ビジネス
2013年12月2日
みんなに愛される「おもてなし」のヒミツ(ディズニーの仕事術)
インタビュー・鎌田 洋
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今年で30周年を迎える東京ディズニーリゾート。みんなに愛されるディズニーならではの「おもてなし」の秘密とは? シリーズ累計63万部の『ディズニーの神様』シリーズの著者であり、東京ディズニーランドの全スタッフの指導、育成に携わってきた鎌田 洋 氏に、日本とアメリカの「おもてなし」の違いと労働環境の違い、ほかの企業との「おもてなし」の違いについて伺った(インタビュー前編「ディズニーの仕事術。シンプルな目標と仕組みが大事」はこちら)。鎌田さんから会社のリーダーや、若い人へのメッセージもあるので、ビジネスパーソンの方々は、ぜひ参考にしてほしい


アメリカと日本の「おもてなし」と労働環境の違い


───30年前に日本にディズニーランドが来たとき、アメリカではなく、日本のオリエンタルランドが運営したことが東京ディズニーランドの成功の要因の1つだと思うのですが、そこにはアメリカとは違う日本ならではの「おもてなし」の精神みたいなものがあったのでしょうか?

 それは日本人の緻密さですね。たとえば、地面に落ちているガムを掃除するとき、大きなヘラみたいガムストレイパーという機材を使うのですが、アメリカではそれで取るだけで終わりなんです。ところが日本人は、そのままだと跡が残るから溶剤を使って歯ブラシで1個1個きれいに取るんですよ。そういう、いい意味で愚直で緻密なところは、枚挙にいとまがありません。アメリカから派遣されてきた人たちは、「便器の裏側もチェックするんだ」「とにかく徹底してやるんだ」と、私たちに理想を教えました。われわれは、教えられた以上に、それを生真面目にやり切ったんです。それには驚いたでしょうね。彼らは、そこまでできないだろって思ってたはずですよ。

 もう1つ、労働環境の違いもあります。実は、ウォルト・ディズニーがもっとも頭を悩ませたのが、労働組合なんです。アメリカの組合というのは、電気屋だったり、掃除屋だったり、職種によって組合ができている。縦割りになっているんですよ。同じディズニーの中にいくつもの組合があって、例えば照明にゴミが溜まってても、カストーディアルは掃除できないんです。電気屋さんがやるんですよ。ウォルトが、カストーディアルに「何でこれを掃除しないんだ」って言うと、それは電気の組合のキャストの仕事を奪うからって。ウォルトにとっては、これは非常にバカげた話だったんですよ。ビジネスはチームでやるもの。きたないのを見つけたら、見つけた人がきれいにしろ、というのがウォルトの考え方だから。日本のディズニーでは、それができたんですよ。

───縦割りの弊害は、日本の企業の内部にも言えることですよね

 それは、本当に痛切に感じる。大企業になればなるほど、縦割りで、おかしなことになっている。お客さんをほっといて、会社の中で自分たちで仕事を作りあってる。自分の部署の業務でないと、ほかの部署の人間も入ってきて、また一から説明しなきゃいけないとか、何なんだろうかなって思うね。

───スピード感がないというか......

 ナンセンスだよね。だから日本の生産性が低いっていうのがよく分かる。日本の労働生産性って低いでしょ? ほかの先進国と比べるとものすごく低いんですよ。そりゃそうですよ。会社の中で仕事作りあってるんだから。お客さんの方を向いての仕事が少ないんだもの。
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ディズニー おもてなしの神様が教えてくれたこと
鎌田 洋 著



【著者】鎌田 洋(かまた ひろし)
1950年、宮城県生まれ。商社、ハウスメーカー勤務を経て、1982年、(株)オリエンタルランド入社。東京ディズニーランドオープンに伴い、初代ナイトカストーディアル(夜間の清掃部門)・トレーナー兼エリアスーパーバイザーとして、ナイトカストーディアル・キャストを育成する。その間、ウォルト・ディズニーがこよなく信頼を寄せていた、アメリカのディズニーランドの初代カストーディアル・マネージャー、チャック・ボヤージン氏から2年間にわたり直接指導を受ける。その後、デイカストーディアルとしてディズニーのクオリティ・サービスを実践した後、 1990年、ディズニー・ユニバーシティ(教育部門)にて、教育部長代理としてオリエンタルランド全スタッフを指導、育成する。1997年、(株)フランクリン・コヴィー・ジャパン代表取締役副社長を経て、1999年、(株)ヴィジョナリー・ジャパンを設立、代表取締役に就任。著書に『ディズニーそうじの神様が教えてくれたこと』『ディズニーサービスの神様が教えてくれたこと』『ディズニーありがとうの神様が教えてくれたこと』(共に、SBクリエイティブ)、『ディズニーの絆力』(アスコム)がある。