ビジネス
2013年11月6日
プレミアリーグの監督に学ぶプロフェッショナル・サラリーマンへの道
文・タカ大丸 (ポリグロット)
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カルロ・アンチェロッティの人心掌握術とは? サー・アレックス・ファーガソンはなぜ25年以上も選手たちに慕われ続けたのか? 弱小だった名古屋グランパスを生まれ変わらせ、圧倒的な成績と濃厚な足跡を残したアーセン・ヴェンゲルが日本から持ち帰ったものとは? プレミアリーグ監督たちが語るリーダーシップ論は、一般企業のマネージャーにも役立つはずだ。


カルロ・アンチェロッティの人心掌握術


 ここで目を閉じて考えてみてほしい。あなたがヘッドハンティングされたとする。新しい会社は、ワンマンオーナーが横暴の限りを尽くし、いまだに部下たちは全員かつてのカリスママネージャーを慕っており、彼の後任としてやってきたマネージャーたちはみな一年もしないうちにクビを切られていった―。

 日本企業ではどうか知らないが、外資系ならありそうな話ではないか。

 ちなみに、これは仮定の話ではない。現レアル・マドリード監督のカルロ・アンチェロッティ氏が実際にイングランドのチェルシーで直面した状況である。海外サッカーをご存知の方であればおわかりの通り、「横暴なワンマンオーナー」とはロマン・アブラモヴィッチであり、「部下たち」とはフランク・ランパードであり、ジョン・テリーであり、アシュリー・コールのことだ。そして「かつてのカリスママネージャー」とはジョゼ・モウリーニョにほかならない。

 こういう場合に考えられる方策としては、次のようなものがある。

1、 前任者とは全く違うアプローチをする。 
2、 前任者を知る、慕う部下たちをリストラする。
3、 自分は一歩引いたところで指揮し、人間関係に深入りしないようにする。

 ちなみに、プロ野球の世界では2はよくあることである。前任者を慕う部下、もそうだが、若手監督で現役時代を共にした選手を放出する監督は少なくない。

 しかし、アンチェロッティは違った。自ら選手の中に入っていき、個々の選手と人間関係を築く道を選んだ。その際にも、選手それぞれによって接し方を変えていたという。中には人前で怒られるのを嫌がる選手もいるし、それで平気な人間もいる。また、選手によっては腕を触られながら話しかけられることを好む者もいるという。全世界の注目と的となる集団を率いる男は、そんな細かいところにまで気を遣ってチームを動かしているのだ。


ザ・マネージャー
名将が明かす成功の極意
マイク・カーソン 著  タカ大丸 訳



【著者】マイク・カーソン(MIKE CARSON)
5年間にわたりマッキンゼー&カンパニーに勤務し、現在はアバーキン社の共同経営者として自身のコンサルティング事業を手掛ける。リーダーシップの専門家でもあり、マンチェスター・シティのファン。ウィンチェスター在住で、妻と四人の子供がいる。

【訳者】タカ大丸(たかだいまる)
有限会社オフィス・スカイハイ代表。英語同時通訳・スペイン語翻訳者のポリグロット。ほかに、韓国ドラマの字幕制作も手掛ける。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。現在もテレビ局での通訳、レポーターなどをしながらスペイン語の翻訳書『モウリーニョのリーダー論』『モウリーニョ成功の秘密』(ともに実業之日本社)、英語から 『クリスティアーノ・ロナウド』、『ソロ?希望の物語』を手掛ける。
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