カルチャー
2014年7月30日
知らないと損する年金リテラシー
~誰も教えてくれない年金の常識と保険料納付の節約術
[連載] 知らないと損する年金リテラシー【2】
監修・浜田裕也
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年金の未納問題というトリックに惑わされない


 年金の未納問題という言葉を聞いたことがあると思います。ただ、会社員ならば、前述のように年金の保険料は天引きされるので、未納になることはないはず。なぜ、未納といったことや国民年金の保険料納付率が60%内外といったことが報道されるのでしょうか?

 まず、会社員や公務員などの第2号被保険者と第2号被保険者の配偶者である主婦(主夫)=第3号被保険者には、保険料の未納は起きえませんね。

 未納が起きえるのは、「第1号被保険者」ですが、2013年3月末時点で1864万人いるとされています。このうち、保険料納付の「免除者」が421万人(一部免除を含む)、および学生などの「猶予者」が214万人おり、およそ3分の1が払わなくていい人になっている現実があります。

 第1号被保険者とは、つまり自営業者とその配偶者、フリーランス、フリーター、学生、無職の人たちなどのことです。

 ずっと未納の人は、将来国民年金の受給資格を得られないので、もし保険料を払えないならば未納ではなく「免除」、あるいは「猶予」という手だてがあり、自分はそれに該当するのかどうかを知っておく必要があります。国民年金には、払い込んだ保険料以外に+国庫からの負担(つまり税金)が投入されるのでお得であり、これをもらわないのは損です。

 そのため、未納期間があったら「後納」制度や「任意加入」を使って保険料を収め、できるだけ満額もらえるようにしたほうがいいのです。

 さて、公的年金加入者は日本全体で6736万人いるうち、未納者の占める割合は、全体の約5%に過ぎません。「国民年金の未納率が高い、だから制度的に破たんする」というロジックは成立しえないことがわかります。

 むしろ、公的年金制度における被保険者数6874万人に対して、受給者数が3703万人(平成22年3月時点)おり、負担(保険料支払い)と受給(年金をもらう)のバランスが悪くなっていることが問題の本質です。年金制度は破たんしないにせよ、少子高齢化が確実に進んでいく以上、制度の改変は避けられず受給額は減らされ、支給年齢は上げられるということを覚悟している人が多いのもそうした理由からです。

国民年金の保険料が安くなる方法がある!? 「前納」と「早割」


 今回は、最後に自営業やフリーランスの方向けに、国民年金の保険料が少しでも安くなる方法をお伝えいたします。

 国民年金の保険料は、2014年度に210円増額され、月額1万5250円になりました。将来、年金として受け取れるとはいえ、経済状況の厳しい人にとって負担は小さくありません。しかし、保険料を前払いすることで保険料が割引になる「前納」制度というものがあります。

 まず、口座振替で前納する方法があります。この前納制度が、もっとも割引率が高くなります。口座振替の場合は3種類の前納方法があり、6カ月分、1年分、2年分となり、2014年から始まった2年分前納がもっとも安くなります。具体的には、6カ月分前納で半年間1040円が割引となり、1年分前納では年間3840円が割り引かれ、2年分前納では2年間で1万4800円が割引となります。

 ただし、口座振替を使った前納制度は、毎年2月末日までの申し込みが必要となります。日本年金機構から口座振替依頼書を取り寄せ、必要事項を記入して金融機関に持っていくか、年金事務所に郵送(持ち込みでも可)して手続きします。

 いつでも前納を開始できない点では使い勝手は悪いですが、まとめて支払える余裕があるなら、使わない手はありません。ちなみに、2年分前納を利用する場合、2年分の保険料35万5280円を口座に用意しておかなければなりません。

 現金で前納制度を利用する場合には、6カ月分と1年分の2種類のみで、2年分前納はできません。割引率も口座振替を使ったときより低く設定されており、6カ月分前納で半年間740円、1年分前納では年間3250円の割引となります。現金払いの前納の支払期日は、毎年4月1日~4月30日までです。

 前納する余裕がない場合でも、「早割」という制度があります。早割は、毎月の保険料の支払いを、1カ月前倒しで行う方法です。早割を利用すると、年間600円の割引になります。微々たるものではありますが、毎月支払うものですから利用したほうがお得です。早割の申し込みは、年金事務所のほか銀行でも行えます。早割はいつでも利用を開始できますが、利用する最初の引き落としは2カ月分の保険料が必要になるので注意してください。

 保険料を直接安くする方法は、前納か早割を利用するしかありませんが、クレジットカードで支払いを行えば、ポイントやマイルが貯まります。日常的にクレジットカードを使っている人なら、国民年金の支払いをクレジットカードで行うという選択肢もあります。クレジットカードで支払う場合、年金事務所で手続きをします。

 また、国民年金の保険料は、全額所得控除の対象となりますので、確定申告を行うことで所得税が安くなります。確定申告をする場合、毎年11月頃に送付される保険料支払いの控除証明書が必要となりますので、大事に保管しておきましょう。

 保険料は、2017年度にかけて上限1万6900円まで上がっていきますので、保険料を安く納める方法を賢く利用して、少しでも節約していきましょう。

(第2回・了)





転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話
浜田裕也 監修



【監修】浜田裕也
学習院大学理学部数学科卒。大学卒業後、塾講師(対象の生徒は小・中学生。数学と理科を担当)を経てファイナンシャルプランナー(CFP)へ転身。ファイナンシャルプランナーとして活動を続ける中、社会保障、特に年金制度に興味を持ち始め社会保険労務士の資格も取得。その後、社会保険労務士会の業務委託で年金事務所にて年金に関する相談も受けるようになり、相談件数は年間1,000件を超える。複雑な年金制度の解説や具体的な申請手続きの進め方のアドバイスには定評がある。老後の生活設計や将来の年金額のシミュレーションなどの記事が「週刊東洋経済」や「プレジデン」トなどに掲載されるほか、監修として『日本でいちばん簡単な年金の本』(洋泉社 第3章監修)、『転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話』(SB新書)などがある。
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