カルチャー
2014年9月11日
知らないと損する年金リテラシー
~パート主婦は厚生年金に入ったほうがいい?
[連載] 知らないと損する年金リテラシー【7】
監修・浜田裕也
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会社員が夫の専業主婦は、負担ゼロで給付がもらえる!?


 こちらのケースは40歳から60歳まで20年間、会社員の夫の扶養に入れるものとして計算します。妻の年収が130万未満であれば、会社員の夫の扶養に入れます。その場合、妻は国民年金の「第3号被保険者」という扱いになります。

 なお、第3号被保険者の国民年金保険料は厚生年金に加入している人全員で少しずつ負担しているので、第3号被保険者の方は保険料を納める必要はありません。よって、会社員の夫の妻が40歳から60歳になるまでの負担と給付は次のようになります。

○負担(40歳から60歳まで通算)
国民年金保険料 0円

○給付(年間)
国民年金 年額 約38万円

 国民年金の第3号被保険者は、国民年金保険料を納めることなく将来、国民年金がもらえるので、負担と給付の面で考えると一番有利な人たちと言えそうです。

 ただ、「第3号被保険者制度」自体は、自営業者の妻や独身女性から見れば、負担ゼロで給付が受けられるという意味でも不公平に感じられるでしょうし、「働かない方がトクになる仕組み」として制度縮小なども今後検討されていくでしょう。

 また、パートに出たとしても年収を130万円以内におさめることで、夫の扶養に入り、自身の健康保険料や国民年金保険料を納める義務がなくなるよう仕事量をセーブするということが起きています。

 そこで「女性の活躍推進」を成長戦略の一つにしている安倍首相は、女性の就労拡大を抑制している現在の「配偶者控除」と「第3号被保険者制度」の見直し、働き方に中立的な制度構築について検討するよう指示しています。

(国民年金の大まかな計算)
約77万円×20年/40年=年額 約38万円
※40歳から60歳までの間、会社員の夫に扶養されていた期間のみで計算しています。
※金額は平成26年度価額です。

自営業の夫の妻は、やはり負担が大きい!?


 こちらのケースでは、自営業の夫の手伝いで、40歳から60歳まで20年間、国民年金に加入するものとします。

 夫が自営業者で妻は厚生年金や共済年金に加入していない場合、妻も国民年金第1号被保険者となります。第1号被保険者は国民年金にのみ加入し、原則、毎月保険料を納める必要があります。よって、自営業者の夫の妻が40歳から60歳になるまでの負担と給付は次のようになります。

○負担(40歳から60歳まで通算)
国民年金保険料 約360万円

○給付(年間)
国民年金 年額 約38万円

 かなり強引ではありますが、(納めた保険料の合計約360万円)÷(もらえる年金の合計 年額約38万円)=9.4年、つまり「10年以上年金を受け取ることができれば少なくとも損はしない」と考えられそうです。

 先ほどの会社員の夫の妻と比べると、自営業者の妻はかなり負担が大きくなってしまうことがわかります。負担と給付の面だけで考えると、一番不利な人と言えるでしょう。

(国民年金保険料の大まかな計算)
月額 約1万5千円×12カ月×20年=約360万円

(国民年金の大まかな計算)
約77万円×20年/40年=年額 約38万円
※40歳から60歳までの間で国民年金に加入していた期間のみで計算しています
※保険料の前納(割引制度)や免除制度は利用していません。
※保険料や年金額は平成26年度価額です。

前出3ケースを改めて比較してみると......


 最後にそれぞれの妻が40歳から60歳まで負担する保険料と将来もらえる年金額を一覧表にしたのでもう一度比較してみましょう。

3つのケースの保険料と年金額の一覧 ※クリックすると拡大


 負担と給付のみで比較してみると、一番有利なのは会社員の夫の妻、次に厚生年金に加入するパート主婦、最後に自営業の妻となりそうです。ただし、妻もより多くの年金をもらおうとすると、厚生年金に加入したほうがよいとも言えます。

 「それじゃあ、結局どうしたらいいの?」と迷われる方も多いと思いますが、その答えはそれぞれのご家庭やその方個人の考え方によって違うとしか言いようがありません。

 今後も色々な意見が飛び交うでしょうが、周りの意見に惑わされることなく、「現在の稼ぎからどれくらいを確実な貯蓄に回すべきなのか?」「多少負担がかかっても将来の年金を増やしたほうがいいのか?」など、ご家庭やご自身の考えやプランをしっかりと持ち、備えることが重要です。

(了)





転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話
浜田裕也 監修



【監修】浜田裕也
学習院大学理学部数学科卒。大学卒業後、塾講師(対象の生徒は小・中学生。数学と理科を担当)を経てファイナンシャルプランナー(CFP)へ転身。ファイナンシャルプランナーとして活動を続ける中、社会保障、特に年金制度に興味を持ち始め社会保険労務士の資格も取得。その後、社会保険労務士会の業務委託で年金事務所にて年金に関する相談も受けるようになり、相談件数は年間1,000件を超える。複雑な年金制度の解説や具体的な申請手続きの進め方のアドバイスには定評がある。老後の生活設計や将来の年金額のシミュレーションなどの記事が「週刊東洋経済」や「プレジデン」トなどに掲載されるほか、監修として『日本でいちばん簡単な年金の本』(洋泉社 第3章監修)、『転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話』(SB新書)などがある。
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