ビジネス
2014年12月18日
折れない心「レジリエンス」を鍛える7つの技術【前編】
[連載] なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?【2】
文・久世浩司
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レジリエンスを鍛える7つの技術【1】ネガティブ感情の悪循環から脱出する


 それでは、「レジリエンス1‐2‐3ステップ」で使うことができる「レジリエンスを高める7つの技術」をご紹介しましょう。これらはすべて、研究に裏打ちされた実証的な手法をもとにしています。

 第1の技術が「ネガティブ感情の悪循環から脱出する」ことです。そのために効果的な方法が2種類あります。「感情のラベリング」と「気晴らし」です。

感情のラベリング」とは、目に見えない感情を「見える化」するテクニックです。ネガティブな感情に対処するためには、その対象である感情を見定めなくてはいけません。

 ところが感情は目で見ることも、手にとって触ることもできません。

 そこで「感情のラベリング」が重要となります。これは、自分の内面で生まれた感情に名前をつけることですぐに気づくための方法なのです。どんなことでもターゲットを「見える化」しないと、効果的に対処することができませんよね。それは感情でも同じです。

 『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』(SBクリエイティブ刊)には、私がレジリエンス・トレーニングで使用している教材をもとにした「感情カード」を特別付録としました。実際にこのカードを活用して、ストレス体験をした後に「感情のラベリング」を試してみると、自分の内面にどのような感情が流れていたのかがすぐに明らかになるはずです。自分に特有の感情パターンも理解できます。家族や友だち、同僚と「感情のラベリング」をすれば、同じ失敗体験やネガティブな出来事でも、それに反応して生まれてくる感情に大きな違いがあることに気づくはずです。

 ネガティブ感情の悪循環から抜け出すための2つめの方法が、「気晴らし」をすることです。

 ネガティブな感情は、とてもしつこいことに特徴があります。たとえば、不安な気持ちが生まれると、いつまでたっても忘れられないことはありませんか? ときには芋づる式に別の心配事が呼び出されて、不安な気持ちが地獄の堂々巡りのように繰り返されてしまいます。

「気晴らし」とは、そのネガティブ連鎖を断ち切るために、ネガティブな気持ちを「別のことに注意を"そらす"ことにあります。ネガティブな感情や思考から、自分の意識を別の対象にシフトすることです。その結果、ネガティブな感情の繰り返しがストップし、悪循環からスーッと抜け出すことができるのです。

 効果的な「気晴らし」をするコツは、まず体を使うことです。頭だけを使って別のことに注意を向けようとしても、しつこくて粘着性のあるネガティブな感情に負けてしまうからです。そして、自分に合った気晴らしの方法を選ぶことです。できれば、没頭できるぐらいのものがおすすめです。科学的根拠のある気晴らしには、主に4つのカテゴリーがあります。

(1)エクササイズやダンス、ジョギングや各種スポーツなどの「運動系」
(2)好きな音楽を鑑賞したり演奏したりする「音楽系」
(3)ヨガや瞑想、散歩など呼吸を落ち着かせる静かな活動である「呼吸系」
(4)日記や手紙など手を使って書くことで感情を表出化する「筆記系」

 これらはβエンドルフィンやセロトニンなどの良性ホルモンの分泌に作用するため、生理的に体の内面からもよい効果が期待できます。




◆関連リンク:動画でわかる「レジリエンス・トレーニング」
第1回 心の疲れない人が備える3つの特徴
第2回 職場における3大ストレスは...





なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?
実践版「レジリエンス・トレーニング」
久世浩司 著



【著者】久世 浩司(くぜ こうじ)
ポジティブ サイコロジー スクール代表。慶應義塾大学卒。P&Gにて、高級化粧品ブランドのマーケティング責任者としてブランド経営、商品・広告開発、次世代リーダー育成に携わる。その後、ポジティブ心理学、及びレジリエンスを活用した人材育成に従事。NHK「クローズアップ現代」で「折れない心の育て方・レジリエンスを知っていますか?」にてレジリエンス研修が放映された。著書に『「レジリエンス」の鍛え方』『親子で育てる折れない心 レジリエンスを鍛える20のレッスン』(実業之日本社)『なぜ一流の人はハードワークでも心が疲れないのか』(SBクリエイティブ)がある。認定レジリエンス マスタートレーナー。
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