ビジネス
2014年5月15日
「ゲーミフィケーション」とは何か?
『ゲーミフィケーションは何の役に立つのか』より
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人々のエンゲージメントを生み、それを維持する「ゲーミフィケーション」


 しかし、注意を散漫にすることに影響を受けないとみられる産業が1つある。それはゲーム産業だ。傍目には、ゲームはこの問題の一部のように思えるかもしれないが、実際には、人々がつながり、そしてそのつながりを楽しんでいるとわかることが増えている分野は、ゲームだけなのである。

 実際、消費者がゲームをプレイする時間は年々増えている。米国国勢調査局は、米国の成人人口がビデオゲームをプレイする総時間は、2002年から2012年で2倍になったと推定している。さらに言えば、この数字は実際のゲーム利用の実態を極めて過小に伝えているとみられる。というのも、この推定には12歳以下の子供たちが含まれておらず、また(ともかくゲームをプレイするのだが)自らをゲーマーだと認識していない、ソーシャルゲームやモバイルゲームのプレイヤーも含まれていないからだ。実際、フェイスブックは、同社のサイトのゲームで遊ぶプレイヤーは、平均して1人当たり年間50ドルをゲームに費やしているとレポートしている。2010年のToday's Gamer Surveyでは、その前年に253億ドルがゲームをプレイするために費やされたと伝えているが、その金額は明らかに上昇傾向にある。

 同時に、レジャーの時間が減り、既存メディアの消費も減少している。このような傾向は、ゲームが他の娯楽を駆逐しつつあることを強く示唆している。このような消費傾向が今後15~20年続くと仮定すると、ゲームがすぐに他の娯楽を駆逐してしまうのは明らかだ。当然ながら、このことは、熱狂的ゲーマーであるミレニアル世代(2000年以降に成人を迎える世代)が経済に与える影響度の増大に繋がる。彼らの世界観は、私たちが知っている仕事や購買、市民生活やレクリエーションのあらゆる観点を、根本から変えてしまうだろう。

 つまりは、これまで普通と考えられていた状態には後戻りできなくなっているようなのだ。古典的なエンゲージメントのモデルは、もはや極端なマルチタスキングと増え続けるゲームのような娯楽に満ちた世界とは相容れない。このような新しい環境の下では、人はより大きな報酬や、刺激、そして評価を期待するようになる。今日刺激的なものが、明日には陳腐化すると考えられ、しかもそれは、我々が刺激の将来の姿がどのようなものかを想像する前に起きてしまうだろう。

 この大きな課題と社員や顧客とのエンゲージメント戦略で、どのように折り合いをつけていけばいいのだろうか?

 その答えを見つけるためには、以下に挙げる、相互に深く関係し合った、意味のある真実を受け入れなければならない。

1 世界はもはや、過去の平穏で集中しやすい状態に戻ることはない。社員と顧客のマルチタスキングが浸透している。

2 エンゲージメントこそ、あなたの社員と顧客が提供すべき最も価値のあるリソースだ。成功か失敗かは、どれだけのエンゲージメントを獲得できるかにかかっている。

3 競争相手に勝つための最良の方法は、社員や顧客の体験をできるだけ楽しく、そしてエンゲージできるものにすることである。


 要するに、解決策は毒をもって毒を制すところにある。人口動態や文化の傾向で、世界がさらにゲーミファイされると、組織もそれに合わせる必要がある。この認識が戦略に深く浸透するほど、エンゲージメントを獲得することが上手くできるようになる。

 エンゲージメントがなければ、才能や市場シェアで競う以前に、戦いに負けていることになる。

 ゲーミフィケーションは、人々のエンゲージメントを生み、それを維持するという点で、人がこれまでに発明した最高のツールである。ナイキ、SAP、ピアソン、セールスフォース、シスコ、ユナイテッド航空、マイクロソフト、ターゲット、スポッティファイ、ジーメンス、GE、IBM、マクドナルドや、それ以外にも世界中の数百にもおよぶ優良企業が、以前にも増してこのようなテクニックを使って競合と戦い、戦略を再考し、かつてないレベルのロイヤリティを獲得し、そして類いまれな成功者や革新者を採用して社内に保有し、その才能を活かしている。

 もしあなたが、テディ・ルーズベルトのように、ゲームや遊びはビジネスには不要だと考えるなら、その怖れを捨て去るのは今だ。ゲームがビジネス環境を変える様子を見たことがあれば、その知見を、会社の様々な側面を改善するために適用し始めるときが来たのだ。今、あなたは組織の戦略を、トップダウンとボトムアップの両方から考え直さなければならない。

(了)


ゲーミフィケーションは何の役に立つのか
事例から学ぶおもてなしのメカニクス
ゲイブ・ジカーマン、ジョスリン・リンダー 著/田中幸 訳/株式会社ゆめみ 監修



【著者】ゲイブ・ジカーマン(Gabe Zichermann)
顧客と社員のためのエンゲージメント戦略デザインの第一人者。Gamification Coの創設者でCEO、またGSummitの議長として、エンゲージメントの科学と、意味のある体験のデザインに力を注ぐ世界中のコミュニティを支援している。また、ゲーミフィケーションの専門家によるコンサルティング提供会社のDopamineの共同設立者でもあり、同社ではベンチャー企業やフォーチュン500に載る企業、そして政府機関と共同で、世界をもっとエンゲージできる場所に変えようとしている。もともとトロント出身。現在はニューヨーク市に住み、Founder Institute(世界最大の起業家養成プログラムで、世界55都市で展開)のニューヨーク市担当の共同取締役と、StartOut.org(同じく、起業家養成を目的とする非営利組織)の理事にも名を連ねている。

【著者】ジョスリン・リンダー(Joselin Linder)
2010年に、ゲイブ・ジカーマンとともに『Game-Based Marketing』を著した。彼女はNPR(元々はNational Public Radio。米国内の900ある公共ラジオ放送を束ねるNPO)の「This American Life」と「Morning Edition」にも貢献し、人間関係やユーモア、ゲームに関する書籍の著者でもある。また、彼女はAOLやGamification Coのブログに定期的にコラムを執筆している。
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