カルチャー
2014年9月24日
なぜブルーインパルスは、とてつもない曲技飛行ができるのか?
文と写真・赤塚 聡
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多彩な課目のバリエーションがブルーの魅力


 ブルーインパルスの展示飛行の魅力は、編隊飛行だけではありません。編隊課目の合間に単独機が見せる各種のロールやループ、背面飛行どの課目は、T-4練習機の持つ高いパフォーマンスを最大限に発揮したもので、そのシャープでキレの良い機動には誰もが圧倒されます。

「スター&クロス」と名付けられた課目では、冒頭の「花」に続いて「星」が純白のスモークで大空いっぱいに描かれる ※クリックすると拡大

 また「描き物」と呼ばれる課目では、大空をキャンバスにハートや星などの図形をスモークによって描くため、特に人気の高い課目となっています。

 こうした課目は天候(視程や雲高)によって変更されることもありますが、天候にまったく支障がない場合は、27種類の課目が約45分間にわたって披露されます。

 課目ごとの間隔は綿密に計画・調整されていて、各種の課目が会場の四方から次々とテンポよく繰り広げられていきます。

 ブルーインパルスの展示飛行を見ていると、何か思いつきや勢いに任せて感覚的にフライトしているように見えるかもしれませんが、実際はすべて緻密に計画された飛行パターンに基づいて厳格に実施されています。

 こうしたアクロバット飛行は、一般的に「曲芸飛行」と言われることが多いですが、確かにスリリングな瞬間はあるものの、それはすべて計算されたリスクに基づいた演出であり、正しいニュアンスとしては「曲技飛行」と呼ぶべきものです。

 ブルーインパルスは、全国の航空祭などで年間に20回以上の展示飛行を行っています。スケジュールは航空自衛隊のウェブサイト (http://www.mod.go.jp/asdf/) に掲載されていますので、その雄大で迫力あるパフォーマンスをぜひ実際にご覧ください。

(了)


ブルーインパルスの科学
知られざる編隊曲技飛行の秘密
赤塚 聡 著



【著者】赤塚 聡(あかつか さとし)
1966年、岐阜県生まれ。航空自衛隊の第7航空団(百里基地)でF-15Jイーグル戦闘機のパイロットとして勤務。現在は航空カメラマンとして航空専門誌などを中心に作品を発表するほか、執筆活動やDVDソフトの監修なども行っている。またブルーインパルスには定期的に同乗して空撮取材を実施している。日本写真家協会(JPS)会員。おもな著書は『ドッグファイトの科学』(サイエンス・アイ新書)、『T-4 Blue Impulse写真集』(TIPP)。
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