スキルアップ
2013年12月19日
その交渉は間違っている! 絶対に負けない交渉の5大要素
『絶対に負けない交渉術 やってはいけない35のルール』より
  • はてなブックマークに追加

絶対にやってはいけない!......「交渉の5大要素を見落とす」


 交渉には確認すべき重要な要素が5つある。5つのうち1つでも見落としていると、理想通りの結果を得にくい。それは、次の5つである。

【交渉の5大要素】
・お互いの置かれた立場
・金銭的利害
・時間的制限
・オプションの有無
・感情的対立

 評価額5000万円の、ある家付きの土地(再建築不可物件=建て直しができない土地)の売買を例に、この5つの要素を考えてみよう。売り手は「なるべく早く売りたい」Aさん。買い手は「隣接する土地をぜひ手に入れたい隣人」Bさんである。

 交渉では、まず「お互いがどのような立場か」を確認する。

 この場合、Aさんの立場は相続税を払わなくてはならないから「なるべく早く売りたい」。Bさんは将来的に息子夫婦を近所に住まわせたいから「隣接する土地を是が非でも手に入れたい」という立場である。立場を明らかにして、絶対に譲れない条件を明らかにすることが大切である。

 次は「金銭的利害」を考える。金銭的に自分に「どんな損得があるか」である。

 この例の場合、5000万円の評価額だから、普通なら、「5000万円」と「家付きの土地」の売買交渉と考えるところだ。しかし、実は買い手のBさんの家は広い公道に面している。Aさんの土地は単独では再建築不可の安い土地だが、もし、Bさんの土地とくっつけることができると、再建築も可能になって土地の価値がぐーんと上がる。

 Aさんは、Bさんなら、ほかの人に売るよりも高く買ってもらえると思っている。Bさんとしては、買えば価値は確実に上がるが、現在の評価額は5000万円なのだから、5000万円で買いたいと考えている。

 3つ目は「時間的制限」を考えよう。Aさんは相続税の納税期限が迫っているので、すぐに売りたいと思っている。Bさんは特に急いではいない。だが、景気が低迷している今のうちに買っておいたほうが安くていいかもしれない、と悩んでいる。交渉では、時間的な期限があるのか、ないのか。あるとすれば、早めたり、遅くしたりすることでどんなメリットがあるのかをリストアップして検討しよう。

 4つ目は「オプション」。つまり、ほかの選択肢を考えてみよう。選択肢があるかどうかで、立場はかなり変わってくる。

 Aさんは、Bさんとの交渉がうまくいかなければ、家の裏手にあるCさんに「買ってもらえないか」と持ちかけるつもりでいる。オプションが増えたことで、必ずしもBさんに売る必要がなくなったので、交渉はAさんに有利になった。

 最後は「感情的対立」があるか、ないかである。

 AさんとBさんが交渉を進めるうちに、だんだん買い手のBさんが難色を示すようになった。なぜかはわからないが、突然「今回の売買はなしにしてもらいたい」と息巻いてきた。しばらくしてわかったことだが、交渉のさなか、Aさんの家のおばあさんが、Bさんの奥さんに対して、ひどい罵詈雑言を浴びせたことから、「絶対にAさんの土地は買いたくない」と言い出したのだった。

 いくらそれまで交渉がうまくいっていようと、感情1つで、突然、決裂することもある。「感情」には常に目を光らせている必要があるのだ。

 最終的に、AさんがBさんに謝罪の意味も込めて、当初の評価額5000万円で物件を売ることで交渉は成立した。

 どのような交渉であろうと、「交渉の5大要素」は、ついて回る。見落とすと後で取り返しのつかないこともあるので、十分注意したい。

【勝つためのルール】
「お互いの置かれた立場」「金銭的利害」「時間的制限」「オプションの有無」「感情的対立」の「交渉の5大要素」を常に意識する


絶対に負けない交渉術 
植田 統 著



【著者】植田 統(うえだ おさむ)
弁護士、国際経営コンサルタント、名古屋商科大学教授。1957年生まれ。1981年東京大学法学部卒業。ダートマス大学経営大学院にてMBA取得。成蹊大学にて法務博士取得。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)、ブーズ・アレン・ハミルトン、野村アセットマネジメント、レクシスネクシス・ジャパン代表取締役、世界最大の企業再生コンサルティング・ファームであるアリックスパートナーズでライブドア、JALの企業再生を担当し、弁護士、国際経営コンサルタントとして独立。著書に、『45歳からの会社人生に不安を感じたら読む本』(日本経済新聞出版社)、『銀行から「金を返せ」と言われたら読む本』(光文社)など。
  • はてなブックマークに追加