カルチャー
2014年5月12日
夕方の「体温コントロール」で寝つきの悪さを解消!
[連載] 9割の不眠は「夕方」の習慣で治る【1】
文・白濱龍太郎
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夕方にチョコレートを食べてリラックス効果を実感する


 業務のコアタイムが仮に17~18時までとすると、ランチや昼寝などの休憩時間はあるものの、勤務時間中はずっと脳が覚醒しているような状態にあります。
 また、最近はひとり当たりの業務量が増え、「ブラック企業」という言葉が流行するほど、一部では残業や長時間労働も深刻化しています。

 そのような勤務環境だと、今度は覚醒スイッチをオフにすることが徐々に難しくなってきます。過剰な緊張感のもと、「失敗が許されない仕事だから」と長時間の覚醒状態が続けば、帰宅後になかなか脳が睡眠モードに入らないとしても不思議ではありません。
 私のクリニックに来る患者さんのなかでも、「起きられない」だけでなく、「眠れない」という入眠障害を訴える方が少なくありません。
 そして仕事に対して真面目で誠実な人ほど、この傾向は強いように感じます。

 注意しなければならないのは、睡眠は覚醒の反対だから、睡眠モードとは「何もせずぼーっとすること」というふうに考えてしまうことです。
 そうではなく、実践したいのは覚醒スイッチをオフにするというより、「睡眠モードをオンにする」という考え方です。

 仕事のことを考えないようにしようと思っても、先述の通り真面目なビジネスパーソンはなかなか頭を空っぽにすることはできません。
 それよりも、コアタイムを過ぎてからは、いくつかの習慣を心がけることで、脳がリラックスできるように働きかけることが大切です。スムーズな入眠は、夕方以降のアクションに左右されるといっても過言ではありません。

 アクションのひとつとして、体温コントロールの観点から肩甲骨のまわりを動かすなど、軽い運動で体温を上げておくことは先述の通り。
 それ以外にも、さらに簡単に行える実践法としておすすめしているのが、チョコレートを少し摂取することです。

 チョコレートの原料であるカカオは、抗不安や抗ストレスの作用があるとされるGABA(γ─アミノ酪酸)を多く含んでいます。つまりチョコレートを口にすることで、リラックス効果を手軽に得ることができるのです。

 もちろん、チョコレートを食べるだけで、絶大なリラックス効果を期待するのは非現実的です。肝心なのは、そういうアクションを習慣化して、少しずつ「睡眠モードをオンにする」ということ。
 チョコレートはあくまでそのきっかけです。前回取り上げた肩甲骨まわりの運動などとともに、覚醒状態から睡眠モードへの一日の切り替えの契機として取り入れることをおすすめします。


 いかがでしたでしょうか?
 今回は寝つきをよくすためには体温のコントロールが重要だということを説明しました。
 次回は、寝つきをよくするためにおすすめしたい夕方の習慣を具体的に取り上げます。

(第1回・了)
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9割の不眠は「夕方」の習慣で治る
白濱龍太郎 著



【著者】白濱龍太郎(しらはま りゅうたろう)
睡眠専門医・RESM(リズム)新横浜睡眠呼吸メディカルケアクリニック院長。関東初の睡眠時無呼吸症候群の病院長を務め、現在は新横浜に、寝具メーカー丸綿本社内に、睡眠障害、呼吸器内科疾患専門のクリニック「RESM(リズム)新横浜」を開設。いま多くのビジネスパーソンを悩ます、睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー、むずむず脚症候群、REM睡眠行動障害等の保険診療が可能な専門施設として注目される。治療にとどまらず、栄養指導や生活習慣指導を実施。自身も体調管理や健康への意識は高く、休日にはサーフィンやトライアスロンの大会に出るなどアクティブに活動。最近はワールドビジネスサテライト出演、日経新聞掲載をはじめマスコミ露出が多く、休診日には全国にて講演を行うなど、「睡眠」の分野でいま最も注目されるドクターである。著書に『病気を治したければ「睡眠」を変えなさい』(アスコム)、『9割の不眠は「夕方」の習慣で治る』(SB新書)などがある。
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