スキルアップ
2013年12月19日
その交渉は間違っている! 絶対に負けない交渉の5大要素
『絶対に負けない交渉術 やってはいけない35のルール』より
絶対にやってはいけない!......「自己アピールしない」
日本人は、自己アピールを苦手とする人が多い。慎み深い国民性によるのかもしれないが、それでは、交渉を有利に進めることは難しい。
交渉の際は、自分や自分の会社の強みを会話の中に取り入れ、うまく自己アピールすることを意識しよう。自己アピールをする際のポイントは次の3つだ。
【交渉での自己アピールのポイント】
1)必ず紙の資料を揃えて渡す
2)資料は、「相手が社内でそのまま使える、わかりやすいもの」にする
3)「自分の強みが、どのように相手のメリットになるのか」を伝える
それぞれのポイントについて説明する。
1)必ず紙の資料を揃えて渡す
たとえば、銀行で住宅ローンを受けるための交渉をするとしよう。融資の限度額や金利は、誰でも同じわけではない。審査があり、個人の信用状況、すなわち、年収や勤務している会社の信用度、担保力があるか否か、などによって上下する。大企業に勤めていたり、勤務期間が長かったり、収入の安定している公務員であれば、たいがい有利に借りられる。
勤めている会社が小さくて勤務期間が短い場合や、自営業で収入が不安定な場合は、金利が高めになったり、融資の額が限られる可能性がある。融資の担当者が、「聞いたことのない会社だ。信用できるのだろうか」「自営業だって? ちゃんと返せる見込みはあるのか」と心配するからだ。
こうした場合に、有利な条件でローンを借りるには、どうすればよいか。
自分の会社のことが相手にわかる資料(経営状況のわかる「決算書」や、何をやっている会社かわかる「会社案内」、製品がわかる「製品カタログ」など)を揃えて渡すのだ。もちろん、渡すときには、真摯な態度でしっかり説明も加えよう。融資担当者を「なかなか見込みがある会社だ。これなら安心だ」と思わせることができればしめたものだ。条件もよくなるだろう。
気をつけたいのは、口頭だけの説明で済ませないこと。勤めているのが、いくらいい会社であっても、言葉だけで相手から信頼を得るのは難しい。忘れてしまう場合も大いにあり得る。きちんと目に見える資料を渡そう。
自営業の場合も同様だ。確定申告書を提示するのはもちろんのこと、どんな仕事をしているのか、相手がわかるような資料を揃えることだ。
知り合いのフリーの編集者は、自分がこれまでに手掛けた代表的な本や雑誌のリストを作って提出するとともに、現物を持っていって銀行に説明した。彼はめでたく低金利で、自分の希望額の住宅ローンを組むことができたそうだ。
融資の交渉に限らず、説得力のある資料は、相手の信頼を得るのに効果的である。
2)資料は、「相手が社内でそのまま使える、わかりやすいもの」にする
資料をしっかり作っておくと、相手が社内の確認を取ったり、稟議を通す(=社内で承認を取る)ときにも役立つ。あなたとの交渉の窓口になってくれた担当者が、社内であなたやあなたの会社のことを説明しやすいように、わかりやすい資料を作ってあげることがポイントだ。
3)「自分の強みが、どのように相手のメリットになるのか」を伝える
交渉の際のもっとも大切な自己(自社、自社製品)アピールのポイントは、アピールの内容と、相手のメリットが一致していることである。
先ほどの住宅ローンの例で考えると、こういうことだ。
自己アピールの内容=「私は安定した収入のある、信用のおける人間である」
銀行が融資先に求めるもの(メリット、求めているもの)=「信頼のおける借り手(ちゃんとお金を返す人)」。
口にこそ出さないが、銀行に融資申請のための書類を提出するということは、「私はこれだけ信頼のある人間ですから、お金はちゃんと返します。私がお金を借りれば、あなたの銀行はちゃんとお金が返してもらえて利子も儲かります。だから、私にお金を貸してくださいね」と言っているのと同じだ。
面接の場合で考えるともっとわかりやすい。たとえば、欧米を中心に店舗展開する衣料品メーカーに就職の面接に行ったとしよう。
「私は帰国子女で英語とフランス語ができますから、ぜひ、私を雇ってください」
これだけでは十分な自己アピールにならない。
「私は帰国子女で英語とフランス語ができます。グローバル化が進んでいる中、御社は欧米を中心に業務を拡大しています。私は語学力を生かし、現地採用の社員と本社とのコミュニケーションを円滑にし、御社のさらなる世界進出に役立ちたいと考えています。ぜひ、私を雇ってください」
と言えば、相手も大きくうなずき、真剣に耳を傾けるはずだ。つまり、相手のメリットを明確に伝えることで、初めて自己アピールが最大の効力を発揮するのだ。
簡単にまとめると次のようなステップだ。
【上手な自己アピールの3ステップ】
STEP1「当社のAという商品にはBという強みがあります」(自分の強みを伝える)
STEP2「Bは御社の○○に役立ちます」(相手のメリットと結びつける)
STEP3「だから商品Aを買ってください」(売り込む)
STEP2をうまく説明することで、交渉を自分に有利に進めることができる。交渉に臨むときは、自分の強みがどう相手のメリットにつながるか、自分は相手に対してどんな価値を提供できるか、をよくよく考えよう。
【勝つためのルール】
自分の強みと相手のメリットを結びつけて話すと、相手は耳を傾けてくれる
(了)
【著者】植田 統(うえだ おさむ)
弁護士、国際経営コンサルタント、名古屋商科大学教授。1957年生まれ。1981年東京大学法学部卒業。ダートマス大学経営大学院にてMBA取得。成蹊大学にて法務博士取得。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)、ブーズ・アレン・ハミルトン、野村アセットマネジメント、レクシスネクシス・ジャパン代表取締役、世界最大の企業再生コンサルティング・ファームであるアリックスパートナーズでライブドア、JALの企業再生を担当し、弁護士、国際経営コンサルタントとして独立。著書に、『45歳からの会社人生に不安を感じたら読む本』(日本経済新聞出版社)、『銀行から「金を返せ」と言われたら読む本』(光文社)など。
弁護士、国際経営コンサルタント、名古屋商科大学教授。1957年生まれ。1981年東京大学法学部卒業。ダートマス大学経営大学院にてMBA取得。成蹊大学にて法務博士取得。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)、ブーズ・アレン・ハミルトン、野村アセットマネジメント、レクシスネクシス・ジャパン代表取締役、世界最大の企業再生コンサルティング・ファームであるアリックスパートナーズでライブドア、JALの企業再生を担当し、弁護士、国際経営コンサルタントとして独立。著書に、『45歳からの会社人生に不安を感じたら読む本』(日本経済新聞出版社)、『銀行から「金を返せ」と言われたら読む本』(光文社)など。