてくれたこと』『ディズニーサービスの神様が教えてくれたこと』『ディズニーありがとうの神様が教えてくれたこと』(共に、SBクリエイティブ)、『ディズニーの絆力』(アスコム)がある。
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