カルチャー
2014年3月11日
地球にやさしい自然エネルギーの基礎知識
『知っておきたい自然エネルギーの基礎知識』より
自然エネルギーとは
自然エネルギーとは、風や光や水の流れなど、身の周りにある自然から生みだされるエネルギーのことをいいます。
「自然エネルギーと再生可能エネルギーはどう違うの?」という質問もよく聞かれますが、自然エネルギーに分類されるものは基本的に再生が可能なエネルギーであることから、両者に実質的な違いはありません。
●根源は太陽
ほとんどの自然エネルギーの源は、天空にある太陽です。人類は地球に誕生した当初から、熱や光のかたちで届く太陽からのエネルギーを利用してきました。太陽からの熱や光があったからこそ、生命が生まれ、死んだのちも石油や石炭などの化石燃料となって地中に残りました。現在も植物は太陽光を使って光合成を行い、自身を成長させ、酸素を生みだしています。
その一方で太陽からのエネルギーは、地球を温めることで温度差や気圧差を生み、対流を起こし、それが地球の自転とあいまって、風や海流をつくりだしています。
つまり、太陽光による発電だけでなく、風を使った発電やバイオマス発電も、太陽からもたらされたエネルギーをもとに電気を生みだしているわけです。こうしたことからも、自然エネルギーのベースにあるのは、広い意味での「太陽エネルギー」であるということができます。
なお、自然エネルギーは、発電、熱の直接利用、燃料化の3つに分類することができます。発電は、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、地熱発電、水力発電が大きな5本柱です。熱の利用としては、太陽熱のほか、温泉や地中熱の利用、バイオマス発電時の余熱の利用などを挙げることができます。
さまざまな植物からアルコールやガソリンをつくりだす、いわゆる「バイオ燃料」と呼ばれるものが、燃料化の代表です。
●新エネルギーと再生可能エネルギー
一方で、国が定めた「新エネルギー」という定義もあります。こちらも、「再生可能エネルギー」であることが第一条件であるため、その大部分が重なっていますが、空気熱や太陽熱、地中熱が除外されるほか、潮力・波力発電やフラッシュ蒸気方式の従来型の地熱発電も除外されるなど、若干範囲の狭いものになっています。
なぜ自然エネルギーなのか
「自然エネルギーをもっと活用すべき!」と声高に叫ばれたのは、地球温暖化が問題視され始めたころでした。
化石燃料の燃焼などにともなう二酸化炭素の増加が地球温暖化の主要因と見なされ、温室効果ガスである二酸化炭素やメタンをなるべく排出しないようにする努力が求められる過程で、二酸化炭素を排出しないか、してもごくわずかであるエネルギー供給源が強く求められたのです。
そのとき、多くの意見が一致したのが、「自然エネルギー」の利用でした。太陽電池を使えばクリーンな発電ができるはず! 石油に頼らず、ガソリンもアルコールも、植物からつくりだしていこう! そんな声が聞かれたのも、そのころでした。
しかし、当時はまだ太陽電池も高価で、広い土地に敷きつめて発電所をつくることなど不可能でした。バイオエタノールやバイオディーゼルをつくるために森を切り開いたことで、かえって二酸化炭素の排出量が増えてしまうような事件も起こりました。
それでも少しずつ、自然エネルギーの利用は増え、自然エネルギー系の発電施設の建設コストも大きく下がりました。この十年で、多くのノウハウも蓄積されました。
そして、原子力発電に「No!」を唱える人々が世界中に増えたいま、原子力に替わるエネルギー供給源として、自然エネルギーを利用することがさらに強く求められるようになりました。
いずれはなくなってしまう石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料に替わるものは自然エネルギー以外にはないという事実も、この新しいエネルギーの利用を強く後押ししています。
自然エネルギーの魅力
自然エネルギーの魅力は、なんといっても「尽きることのないエネルギー」であることです。
たとえば太陽は、仮に人類がこの先1億年以上、地上で繁栄を続けたとしても、問題なくエネルギーを供給し続けてくれます。
風も同じです。地球に大気があるかぎり、やむことはありません。また、地球が太陽をめぐり、月が地球をめぐるかぎり、潮汐力はなくならず、潮の満干も止まることはありません。そして、風があり潮の満干が続くかぎり、海原には波が存在し続けます。
そうした自然が生みだすエネルギーの一部を人類が利用したとしても、消費されるエネルギーは、ほんの誤差の範囲程度。使うはしから新たに生まれ、供給され続けます。つまり、そのエネルギー資源は無限であり、無尽蔵といっていい状況にあるわけです。
自然に生まれ、自然に消える。次の瞬間にはまた新たに生まれる。それが「自然エネルギー」の本質です。まさに、「再生可能エネルギー」なわけです。
自然のなかからエネルギーを取りだすことにコストはかかりますが、水も光も風も、おおもとのエネルギー自体は「無料」です。いずれは、規模の拡大や部品の量産化、法律の整備などによってコストも下がっていくことでしょう。
また、発電をするための機器や装置の製造時には二酸化炭素の排出がありますが、いったん発電を始めれば、基本的に二酸化炭素の排出量は0になります。大災害に強いものも多く、仮に破損や倒壊したとしても有害物質などは排出されず、環境に対して悪影響を与えたりしないことも大きなメリットです。
【著者】細川博昭
作家。サイエンス・ライター。鳥を中心に、歴史と科学の両面から人間と動物の関係をルポルタージュするほか、先端の科学・技術を紹介する記事も執筆。おもな著作に、サイエンス・アイ新書『鳥の脳力を探る』『身近な鳥のふしぎ』『科学ニュースがみるみるわかる最新キーワード800』や『江戸時代に描かれた鳥たち(ソフトバンク クリエイティブ)、『大江戸飼い鳥草紙』(吉川弘文館)、『インコの心理がわかる本』『飼い鳥:困った時に読む本』(誠文堂新光社)などがある。支倉槇人名義でも、『ペットは人間をどう見ているのか』(技術評論社)や『眠れぬ江戸の怖い話』(こう書房)などの著作をもつ。日本鳥学会、ヒトと動物の関係学会、生き物文化誌学会ほか所属。
作家。サイエンス・ライター。鳥を中心に、歴史と科学の両面から人間と動物の関係をルポルタージュするほか、先端の科学・技術を紹介する記事も執筆。おもな著作に、サイエンス・アイ新書『鳥の脳力を探る』『身近な鳥のふしぎ』『科学ニュースがみるみるわかる最新キーワード800』や『江戸時代に描かれた鳥たち(ソフトバンク クリエイティブ)、『大江戸飼い鳥草紙』(吉川弘文館)、『インコの心理がわかる本』『飼い鳥:困った時に読む本』(誠文堂新光社)などがある。支倉槇人名義でも、『ペットは人間をどう見ているのか』(技術評論社)や『眠れぬ江戸の怖い話』(こう書房)などの著作をもつ。日本鳥学会、ヒトと動物の関係学会、生き物文化誌学会ほか所属。