カルチャー
2014年10月16日
保険を見直すなら「妻」を中心に、が正解!
[連載]
保険選びは本当にカン違いだらけ【1】
文・鬼塚眞子
保険は通算金額で考えると非常に高額な買い物なのにもかかわらず、まだまだ商品内容が理解されているとは言えません。この連載では、保険選びでありがちなカン違いや意外な常識を解説します。
「妻」死亡時の経済的損失は最低でも月10万円!
最近は夫婦揃って保険商品を検討している場面のCMをよく見かけるようになりました。ただよく見ると、ほとんどスルーされているのが「妻」の保障です。
最近は妻の保険加入を勧める動きも以前と比べ活発になりましたが、まだまだ関心が高いとは言えません。
では妻に万が一のことがあった場合、いったいいくらの保障額が必要なのでしょうか?
まず、葬式代などの死後整理資金が必要になります。お弁当の用意や、幼稚園・託児所への送り迎えなど、家事全般の担い手が別途必要になることも。
ベビーシッターやヘルパーなど外部サービスにお願いする場合、週1回だけでも3万~5万円かかり、子どもがまだ目を離せない時期だとさらに費用がかかるケースも珍しくありません。
外食代やクリーニング代もかさみ、「妻が亡くなってから、給料がほとんど飛んでいく」という人もいました。残業や勤務時間にこれまでになかった制限が否応なく発生し、キャリアパスや昇給に影響が出る可能性もあります。
個々の極端なケースを持ち出して不安を煽るのは適切ではないと思います。しかし、よくパンフレットなどで紹介される内閣府の「無償労働の貨幣評価の調査研究」(平成21年度、内閣府経済社会総合研究所)によれば、専業主婦の無償労働額は月額換算で約25万円となっています。
もちろんこの金額が、そのまま外部サービスで調達したときの費用になるとは限りません。育児費用などは含まず内訳の「家事・買い物」だけに絞れば、約20万3000円になる計算です。
親族の協力や行政サービスの利用を考慮すると、なんとか10万円で済むケースもあるでしょう。
しかし、「今の家計からさらに10万円の負担が増える」というのは、ほとんどの家庭にとって、大きな経済的ダメージと言えるのではないでしょうか?
民間の保険で保障を10万円以上確保する
では、最低10万円という家計の負担増にいかに対応すればよいでしょうか?
そこでまず知っておきたいのが、遺族基礎年金です。
遺族基礎年金はざっくり説明すると、子どものいる家庭に対して、「働き手を失った家族をサポートする」という目的があります。
制度改正により平成22年4月より父子家庭が、平成26年4月1日から専業主婦である妻が死亡した場合でも、遺族基礎年金の支給対象となりました。
つまり、共働きや妻の生計で暮らしている専業主夫にも、受給権が発生するようになったのです。
ただ、これで万事解決というわけではありません。
子どもがひとりいる家庭の場合、遺族基礎年金の受給額は年間99万5200円(平成26年度)。1ヵ月あたりでは約8万3000円です。子どもが18歳(障害等級1級・2級の子は20歳)になる年度末まで支給されます。
とはいえ、子どもの世話を身内に頼めない場合は、ベビーシッターに頼んだり、保育所に預けたりすることになり、出費がかさみます。受給額で生活費すべてをカバーしようとすると、まず不足分が発生するのが現実かと思います。
こうしたことに備えて、民間の死亡保険で保障を確保するケースもあります。家計を支える夫のように3000万円、5000万円といった高額な保険金ではなく、月額10万円×12ヵ月×年数を準備したいものです。
できれば子どもの中学卒業までに保険料の払込を済ませたいところですが、これは貯蓄額や教育費などによって変動します。「育児や家事の負担が軽くなるまで」を基準に保険期間を検討してみましょう。
さらに、年金タイプの収入保障保険などを選べば、保険料も月々2000円以下というケースもあります。加入の有無によって大きく家計負担は変わります。見落とすことなく加入を検討してみましょう。
【著者】鬼塚眞子(おにつかしんこ)
大手生保会社の営業職、業界紙の記者を経て、2007年に保険ジャーナリスト、ファイナンシャル・プランナー(FP)として独立。保険業界と商品に精通し、保険営業とFP資格のある、日本では稀有な存在の保険ジャーナリストとして知られている。2010年、保険業界活性化を図るため、保険のすべてのチャネルを横断する「オーツードットコム 保険業界の明日を考える会」(現、トリプルA)を主宰。マスコミ出演、執筆、講演、相談で幅広く活躍中。近著は『保険選びは本当にカン違いだらけ』(SB新書)
大手生保会社の営業職、業界紙の記者を経て、2007年に保険ジャーナリスト、ファイナンシャル・プランナー(FP)として独立。保険業界と商品に精通し、保険営業とFP資格のある、日本では稀有な存在の保険ジャーナリストとして知られている。2010年、保険業界活性化を図るため、保険のすべてのチャネルを横断する「オーツードットコム 保険業界の明日を考える会」(現、トリプルA)を主宰。マスコミ出演、執筆、講演、相談で幅広く活躍中。近著は『保険選びは本当にカン違いだらけ』(SB新書)