カルチャー
2014年10月2日
知らないと損する年金リテラシー
~年金を上乗せできる「加給年金」の申請方法
[連載] 知らないと損する年金リテラシー【10】
監修・浜田裕也
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(2)生計同一関係であること


 夫婦が同じ住所に住んでいれば生計同一関係にあるとみなされます。世帯全員の住民票を取ってみて、そこに夫婦の名前が記載されていればそれだけで生計同一関係にあることが証明できます。
 しかし中には単身赴任や親の介護のため夫婦が一時的に別居しており、夫と妻の住民票上の住所が異なっているケースもよくあります。夫と妻の住民票上の住所が違うと、夫の世帯全員の住民票を取っても妻の記載はありません。そのような場合、どうすれば生計同一の証明ができるのでしょうか? その答えは次の通りです。
 まず、夫と妻のそれぞれの世帯全員の住民票をとります。そして「生計同一関係に関する申立書」という書類を添付します。なお、生計同一関係に関する申立書には以下の内容を記入することになります。

・別居の理由 (仕事や介護など)
・経済的援助の内容 (夫の収入の一部を妻の生活費に充てているなど)
・音信・訪問の手段 (週末に夫の家に帰ってくる、電話で話をしているなど)
・第三者の証明 (親族以外の人、例えば会社の上司や友人などに署名と捺印をしてもらう)
※詳しい書き方は最寄りの年金事務所で相談をしてください。

 生計同一関係に関する申立書は、最寄りの年金事務所またはインターネットからダウンロードすることができます(日本年金機構 生計同一関係に関する申立書 で検索しましょう)。

(3)配偶者の年収が850万円未満または所得が655万5千円未満であること


※加給年金は夫の方に加算されるケースが多いので、ここでいう配偶者とは妻のこととします。以下、配偶者を妻と置き換えてお話をしていきます。

 妻の収入や所得が高いと夫には加給年金がつきません。ただし、妻の収入が850万円未満または所得が655万5千円未満であればよいので、ほとんどの妻はこの収入・所得条件はクリアできると思います。

 妻の収入の証明は、住所地の市区町村役場で取れる「課税・非課税証明書」ですることができます。

 よく「うちの妻は働いていないので収入がありません。収入がないから証明ができないのでは?」というご質問を受けますが、証明はできます。妻に収入がない場合、市区町村役場で「非課税証明書」という書類をもらうことができるからです。

 また、会社員の夫の扶養に入っていれば妻は健康保険証を持っているはずなので、その健康保険証で妻の収入の証明をすることもできます。夫の健康保険の扶養に入るためには「妻の収入が130万円未満であること」が条件なので、健康保険証でも証明ができるのです。

 ただし健康保険証の場合、妻の保険証の「原本」を年金事務所でコピーしてもらう必要があるので注意してください。

 その他には、妻の確定申告書や妻の源泉徴収票でも収入・所得の証明をすることはできます。ただし、実務上、確定申告書や源泉徴収票はトラブルが多いのであまりおすすめはできません。よくあるケースは以下のようなものです。

・確定申告書の現物ではなくコピーを持参してしまい「コピーではなく現物を持ってきてください」と言われてしまった。
・確定申告を郵送や夜間ポストでしたため、確定申告書の控えに税務署の受領印が押されていなかった。そのため、せっかく確定申告書の原本を持って行っても「税務署の受領印がなければだめです」と言われてしまった。
・源泉徴収票の現物ではなくコピーを持参してしまった。
・源泉徴収票の原本を提出したら「妻に他に収入がないと一筆書いてください」などと言われてしまった。

 妻の収入・所得の証明を確定申告や源泉徴収票でしようとすると、思いがけずもうひと手間かかってしまうことがよくあり、年金事務所の窓口で言い争いが始まってしまうこともしばしばです。せっかく手続きにきたのにこれではお互いに気分がよくありません。そのようなことを未然に防ぐためにも、妻の収入・所得の証明は「課税・非課税証明書」または「妻の健康保険証」のどちらかでする、と思っていたほうがよいでしょう。実務でも、まずは妻の課税・非課税証明書または妻の健康保険証のどちらかを提出するよう求められます。

申請には2回くらい出向くことを覚悟のうえで


 加給年金に限ったことではありませんが、添付書類が足りずに年金の申請を受け付けてもらえなかったというケースは非常に多くみられます。忙しい中、時間をつくって出向いたのに、申請を受け付けてもらえなかったというのはショックが大きいでしょう。中には「そんなの知らない。書類が足りなくても受付をしろ」とお怒りになってしまう方もいますが、その気持ちもわからないでもありません。しかし書類が足りなければ申請の受付はできませんので、結局ダメなものはダメなのです。

 申請を一度で済ませたいのは山々でしょうが、現実としてなかなかそううまくはいきません。ですので、年金手続きの申請には、添付書類の相談で1回、実際の提出で1回と都合2回出向く必要があると思っていたほうが心の負担は少ないでしょう。

 なお、仕事などで忙しくなかなか時間が作れない場合、代理人に申請を依頼する方法もあります。代理人に依頼する場合、もちろん委任状が必要になります。委任状は最寄りの年金事務所またはインターネットからダウンロードすることができます(「日本年金機構 委任状」で検索しましょう)。

(第10回・了)





転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話
浜田裕也 監修



【監修】浜田裕也
学習院大学理学部数学科卒。大学卒業後、塾講師(対象の生徒は小・中学生。数学と理科を担当)を経てファイナンシャルプランナー(CFP)へ転身。ファイナンシャルプランナーとして活動を続ける中、社会保障、特に年金制度に興味を持ち始め社会保険労務士の資格も取得。その後、社会保険労務士会の業務委託で年金事務所にて年金に関する相談も受けるようになり、相談件数は年間1,000件を超える。複雑な年金制度の解説や具体的な申請手続きの進め方のアドバイスには定評がある。老後の生活設計や将来の年金額のシミュレーションなどの記事が「週刊東洋経済」や「プレジデン」トなどに掲載されるほか、監修として『日本でいちばん簡単な年金の本』(洋泉社 第3章監修)、『転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話』(SB新書)などがある。
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