カルチャー
2014年7月23日
知らないと損する年金リテラシー
~会社員からフリーランスになった際に必要な年金の切り替えとは?
[連載] 知らないと損する年金リテラシー【1】
監修・浜田裕也
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会社員からフリーランスへ。退職から14日以内に自分で年金の切り替え手続きを


 前述のような、よく寄せられる質問事項のうち、今回は、1)「会社員からフリーランスになる場合の年金の手続き」について解説します。

 会社を辞めると厚生年金から脱退することになります。脱退の手続き自体は会社がやってくれるので、本人が手続きをする必要はありません。

 しかし、会社員からフリーランサーに転身した場合、年金制度上、国民年金の第2号被保険者から第1号被保険者に変わることになり、この切り替えの手続きは会社ではしてくれません。自分で手続きを行い、その後は自分で国民年金の保険料を納付しなければなりません。会社員と違い面倒ですが、将来のことを考え、手続きは忘れずに行いましょう。手続きは、居住地の区市役所または町村役場か年金事務所で行います。その際、以下のものが必要となるので、忘れずに持参しましょう。

[第1号被保険者への種別変更時に必要なもの]
1)年金手帳、または基礎年金番号通知書
2)離職票など、退職日が確認できる書類
3)身分証明書(写真付きならば1点、写真なしならば2点が必要)

 また、結婚していて配偶者が専業主婦(主夫)の場合は、配偶者の変更手続きも必要です(会社員の妻であるときは保険料を夫の会社が代行して納めてくれましたが、自営業の妻は自分で保険料を納付しなければいけません)。会社員の妻は第3号被保険者ですが、フリーランサーの妻は第1号被保険者になるからです。配偶者の変更手続きは、自身の手続きと一緒にできますが、その際は委任状と印鑑、代理人の身分証明書(写真付きならば1点、写真無しならば2点)が必要になります。もちろん配偶者の年金手帳も忘れないようにしましょう。

 1号への手続きと同時に、「付加年金」の手続きもできます。また、口座振替や前納についても申し込めるので、この機会に今後の年金をどうするかについて考えてみるのもいいでしょう。なお、1号への切り替えは、退職後14日以内とされているので注意してくだい。

フリーランスや自営業者は、老後のお金について一番自己防衛が必要な人たち


 会社員の場合、会社の担当者が社会保険の加入手続きや年金保険料の納付をしてくれていましたので、本人にあまり知識がなくても何とかなります。しかし、フリーランスや自営業者の場合、誰かが代わりに加入手続きや保険料の納付をしてくれるということはまずあり得ません。すべて自分でしなければならないのです。したがって、年金の加入履歴や納付の有無は必ず一度は確認しておく必要があります。

 また、フリーランスや自営業者の方が加入する公的年金は国民年金となります。「ずっと国民年金だけなら年金は月額約6万円」という話を一度は聞いたことがあるかもしれません。しかし、このイメージを持ち続けると非常に危険です。国民年金だけに加入していた場合、20歳から60歳まで40年間保険料をずっと納め続けてやっと「月額6万円とちょっと(平成26年7月現在は6万4400円)」の満額になるのです。

 日本の年金制度は、よく3階建てにたとえられます。会社員や公務員はそのうちの2階もしくは3階までの年金を将来もらえますが、自営業者は何もしなければ1階部分(国民年金)の年金しかもらえません。たとえば、同じ60歳でも、会社員(22歳~60歳まで在職、平均年収400万円)が合計で14万1000円もらえるのに対し、自営業者(厚生年金に加入したことがないものとする)がもらえる額は6万4400円です(2014年4月現在の制度による。金額はあくまで目安です)。

 自分の将来の年金額を知ってみると、会社員の方と比べてその年金額は非常に厳しいものになってしまうことがわかると思います。したがってフリーランスや自営業の方は、老後のお金のことを一番真剣に考えなければならない方々だと思っています。

 中には「将来の年金が少ないのは十分わかっている。だから生涯現役でいく」ということを目標にしている方も多いでしょう(実は私もそのひとりです)。しかし悲しいことですが、いずれは働けなくなってしまう日が来てしまいます。働けなくなってしまった後、頼りになるのはやはり公的年金です。

 しかし、厳しい言い方になってしまいますが、フリーランスや自営業の期間が長い方は公的年金だけで老後のお金を何とかしようとしても無理があります。必ず何かしらプラスアルファの準備が必要になってきます。ではフリーランスや自営業者の老後のお金の準備にはどのような方法があるのか。具体的には、国民年金のほかに上乗せできる年金として「付加年金」「国民年金基金」「確定拠出年金(個人型)」の3つが用意されています。それらを活用するヒントから防衛策などは、SB新書『転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話』を参照いただけると幸いです。

(第1回・了)





転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話
浜田裕也 監修



【監修】浜田裕也
学習院大学理学部数学科卒。大学卒業後、塾講師(対象の生徒は小・中学生。数学と理科を担当)を経てファイナンシャルプランナー(CFP)へ転身。ファイナンシャルプランナーとして活動を続ける中、社会保障、特に年金制度に興味を持ち始め社会保険労務士の資格も取得。その後、社会保険労務士会の業務委託で年金事務所にて年金に関する相談も受けるようになり、相談件数は年間1,000件を超える。複雑な年金制度の解説や具体的な申請手続きの進め方のアドバイスには定評がある。老後の生活設計や将来の年金額のシミュレーションなどの記事が「週刊東洋経済」や「プレジデン」トなどに掲載されるほか、監修として『日本でいちばん簡単な年金の本』(洋泉社 第3章監修)、『転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話』(SB新書)などがある。
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