カルチャー
2014年8月28日
不動産を買うなら五輪の後にしなさい
[連載]
不動産を買うなら五輪の後にしなさい【1】
文・萩原 岳
有明の人口は五輪後に約5倍増え、4万人近くなる可能性も
中央区の隣の江東区豊洲はどうでしょうか。ゆりかもめの「新豊洲」と「市場前」の2つの駅の周辺(豊洲6丁目)、約40万平方メートルの旧東京ガス跡地に、2016年度に築地市場が丸ごと移転してきます。水産卸売市場棟、青果棟、水産仲卸売場棟、事務棟ができ、一般客、観光客向けに飲食店や新鮮な魚介類等を売る「千客万来施設」もつくられます。こちらは、お台場の観光ルートに組み入れられ、新市場移転効果で売り上げが伸びることが期待されています。
築地移転は、用地の土壌汚染で、環境対策に時間がかかった結果、建設時期が工費の高騰局面と完全にぶつかってしまいました。資材費・人件費の高騰で13年末の入札が不調に終わったため、入札要件を緩和して再入札に臨み、入札の予定価格を何と一気に6割も上げて対応しました。しかし、都の思い切った予算拡張の対応により、今後の五輪施設建設のコストに影響するかもしれません。
豊洲の今後の開発はオフィスや行政拠点の新設や建て替えで都市・行政機能が拡充されます。昭和医大の付属病院や芝浦工業大学の中学・高校、江東区シビックセンター、駅前再開発、豊洲3-2街区ビル建設、豊洲西小学校の新設、都市型ホテルなどが整備されてきています。
住宅については、「豊洲二丁目駅前地区再開発」(31階建て、1050戸、2017年完成)のほか、豊洲新市場の近くにできるのが、「ベイズタワー&ガーデン」(31階建て、550戸、2016年完成)、「スカイズタワー&ガーデン」(44階建て、1110戸、2014年完成)があります。このほか、オフィスも併設する「豊洲5丁目計画」(22階建て、2017年完成)もできます。
さらに、豊洲に近い東雲・辰巳地区では、「パークタワー東雲」(43階建て、585戸、2014年完成)、「グランソシア辰巳の森海浜公園」があります。東雲の場合、りんかい線の開通で交通アクセスがよくなりました。
お台場に近い有明と青海エリアも見てみましょう。有明では「有明テニスの森」の近くにオリンピック競技の会場(体操、自転車、バレーボール)が建設される予定です。都が持つ20ヘクタールの空き地に作られ、大会後は売却される見込みですが、敷地のうち半分程度が五輪後に住宅地となる予定です。有明にはマンションなどが建設可能な低未利用地が数多く残っており、それが利点となり、五輪の主会場のひとつに選ばれました。
有明の人口は、五輪後に現在の5倍近い4万人弱まで膨らむ可能性があります。大型物件では、「ブリリア有明シティタワー」(33階建て、600戸、2015年完成)、「有明ガーデンシティ」(32階建て、2000戸、2018年完成)などができつつあります。
湾岸マンション、五輪で再上昇のトレンドに
今回は、湾岸地区のマンションの過去の価格動向を振り返っておきましょう。リーマンショック、震災などを経て、まさに激動の価格変遷を経ています。2000年から05年ごろまでの第一次湾岸ブームでは、豊洲など江東区の物件は4000~5000万円程度の物件が多く、「格安」としてよく売れました。「豊洲」など下町や工業地帯の地域名をマンション名には付けずに、「TOKYO」や「ベイ」と冠したマンション名にして、湾岸イメージで売った時代でした。
中央区の場合はやや高く、5000万円から6000万円程度でした。その後、06年を経て、ミニバブルになると相場は2000万円ぐらいアップしたため、お買い得感が消えてしまいました。その後、 08年のリーマンショックに伴うミニバブル崩壊で、高値の湾岸マンションの売れ行きに陰りが見え始める中、震災が起きたため、「マンションの湾岸戦争は終わった」という悲観もありました。
高層マンションを1億円近い高値で買った住民からは、「ワーン(湾)、ガーン(岸)」と泣くに泣けない悲鳴も聞かれたのですが、2013年の五輪誘致決定で泣き声はパタッと止まったのです。
(第1回・了)
萩原 岳(はぎわら がく)
千葉県生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業。株式会社アプレ不動産鑑定 代表取締役。不動産鑑定士。在学中より不動産鑑定業界に携わり、2007年不動産鑑定士論文試験合格、2010年不動産鑑定士として登録する。数社の不動産鑑定士事務所勤務を経て、2014年株式会社アプレ不動産鑑定を設立し、現職。相続税申告時の不動産評価など税務鑑定を専門とし、適正な評価額の実現を掲げ、相続人と共に「戦う不動産鑑定士」として活動する。また、実務で培った経験をもとに、「相続と不動産」について税理士、弁護士、不動産鑑定士など相続の実務家を相手とした講演活動も行っている。
千葉県生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業。株式会社アプレ不動産鑑定 代表取締役。不動産鑑定士。在学中より不動産鑑定業界に携わり、2007年不動産鑑定士論文試験合格、2010年不動産鑑定士として登録する。数社の不動産鑑定士事務所勤務を経て、2014年株式会社アプレ不動産鑑定を設立し、現職。相続税申告時の不動産評価など税務鑑定を専門とし、適正な評価額の実現を掲げ、相続人と共に「戦う不動産鑑定士」として活動する。また、実務で培った経験をもとに、「相続と不動産」について税理士、弁護士、不動産鑑定士など相続の実務家を相手とした講演活動も行っている。