ビジネス
2014年5月15日
「ゲーミフィケーション」とは何か?
『ゲーミフィケーションは何の役に立つのか』より
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いかに顧客と従業員を満足させるか。ゲーミフィケーションの第一人者が、欧米そして日本のゲーミフィケーション最新事例から、あるべき施策を提案する『ゲーミフィケーションは何の役に立つのか』から、ゲーミフィケーションの基本的な考え方を紹介します。


 かつて、セオドア・ルーズベルトは「遊ぶときには、しっかり遊べ。仕事のときは、一切遊ぶな」と言った。

 テディ・ルーズベルト(「テディ」は「セオドア」のニックネーム)が堅実な労働倫理を信条としていたのは驚くことではないだろう。テディベアに名前を使われるような気さくで陽気なイメージの一方で、彼は厳格に作業をする職人だった。実際彼自身、虚弱な喘息持ちからノーベル賞を受賞するまでになり、実力以上の力を発揮した人だった。尊敬を集める米国大統領の一人としての彼の地位にはほとんど議論の余地はない。

 仕事と遊びは両立しないという考え方は、今でも広く受け入れられている。しかし、それは今では真実ではなくなってしまった。

 人口動態やテクノロジー、競争環境の度重なる変化の結果、目先の利く企業やNPO、そして政府組織は、組織を急速に改革する方法の1つとして、遊びやゲームにますます目を向けるようになっている。彼らはかつてないほど顧客をエンゲージさせ、社員との関係を構築して、イノベーションを推進しているが、それはほんの一昔前にはほぼ不可能と見られていた。彼らは、知性とモチベーション、そしてもっとも重要な彼らのコミュニティのエンゲージメントを整備し、それによってビジネスの目標を達成することに自分たちの強みがあると気づいたのである。

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 この概念はゲーミフィケーションと呼ばれ、ゲームやロイヤリティプログラム、行動経済学からのデザインコンセプトを実装して、ユーザーのエンゲージメントを促進するという考えだ(図0・1)。

 この概念は、すでに何年も前から現代のビジネスに水面下で浸透してきているが、ようやくそれが本来の形で表出してきているのである。ガートナー・グループは、2015年までに、世界中の大手企業の70%近くがこれを採用し、それによってイノベーション全体の50%が推進されると予測している。さらに、M2 Research(カリフォルニア州に拠点を置く、マーケティングのコンサルティングとビジネスインテリジェンスサービスを提供する企業)では、2010年代末までにゲーミフィケーションの技術とサービスに費やされる金額は、米国企業だけでも年間30億ドルにのぼると予測している。「ゲーミフィケーション」という言葉が、2010年までGoogleトレンドにランキングされることすらなかったことを考えれば、このような数字がさらに印象的なものだと言える。

 ゲーミフィケーションの、他に類を見ないほどの成功は、過去半世紀の間に出版された他のほとんどのビジネス戦略本から抜け落ちている、核心的なコンセプトと矛盾しない。つまり、従業員や顧客のエンゲージメントがなければ、最善と考えて立てられた戦略・戦術も、失敗に終わってしまうのだ。



ゲーミフィケーションは何の役に立つのか
事例から学ぶおもてなしのメカニクス
ゲイブ・ジカーマン、ジョスリン・リンダー 著/田中幸 訳/株式会社ゆめみ 監修



【著者】ゲイブ・ジカーマン(Gabe Zichermann)
顧客と社員のためのエンゲージメント戦略デザインの第一人者。Gamification Coの創設者でCEO、またGSummitの議長として、エンゲージメントの科学と、意味のある体験のデザインに力を注ぐ世界中のコミュニティを支援している。また、ゲーミフィケーションの専門家によるコンサルティング提供会社のDopamineの共同設立者でもあり、同社ではベンチャー企業やフォーチュン500に載る企業、そして政府機関と共同で、世界をもっとエンゲージできる場所に変えようとしている。もともとトロント出身。現在はニューヨーク市に住み、Founder Institute(世界最大の起業家養成プログラムで、世界55都市で展開)のニューヨーク市担当の共同取締役と、StartOut.org(同じく、起業家養成を目的とする非営利組織)の理事にも名を連ねている。

【著者】ジョスリン・リンダー(Joselin Linder)
2010年に、ゲイブ・ジカーマンとともに『Game-Based Marketing』を著した。彼女はNPR(元々はNational Public Radio。米国内の900ある公共ラジオ放送を束ねるNPO)の「This American Life」と「Morning Edition」にも貢献し、人間関係やユーモア、ゲームに関する書籍の著者でもある。また、彼女はAOLやGamification Coのブログに定期的にコラムを執筆している。
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