カルチャー
2014年9月11日
知らないと損する年金リテラシー
~パート主婦は厚生年金に入ったほうがいい?
[連載] 知らないと損する年金リテラシー【7】
監修・浜田裕也
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厚生年金に入ったパート主婦、会社員が夫の専業主婦、どっちがお得?


 平成28年10月からパートタイム労働者などの短時間労働者(以下、パートタイム労働者とします)でも条件を満たせば厚生年金に加入することが法律で決まっています。ただし、すべてのパートタイム労働者が厚生年金に加入できるわけではありません。以下の条件をすべて満たした場合、パートタイム労働者でも厚生年金に加入することになります。

・1週間の労働時間が20時間以上
・月収8万8千円(年収106万円)以上
・その会社に1年以上継続して雇用されることが見込まれている

※学生は適用除外
※まずは501人以上の従業員がいる会社にのみ適用

 やはり気になるのは負担と給付のバランスでしょう。つまり、「どのくらい年金保険料を納める必要があるのか?(=負担)」「将来どのくらい年金がもらえるのか?(=給付)」ということだと思います。

 そこで今回は40歳の妻について以下のケースで比較してみようと思います。

1)パート主婦が厚生年金に加入した場合
2)会社員の夫の妻の場合
3)自営業の夫の妻の場合


 妻の働き方によって、年金保険料の他に健康保険料(国民健康保険料)、雇用保険料、所得税、住民税などを負担することがあります。そのため、どの場合が一番有利かは単純に比較できない面もありますが、今回は話をわかりやすくするため、年金保険料と老齢年金に絞ってお話をしようと思います。予めご了承ください。

 それではそれぞれのケースをみていきましょう。

パート主婦が厚生年金に加入した場合、何年で元がとれるか


 年収106万円で40歳から60歳まで20年間厚生年金に加入するものとして計算します。

 平成28年10月の法改正でパート主婦が厚生年金に加入した場合を考えてみましょう。パート主婦が厚生年金に加入するようになると、毎月の給料から厚生年金保険料が新たに天引きされるようになります。なお、厚生年金に加入している方は国民年金の第2号被保険者となり、将来国民年金ももらえます。

 実際の現場では「私はずっと厚生年金だけに加入してきました。今まで国民年金の保険料を納めたことはないのですが、国民年金ももらっていいのでしょうか?」という質問もしばしば......。その答えは「はい、大丈夫です。国民年金ももらえます」です。

 実は毎月の給料から天引きされてる厚生年金保険料には、国民年金の保険料も含まれているのです。そのため、会社員は、将来厚生年金と国民年金の両方がもらえるのです。

 以上のことから、厚生年金に加入したパート主婦が40歳から60歳になるまでの負担と給付は次のようになります。

○負担(40歳から60歳まで通算)
厚生年金保険料 約185万円

○給付(年間)
厚生年金 年額 約12万円
国民年金 年額 約38万円
→合計 年額 約50万円

 40歳から60歳までの20年間の厚生年金保険料は約185万円です。一方、40歳から60歳までかけた保険料に対してもらえる年金額は厚生年金が約12万円、国民年金が約38万円で合計約50万円になります。かなり強引ではありますが、(納めた保険料の合計約185万円)÷(もらえる年金の合計 年額約50万円)=3.7年、つまり「4年以上、年金を受け取ることができれば少なくとも損はしない」と考えられそうです。

(厚生年金保険料の大まかな計算)
年収106万円÷12×8.737%×12カ月×20年=約185万円

(厚生年金の大まかな計算)
年収106万円÷12×20年×12カ月×5.769/1000×1.031×0.961=年額 約12万円

(妻の国民年金の大まかな計算)
約77万円×20年/40年=年額 約38万円

※40歳から60歳までの間で厚生年金に加入していた期間のみで計算しています。
※保険料率は17.474%を使用(会社と折半なので負担は8.737%)。
※金額は平成26年度価額。
※本来は平均標準報酬額を使用します。給付乗率は5.769/1000としています。






転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話
浜田裕也 監修



【監修】浜田裕也
学習院大学理学部数学科卒。大学卒業後、塾講師(対象の生徒は小・中学生。数学と理科を担当)を経てファイナンシャルプランナー(CFP)へ転身。ファイナンシャルプランナーとして活動を続ける中、社会保障、特に年金制度に興味を持ち始め社会保険労務士の資格も取得。その後、社会保険労務士会の業務委託で年金事務所にて年金に関する相談も受けるようになり、相談件数は年間1,000件を超える。複雑な年金制度の解説や具体的な申請手続きの進め方のアドバイスには定評がある。老後の生活設計や将来の年金額のシミュレーションなどの記事が「週刊東洋経済」や「プレジデン」トなどに掲載されるほか、監修として『日本でいちばん簡単な年金の本』(洋泉社 第3章監修)、『転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話』(SB新書)などがある。
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