カルチャー
2014年3月5日
実は低かった日本のスマホ保有率。世界1位のUAEで見た驚きの使い方
[連載]
住んでみた、わかった! イスラーム世界【1】
文・松原直美
世界から年間1000万人を呼びこむ都市ドバイ。世界一の高さを誇るビル、街中どこでもつながるWi-Fiなど、先端的な近未来都市である一方で、そこに暮らす人々はイスラームの教えに忠実に生きていた! 古来からの習俗を尊重しつつ、超近代的な生活をしている奥深いイスラームの世界を、『住んでみた、わかった! イスラーム世界』の著者・松原直美が紹介します。
日本よりも断然スマホ保有率が高いドバイ
スマートフォンの保有率ナンバーワンはどの国か? それはiPhoneを開発したアメリカでも、経済発展目覚しい中国でもありません。答えは日本が石油の輸入でお世話になっている国のひとつ──世界一高いビルがあることで有名なアラブ首長国連邦(UAE)です。2013年のグーグルの調査では、1位のUAEの保有率は73.8%。一方、日本の順位は低く、保有率は24.7%です。2014年博報堂調べによるインターネット使用者での保有率は55.2%になりますが、それでもアメリカやイギリス、オーストラリアなどの国々には及びません。
石油で得られる富が国民に分配されているUAEでは、国民の給料が高額なので、最新の電子機器を惜しみなく買う人が大勢います。筆者が日本語を教えていた大学でも、休み時間になると学生たちはスマホでメッセージを送ったり、フェイスブックのページを開いて友達の近況を確認したりしていました。
UAEでは1人あたりのスマホ保有台数も多いです。日本でも人気のiPhoneに加え、仲間同士で通信が簡単にできるブラックベリーという会社の機種や、韓国サムスン社のギャラクシーを数台あわせ持つ若者、特に男性を探すのは難しくありません。
UAEはインターネットの普及率も高いデータが出ています。2013年の調査では1位から9位まではすべてヨーロッパ諸国ですが、10位以降、アラブの産油国が顔をのぞかせ、UAEは17位につけています。気になる日本は29位。Wi-Fiが張り巡らされ通信環境が良好なUAEでは幼稚園からコンピュータの操作を習います。
インターネット選挙運動は、日本では2013年に解禁になりましたが、UAEでは2006年の国政選挙から始まっています。投票も、2006年から投票所に設置されている機械による電子投票が導入されています。選挙活動は街頭演説がいっさいなく、主にインターネットで行われるので、街中に連呼する候補者の姿はありません。
家の中も電化されています。UAE人の家では豪華なシャンデリアが映える応接間にたいてい大画面の液晶テレビがあり、子供たちは最新の家庭用ゲーム機で遊んでいます。
超近代的な生活と古来からの習俗が同居している
1971年の建国からわずか40年余りで大発展を遂げたUAEでは、多くの国民がこのように近代的な生活をしていますが、同時に622年に成立したイスラームの教えを忠実に守り、実行し続けています。
UAEの国籍を持つ男性は100%イスラーム教徒なので、各家庭では赤ちゃんが生まれるとすぐにイスラームの教えに則った儀式が行われます。まず、赤ちゃんが生まれた病院におじいさんやおとうさんがかけつけ、赤ちゃんの耳元に「アッラー(神)は偉大なり」という言葉を吹き込みます。こうすることで、生まれた子供がイスラームに敬虔(けいけん)な良い人間になる、と信じられているそうです。
名前は生後7日までに決めます。UAE人の名前はほとんどイスラームにちなんだ名前です。たとえば筆者が教えていたUAEの大学にて男子日本語クラスで「ムハンマド君」と呼ぶと、何人もの男性が返事をします。ムハンマドとはイスラームの開祖であり、神の言葉を人々に伝えた預言者の名前です。「神の僕(しもべ)」という意味の「アブドゥッラー」や「ムハンマド」の別称である「アフマド」も非常に多いです。女性ではムハンマドの愛妻「ハディージャ」や「アーイシャ」、愛娘の「ファーティマ」など、預言者の周囲にいた女性の名前をつける人が多くいます。イスラーム教徒は「イスラームに関連する名前をつける事は、神が喜ばれること」と考えているので、このような名前が多くなるようです。
【著者】松原 直美(まつばら なおみ)
1968年東京生まれ。上智大学経済学部卒業。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科国際関係学専攻博士後期課程退学。タイの公立高校日本語講師を経て、ドバイへ2006年に移動。UAE国立ザーイド大学にて日本語指導と空手道の初代講師として、2007年~2012年まで勤務。UAEでは茶道の振興にも携わった。現在はロンドン在住だが、UAEと日本の架け橋となるべく活動を続けている。著書に『住んでみた、わかった! イスラーム世界』がある。 ブログ「ドバイ千夜一夜」(http://blogs.yahoo.co.jp/dubai1428)は、2007年から連載をはじめ、もう少しで1000回を数える。
1968年東京生まれ。上智大学経済学部卒業。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科国際関係学専攻博士後期課程退学。タイの公立高校日本語講師を経て、ドバイへ2006年に移動。UAE国立ザーイド大学にて日本語指導と空手道の初代講師として、2007年~2012年まで勤務。UAEでは茶道の振興にも携わった。現在はロンドン在住だが、UAEと日本の架け橋となるべく活動を続けている。著書に『住んでみた、わかった! イスラーム世界』がある。 ブログ「ドバイ千夜一夜」(http://blogs.yahoo.co.jp/dubai1428)は、2007年から連載をはじめ、もう少しで1000回を数える。