カルチャー
2014年9月4日
五輪建設バブルのピークは2018年!
[連載] 不動産を買うなら五輪の後にしなさい【2】
文・萩原 岳
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コンパクト開催がかえって負担になる!?


 今回の東京五輪37会場は、当初の計画では、晴海につくる選手村から半径8キロ圏内に85%の競技場が集中するコンパクトな競技場配置が特徴。うち競技場の新設(当初計画)は11拠点で、このうち9つは湾岸にできます。しかし東京都は6月に入って、建設費の高騰や大会後の需要がないといった理由で、整備事業の縮小検討を始めました。新設する10施設の整備費は招致段階で1,538億円だったのですが、再試算では3,800億円。五輪開催のための基金(4,100億円)が不足する懸念も...。

 そこでバドミントンとバスケットの会場となる「夢の島ユース・プラザ・アリーナ」(江東区)の新設を取りやめ、バスケットは「さいたまスーパーアリーナ」(さいたま市)、バドミントンは「武蔵野の森総合スポーツ施設」(調布市)を利用する方向になりました。選手にやさしい「コンパクト五輪」も狭いエリアに競技場を新設することで、かえって財政を圧迫し、将来の需要も不透明とあっては見直さざるを得ません。ちなみに、都市圏をこれ以上、拡大させないコンパクト・シティ構想も、高齢者や子供に優しいをうたっていますが、コンパクトにまとめるための追加投資負担がかえって重くなる場合があります。

山手線にできる新駅狂想曲 ~品川バブルが発生中


 リニア新幹線の起点になることからマンションの開発ラッシュに沸く品川周辺はどうでしょう。山手線の品川~田町間の新駅は広大な旧田町車両基地(約20ヘクタール)の敷地内に置くため、「第二品川駅」という位置づけになり、品川駅までの距離は1キロを切る近さです。

 新駅を起点に、貨物線を再利用・延伸する形で羽田空港地下へ乗り入れる鉄道建設も検討中。新駅は五輪までに、空港線は五輪前後の開業が目標であり、JR最大級のプロジェクトです。

 五輪後、JR東海が品川起点にリニア新幹線を名古屋・大阪方面に延ばすなか、新幹線のライバルの航空便もJR東日本の用意する新駅と新線の効果で、都心アクセスがぐっと向上します。

 さらに、旧車両基地の東側部分13ヘクタールは、羽田の玄関口として大規模開発されます。「国家戦略特区に指定されており、その恩恵を最大限に生かした開発になる」というのが、JR工事に強いゼネコンの見立てです。品川に強い金融関係者によれば「外国人向け高級ホテル、大型複合ビル、医療特区、駅直結の免税大型店からカジノの誘致まで威勢のよい話が早くも飛び交っている」そうです。

 その新駅の名は港区の地名である「泉岳寺」「高輪」といった狭い名前を冠するより、「港南」といった広い地名を冠する可能性があります。また品川と田町の間をとって「品田」という声まであります。

 東京都や品川区は、新駅発表の直前にJR品川駅周辺の街づくり構想をまとめました。民間の活力を呼び込むため、品川駅周辺に土地などの含み資産を持つとされる西武鉄道グループや京浜急行、大林組といった「品川の大家」らにも期待をかけています。駅周辺は三菱重工業やソニー、大林組など大手が拠点を移しています。

 歴史的に、都心のダウンタウンの重心は、浅草→上野→東京と概ね南下してきました。リニアの開通を見込み、東京駅周辺でなく、あえて品川駅周辺に立地する地方企業も増えています。






不動産を買うなら五輪の後にしなさい
不動産鑑定士がこっそり教える売買のコツ
萩原 岳 著



萩原 岳(はぎわら がく)
千葉県生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業。株式会社アプレ不動産鑑定 代表取締役。不動産鑑定士。在学中より不動産鑑定業界に携わり、2007年不動産鑑定士論文試験合格、2010年不動産鑑定士として登録する。数社の不動産鑑定士事務所勤務を経て、2014年株式会社アプレ不動産鑑定を設立し、現職。相続税申告時の不動産評価など税務鑑定を専門とし、適正な評価額の実現を掲げ、相続人と共に「戦う不動産鑑定士」として活動する。また、実務で培った経験をもとに、「相続と不動産」について税理士、弁護士、不動産鑑定士など相続の実務家を相手とした講演活動も行っている。
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