カルチャー
2014年8月5日
漢方がもっと身近になる! 漢方薬にまつわる素朴な疑問5つ
[連載]
西洋医が教える、本当は速効で治る漢方【3】
文・井齋偉矢
疑問4)漢方薬の効果的な服用法はある?
漢方薬を服用する時間帯としては、食前または食間(食後約2時間)に1日3回服用するのが基本です。
朝昼晩の食事に合わせて服用している人が多いと思いますが、それだと朝食と昼食の時間が短いのに対し、夕食と朝食の時間が長くなって、服用間隔に差がでてしまいます。
本来は8時間おきに1日3回服用するのが理想です。そうした服用の仕方をすると血液中にいつも同じ量の漢方薬を維持できます。
しかし、8時間おきとなると、今度は食事の時間をそれに合わせるのが大変です。働いている人では、昼食を12時にとるとして、夕食が20時というのはいいとしても、朝食を4時にとらなければいけなくなります。これはちょっと現実的ではありません。
そこで、大澤稔先生(前橋赤十字病院)は、「起床直後」と「午後3時頃」、そして「就寝前」の3回に分けて飲む方法を推奨しています。これなら食前・食間に飲むことができますし、飲み忘れも防げます。
なお、急性期の病気に対する服用法は、ちょっとアレンジを加えていますので、本のそれぞれの該当項目を参照してください。
疑問5) 胃の弱い人でも、食前に服用して構わない?
漢方薬を食後に飲むと、2割くらい効き目が落ちます。胃の中に入っている食物の成分と競合して、吸収しにくくなってしまうのです。そのため、漢方薬は食前または食間に飲むのが基本です。
食前や食間といった胃の中が空っぽのときに漢方薬を飲むと、胃に負担がかかるのではないかと心配する人がいますが、おなかが空っぽのときでも、胃の粘膜を守るシステムはきちんと働いています。
ですから、すきっ腹で服用してもとくに問題はありません。逆にいうと、食後なら食物が胃を守ってくれるというわけではないのです。
実際に、食前・食後に関係なく、漢方薬を飲むと胃の調子が悪くなる人がいます。 「八味地黄丸(はちみじおうがん)」を服用している高齢者などによくみられますが、それは食前だからという問題ではなく、その人に八味地黄丸が合っていなかったということです。
漢方薬を服用中に胃の調子が悪いのを感じたら、すぐに医者に相談して、その漢方薬自体を変えてもらうようにしましょう。ちなみに、西洋薬は食後に飲むのが基本ですが、なぜ食後かというと、食後のほうが飲み忘れが少ないためです。この場合も、すきっ腹に飲んではいけないということではないのです。
(了)
[連載]西洋医が教える、本当は速効で治る漢方 記事一覧
[1]意外!? インフルやノロも半日で治す「漢方薬」の速効性
[2]東洋思想に頼らない「サイエンス漢方」とは?
[3]漢方がもっと身近になる! 漢方薬にまつわる素朴な疑問5つ
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【著者】井齋偉矢(いさいひでや)
1950 年、北海道生まれ。北海道大学卒業後、同大学第一外科に入局。専門は消化器外科、肝臓移植外科で日本外科学会認定専門医。1989 年から3 年間オーストラリアで肝臓移植の臨床に携わる。帰国後独学で漢方治療を本格的に始め、現在、日本東洋医学会認定専門医・指導医。2012 年にサイエンス漢方処方研究会を設立し理事長を務める。医療法人静仁会静仁会静内病院(漢方内科・総合診療科)院長。著書に『西洋医が教える、本当は速効で治る漢方』がある。
1950 年、北海道生まれ。北海道大学卒業後、同大学第一外科に入局。専門は消化器外科、肝臓移植外科で日本外科学会認定専門医。1989 年から3 年間オーストラリアで肝臓移植の臨床に携わる。帰国後独学で漢方治療を本格的に始め、現在、日本東洋医学会認定専門医・指導医。2012 年にサイエンス漢方処方研究会を設立し理事長を務める。医療法人静仁会静仁会静内病院(漢方内科・総合診療科)院長。著書に『西洋医が教える、本当は速効で治る漢方』がある。