カルチャー
2014年3月11日
地球にやさしい自然エネルギーの基礎知識
『知っておきたい自然エネルギーの基礎知識』より
自然エネルギー利用の現状
自然エネルギーはやっと、本格的な利用に向けた第一歩が踏みだせたばかり。まだまだ実用的なレベルには達していません。
2010年度の日本の発電総量は9763億kWhでした。前年の2009年度は天然ガス(LNG)を使った発電が29.4%でトップでしたが、 2010年は原子力が30%を超えて1位。以下、天然ガス、石油、石炭と続きます。
自然エネルギーから水力などを除いた新エネルギーなどによる発電は、わずか1.2%。前年が1.1%であり、総発電量が9551億kWhから9763億kWhへと伸びたことを考えれば、順調な伸びともいえますが、全体から見るとまだまだ、というレベルです。
しかし、2011年度以降は全体の3割を占めていた原子力が大幅減となります。自然エネルギーが担うべき役割が、大きく重くなってくるのはまちがいありません。
●自然エネルギーの利用の割合
自然エネルギーによる発電量の推移を細かく追ったのが図2と図3のグラフです。2009年の時点で日本全体の3.36%を担っています。自然エネルギーのなかでもっとも活用されているのが水力(小水力:出力1万kW以下)ですが、水力発電と地熱発電はここしばらく、ほぼ横ばいの状態であることがわかります。近年大きく伸びてきたのがバイオマス系の発電であり、少し遅れて、太陽光発電と風力発電が伸びてきています。
表1は、自然エネルギーの2009年度の設備容量などを詳細にまとめたものです。
たとえば、地熱は太陽光の5分の1以下の容量しかありませんが、年間の発電量に大きな差はありません。これは、地熱の稼働率が高いのに比べて、太陽光は0.2ほどしかないことが原因です。
自然エネルギー系の発電については「設備容量だけで評価することはできない」ことを、こうした資料からも知ることができます。
なお、自然エネルギーの利用については、力を入れている国とそうでない国の差が大きくなってきています。特に力を入れているのがアメリカ、中国、ドイツといった国で、日本は地熱発電分野などで世界トップの技術力をもつものの、太陽光以外は大きく遅れをとっています。
まだコストの高い自然エネルギーの利用拡大を図っている国や地域に共通するのが、「固定価格買取制度」の導入です。2007年には51カ国だったものが2009年には75カ国にまで増えています。国に新しいエネルギーを定着させ、利用を拡大させていくためには企業の努力だけでは不足であり、国として明確な政策をもって法的な保護のもとで推し進めていく必要があることが、ここからもわかります。
なぜ普及してこなかったのか
これまで自然エネルギーが普及してこなかった最大の理由は、コストです。
たとえば地熱を発電に利用したいと思ったとき、地震の波形などを使って地下の構造を探ることは可能で、高温の地下水層の分布などを、ある程度確認することはできますが、実際に発電に利用できる量や温度があるかどうかは掘ってみないとわかりません。確実に利用できる保証はなく、苦労して数千メートル掘り下げても徒労に終わることもあります。掘削にはそうしたリスクもあるため、結果としてコストを引き上げるかたちになっています。
風力や太陽光の利用についても、初期の投資額がそれなりに多く必要とされるうえに、「風まかせ、お天気まかせのエネルギーなど使い物になるはずがない」という主張も根強かったため、資本をそこに大量投入することができませんでした。
原子力は安全で安心。低コストで電気をつくることができるので、どんどん利用していきましょうと、国が強く原子力を推し進めてきたことも、自然エネルギーを使った発電には逆風となっていました。しかし、それも過去のものとなりつつあります。
10年、20年という期間のなかで多くの施設がつくられてきたことで、自然エネルギーによる発電や燃料生産のコストは、以前に比べて大幅に下がってきました。それでもなお、石油や石炭、原子力を使うよりも割高ですが、国が補助金をだしたり、一定の金額で買い取ることを保証することが法律で定められるなど、業者が採算割れを起こさずに新規参入できる道が整備されつつあります。
(了)
【著者】細川博昭
作家。サイエンス・ライター。鳥を中心に、歴史と科学の両面から人間と動物の関係をルポルタージュするほか、先端の科学・技術を紹介する記事も執筆。おもな著作に、サイエンス・アイ新書『鳥の脳力を探る』『身近な鳥のふしぎ』『科学ニュースがみるみるわかる最新キーワード800』や『江戸時代に描かれた鳥たち(ソフトバンク クリエイティブ)、『大江戸飼い鳥草紙』(吉川弘文館)、『インコの心理がわかる本』『飼い鳥:困った時に読む本』(誠文堂新光社)などがある。支倉槇人名義でも、『ペットは人間をどう見ているのか』(技術評論社)や『眠れぬ江戸の怖い話』(こう書房)などの著作をもつ。日本鳥学会、ヒトと動物の関係学会、生き物文化誌学会ほか所属。
作家。サイエンス・ライター。鳥を中心に、歴史と科学の両面から人間と動物の関係をルポルタージュするほか、先端の科学・技術を紹介する記事も執筆。おもな著作に、サイエンス・アイ新書『鳥の脳力を探る』『身近な鳥のふしぎ』『科学ニュースがみるみるわかる最新キーワード800』や『江戸時代に描かれた鳥たち(ソフトバンク クリエイティブ)、『大江戸飼い鳥草紙』(吉川弘文館)、『インコの心理がわかる本』『飼い鳥:困った時に読む本』(誠文堂新光社)などがある。支倉槇人名義でも、『ペットは人間をどう見ているのか』(技術評論社)や『眠れぬ江戸の怖い話』(こう書房)などの著作をもつ。日本鳥学会、ヒトと動物の関係学会、生き物文化誌学会ほか所属。