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2014年6月2日
『機動戦士ガンダム』が教えてくれたリーダーシップの本質
文・松山 淳/監修・株式会社サンライズ
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今年は『機動戦士ガンダム』放映開始35周年です。ロボットアニメの常識であった「正義の味方」が「ワル者」を懲らしめる「勧善懲悪」の物語パターンを『機動戦士ガンダム』は打破し、歴史を変えました。キャラクターの性格造形や微妙な心理描写の巧みさは、今も色褪せません。リアルな人間模様が描かれているため、大人になって見ると、幼い頃には理解できなかった深い学びがあることに気づきます。ホワイトベースの指揮官ブライト・ノアは実践経験が浅く、アムロという部下を抱え苦悩します。その苦悩は、今の職場でも現実の問題として起こり得ることです。ブライトとアムロの対立構造からリーダーシップの本質について考えます。


ブライトのセリフに見るリーダーシップの本質


 『機動戦士ガンダム』の主人公アムロ・レイは、機械いじりの好きな普通の少年でした。宇宙コロニー「サイド7」がジオン公国軍に攻撃され、偶然その場に居合わせたアムロがガンダムに搭乗しザクを撃破します。この戦闘で多くの軍人が戦死したため、地球連邦軍の新造戦艦ホワイトベースは、ミライ・ヤシマ、セイラ・マス、カイ・シデン、ハヤト・コバヤシなど、民間人をクルーにして戦い続けることになります。

 アムロもそのひとりであり、繰り返される戦闘により心のエネルギーが消耗し、第9話では無気力状態になってしまいます。艦長のブライト・ノアがガンダムでの発進命令を下しますが、アムロは部屋に引きこもって出てきません。激怒したブライトは部屋に乗り込み、アムロと口論になります。

 ベッドで横になるアムロを腕ずくで起こそうとすると、アムロは嫌味たっぷりに「そんなにガンダムを動かしたいんなら、あなた自身がやればいいんですよ」と言葉を吐き捨てます。ブライトは怒りをこらえ、悔しさを我慢して言います。

 "なに?できればやっている。貴様に言われるまでもなくな"(第9話『翔べ!ガンダム』)

 リーダーとしての苦悩がにじむブライトのセリフは、リーダーシップの本質を物語っています。その本質とは、次のことです。

 ☆リーダーシップとは、他人を通して成果をあげること。

 リーダーの成功とは、フォロワーのあげる成果の総和です。アムロに嫌味をいわれ、ブライトとしては、「ガンダムを操縦できたら、している」というのは本音でしょう。ですが仮にそれができたとしても、しないのがリーダーの役割です。なぜなら、リーダーが部下の仕事に手を出すことは、部下の自己成長を阻害する主要因だからです。

 手を出せば楽ですが、手を出さずにぐっとこらえる心の習慣がリーダーには求められます。つまり、リーダーシップの本質には、部下を成長させるために「待つ」ことの難しさがあります。よって、リーダーの心得として「3M」が言われます。

 「3M」とは、「巻き込む」「任せる」「待つ」です。

 リーダーシップとは、ビジョン(目標)の達成に向けて部下を「巻き込み」、仕事を「任せて」、成果が出るのをぐっと「待つ」こと。リーダーとは、待たされる人です。「待つ力」を身につけ、待つことに耐えることこそが、リーダーが遭遇するリアルな現実です。

 もちろん、リーダーシップのプロセスにおいて、教えるべきことは教え、ヒントを与える時には与え、諭すべきことは諭す「指導者」としての役割も忘れてはなりません。ただ、指導者としての側面が濃厚になり部下への介入頻度が日常的に高くなると、部下の過保護化につながり、自分ひとりの力で成果をあげる人材へと成長できなくなる可能性が高まります。それは、めぐりめぐって組織の成果を乏しいものにし、リーダー自身を困難な立場に追い込んでいくのです。

 ですので、部下の仕事をしてしまう「楽」よりも、仕事を任せて待つ「苦」を引き受けることが、成果をあげるリーダーになるための現実的な処方箋なのです。



『機動戦士ガンダム』が教えてくれた新世代リーダーシップ
松山 淳 著  株式会社サンライズ 監修



【著者】松山 淳(まつやま じゅん)
リーダーシップ・スタイリスト/コンサルタント/MBTI認定ユーザー。約9年間広告代理店に勤務後、アースシップ・コンサルティング設立。世界の企業が活用するMBTI自己分析メソッドを用い、リーダーたちがその人らしいリーダーシップを発揮できるようにサポートする。「リーダーの自己成長を支援し 人と組織を元気にすることで 世界の家族にたくさんの笑顔をひろげる」を使命に、リーダー層(経営者、起業家、管理職)を対象とした個別相談、コーチング、研修、講演、執筆活動など幅広く活躍中。著書に「バカと笑われるリーダーが最後に勝つ」「『機動戦士ガンダム』が教えてくれた新世代リーダーシップ」などがある
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