カルチャー
2015年2月25日
なぜイヌは、働くお父さんの言うことを聞かないのか?
文・佐藤えり奈
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 仕事を終えて、満員電車に揺られ、家に帰宅したとたん飼いイヌにワンワン吠えられる。一家の大黒柱である自分に懐いてくれない――そんな経験、もしくは、いままさにそんな日々を送っている男性は、決して少なくないのではないでしょうか?

 飼いイヌがあなたのいうことを聞かないのはなぜでしょう? イヌが帰宅した父親を吠えるとき、よくあるのが「イヌが父親を吠えるのは、よそ者だと思っているから」「自分をボスだと思っているから」というものです。果たして本当にそうなのでしょうか?

イヌは父親をよそ者だと思っている?


『イヌの気持ちがわかる67の秘訣』より ※クリックすると拡大

 一般的に男性の低い声や大きな体格は、イヌに脅威を感じさせやすいものです。イヌは、ほかのイヌを攻撃したり、威嚇したりするとき、体の毛を逆立てて自分自身をより大きく見せようとし、低い声でうなる傾向があることからも明らかです。ですから、そもそも男性を苦手とするイヌは少なくありません。

 また、多くの父親は「早朝に出社して夜中に帰宅する」というライフスタイルでしょう。男性という性別、そしてこの在宅時間の少なさはハンデです。しかし、イヌとうまくやっている人も多いのだから、理由がこれだけというわけでもないでしょう。となると、イヌへの接し方に問題があるのかもしれません。

 まず、イヌが吠える原因は1つとはかぎりません。たとえば、父親が帰宅時に吠える理由には、大きく分けて3つの理由があります。どの意味で吠えているのか見分けるには、イヌの声のトーン(声調)や、吠えるスピード、尻尾のふり方や位置、耳の位置などのボディ・ランゲージの意味を正確に知る必要があります。

●吠える理由【1】──喜び、興奮しているため
 「お父さんが帰ってきた! 嬉しいよー!」という吠えです。この吠え方の特徴は、イヌが興奮すればするほど声のトーンは高く、吠えるスピードも速くなります。中ぐらいの高さ~高い声で「ワン! ワンワン!」と吠え、在宅しているほかの家族に知らせるように、吠えながら部屋を行き来することもあるでしょう。うれしさのあまり、悲鳴のように高い声や「クンクン」と甘えた声が混ざることもあります。

●吠える理由【2】──してほしいこと(要求)があるため
 「撫でてー!」「はやく、ここから出して!」「遊んで!」という吠えです。要求吠えともいいます。「ワン!」や「ワンワン!」というように、短く吠えては一時停止します。興奮すると吠え続けることもあります。飼い主を遊びに誘おうとして、イヌの「遊びのお辞儀」が一緒に見られることもあります。

●吠える理由【3】──脅威を感じて威嚇しているため
 低い声で「ワンワンワンワン!」と激しく吠えます。歯をむきだしにしていることもあり、エスカレートすると咬みつくなどの攻撃行動にでることもあります。「あっちへ行って!」という気持ちです。興奮で尻尾が激しく振られていたり、恐怖で尻尾がおしりの下に入ったりします。



イヌの気持ちがわかる67の秘訣
なぜどこにでも穴を掘ろうとするの?どうしていつも地面のにおいを嗅ぐ?
佐藤えり奈 著



【著者】佐藤えり奈(さとうえりな)
京都市生まれ。米国ミネソタ大学生物科学部生態進化行動学科卒業。生物学、動物の生態・行動学を学んだのち、英国のピーター・ネヴィル博士に師事しながら、COAPE(Centre of Applied Pet Ethology)にてディプロマ修了。現在、京都を中心にイヌの問題行動を解決するペット心理行動カウンセリングを行い、日本大学発のベンチャー企業であるスノードリーム株式会社でもカウンセラーを務める。飼い主向け・獣医師向けのセミナーも行っている。おもな著書は『イヌの「困った!」を解決する』『イヌの気持ちがわかる67の秘訣』(サイエンス・アイ新書)。
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