カルチャー
2014年7月14日
生きた善玉菌を摂っても、腸内に定着しない
[連載] 『腸をダマせば身体はよくなる』より【5】
辨野義己
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漢方薬の効き目をも左右する腸内細菌


 身体にやさしい薬ということで、漢方薬に注目している人は結構いるのではないでしょうか。実は、この漢方薬の効き目も、腸内細菌が高めてくれるのです。

 たとえば、高価な漢方薬として知られている朝鮮人参はサポニンが主成分ですが、サポニンを分解する酵素、サポニナーゼがなければ効き目は期待できません。

 ところが、人間はサポニナーゼという酵素を持っていないのです。では、なぜ朝鮮人参が効くのかというと、腸内細菌のなかに、この酵素を持っているものがいるからです。ただし、サポニナーゼを持っている腸内細菌がいない人もいます。このような人は、サポニナーゼを持つ菌と一緒に朝鮮人参を摂れば腸をダマすことができ、効果が期待できます。

 朝鮮人参に限らず漢方薬は、腸内細菌によって活性化されることで、初めて薬効成分が有効になるのです。このように漢方薬にとっても、腸内細菌が重要となってくるのです。腸内環境が整っている人ほど効き目が高くなる、といえます。

 『主治医が見つかる診療所』というテレビ番組に出演したとき、西諫早病院東洋医学研究センター長の田中保郎医師も出演していたのですが、「腸を治せば、ほとんどの病気が治ります」とおっしゃっていました。東洋医学の基本どおりに腸を触診し、腸の状態に合わせて漢方薬を処方するのが、この先生の治療方法です。

 田中先生の元には、1日80人くらいの患者さんが訪れるのですが、そのほとんどの人が、ほかの病院では治らなかった患者さんなのです。頭痛やめまい、肩こり、便秘、アトピー性皮膚炎、うつ病など、どんな病気でも、田中先生の診察は、まず腸を触診するところから始まります。

 漢方薬と腸内細菌の力を医療に役立てる試みは、最先端の医療機関でも、すでに始められています。慶應義塾大学病院ではさまざまな手術を受けた患者に、できるだけ早い時期に免疫能力の向上や消化管機能の改善を図る目的で漢方薬を飲ませ、普通食が摂れるよう指導しています。これは、普通食が摂れるようになると、早期退院が可能となるからです。普通食が摂れるということは、腸内環境がよくなったことの証明になるのです。

 漢方薬は腸内環境を整えた上で薬効成分が作用するため、身体の免疫機能を再生させる医療行為としても注目されているのです。






腸をダマせば身体はよくなる
辨野義己 著



【著者】辨野 義己(べんの よしみ)
1948年大阪府生まれ。独立行政法人 理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室長。 農学博士。DNA解析により腸内細菌を多数発見。腸内細菌と病気との関係を広く調べ、ビフィズス菌・乳酸菌の健康効果を広く訴えている。「うんち博士」としても、テレビ・雑誌等マスコミに登場。ヤクルト、協同乳業、ビオフェルミン、フジッコ、森永乳業、東亜薬品工業など7社出資で、理化学研究所内に辨野義己特別研究室を開設。著書に『大便通』(幻冬舎)、『見た目の若さは腸年齢で決まる』(PHP)、『腸をダマせば身体はよくなる』(SB新書)などがある。



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