カルチャー
2014年8月28日
知らないと損する年金リテラシー
~女性が気をつけるべき「遺族年金」
[連載] 知らないと損する年金リテラシー【5】
監修・浜田裕也
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子が高校を卒業したあとの遺族年金はどうなる?


 子が高校を卒業すると、遺族基礎年金と子の加算は終了します。その代わり、このケースの妻には中高齢寡婦加算が支給されるようになります。よって子が高校を卒業したあとは、遺族厚生年金約55万円と中高齢寡婦加算約57万円の合計約112万円を妻が65歳になるまでもらえるようになります。これにパート収入100万円を足すと年額約212万円。月額にすると約17万6000円です。

 高校を卒業した子どもは自分でお金を稼げるようになるとみなされるため、法律上、遺族基礎年金と子の加算は終了してしまうのです。しかし子どもに最もお金がかかるのは大学生時代。遺族年金と妻のパート収入で大学の学費がまかなえそうもないという場合、貯蓄を取り崩したり、奨学金を利用したり、子どもがアルバイトをしたりと何かしらの対策が必要になってしまうでしょう。

妻が65歳以降で遺族年金と老齢年金を受け取る場合、月額7万円から20万円ほど


 妻が65歳になると中高齢寡婦加算は終了します。その結果、妻の年金収入は遺族厚生年金の約55万円と妻の国民年金約60万円で合計約115万円がもらえます。月額にすると約9万5000円です。妻にパート収入や貯蓄がない場合、その生活は相当厳しいものになってしまうことがわかると思います。

 私が受けてきた相談に関していえば、妻が65歳以降で遺族年金と老齢年金を受け取る場合、年額で90万円から240万円くらいに収まることがほとんどです。月額にすると、約7万円から約20万円です。この金額を少ないとみるか多いとみるかは人それぞれですが、ひとつ言えることは、このお金は公的年金なので「妻本人が亡くなるまで一生もらえる大切なお金」だということです。一生もらえる大切なお金に対してマイナスな気持ちをもってしまうのはもったいないと思います。年金収入の範囲内で生活できそうもないと予めわかっていれば何かしらの対策を立てることもできたでしょう。

 巷では「年金はあてにならない」という言葉もチラホラ聞こえますが、それは公的年金だけで生活をしようとするからでしょう。制度上、確かに若い人ほど公的年金の金額は少なくなってしまう傾向にあります。それならば、いっそ現役世代の方は「老後の生活費は公的年金+αでまかなっていく必要があるな。今からどんな準備ができる?」と早めに気持ちを切り替えてしまった方がスッキリするかもしれませんね。

※クリックすると拡大

(遺族厚生年金の大まかな計算)
年収500万円÷12×5.769/1000×26年×12カ月×1.031×0.961×3/4=年額 約55万円
(平成26年度価額)

※本来は、平均標準報酬月額(平成15年3月以前のもの)および平均標準報酬額(平成15年4月以降のもの)を用います。また、給付乗率も平成15年3月以前と4月以前では異なっていますが、5.769/1000でまとめて計算しています。

※遺族基礎年金は77万2800円、子の加算は子ども2人目までは1人当たり22万2400円、3人目からは1人当たり7万4100円で定額となっています(平成26年度価額)。

※遺族基礎年金終了後、妻に中高齢寡婦加算が支給されるためには、妻が40歳になったときに遺族基礎年金を受けている、つまり年金法上の子がいる必要があります。


 今回は妻が厚生年金に加入していないケースのお話でした。しかし今の現役世代は夫婦共働き(妻も厚生年金加入)であることも多いと思います。そこで次回は夫婦共働きのケースの遺族年金についてお話をしようと思います。

(第5回・了)





転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話
浜田裕也 監修



【監修】浜田裕也
学習院大学理学部数学科卒。大学卒業後、塾講師(対象の生徒は小・中学生。数学と理科を担当)を経てファイナンシャルプランナー(CFP)へ転身。ファイナンシャルプランナーとして活動を続ける中、社会保障、特に年金制度に興味を持ち始め社会保険労務士の資格も取得。その後、社会保険労務士会の業務委託で年金事務所にて年金に関する相談も受けるようになり、相談件数は年間1,000件を超える。複雑な年金制度の解説や具体的な申請手続きの進め方のアドバイスには定評がある。老後の生活設計や将来の年金額のシミュレーションなどの記事が「週刊東洋経済」や「プレジデン」トなどに掲載されるほか、監修として『日本でいちばん簡単な年金の本』(洋泉社 第3章監修)、『転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話』(SB新書)などがある。
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