スキルアップ
2015年3月13日
マッキンゼーのエリートが「ノートを書く」ときに大切にしている3つの心構え
文・大嶋 祥誉
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ノートはアウトプットのためにある


 さらに言えば、「マーカーで色分けした効率のよいノートの取り方」や「見た目も美しく読み返したくなるノート整理」といったテクニカルな要素が、メディアでもよく取り上げられています。

 それらは決して意味がないわけではないのですが、問題解決の視点から見ると、どれも本質ではありません。なぜなら、いくらカラフルに色分けしたノートがつくれても、そこで満足して問題解決につながらなければ意味がないからです。

 とくに仕事のうえで取るノートは、何かのアウトプット=成果物につなげるためのもの。「真の問題はこれだ」「ここを変えれば状況が大きく動く」というようなアウトプットが見えてこないノートをいくら美しく取っていても、それでは単なる自己満足で終わってしまいます。

 ノートを使うという行為は、本来、頭の中にある思考をアウトプットするためのもの。そのアウトプットも自分のためであることはもちろん、他人に伝えたり、自分以外の誰かのために知識や知恵を整理して伝授していくためにするものです。
 ノートを使うことで、そうしたみんなのための知識や知恵を保存したり、広げていったりすることもできるわけです。

 それでは、何を心がけてノートを使っていけばいいのでしょうか。
 マッキンゼー流ノート術で大事なのは、次の3つの心構えです。

1 仮説を考えながらノートを取る


 すべては仮説から始まる、というのが問題解決の大前提です。仮説とは、問題解決をするときの「問題」に対する「仮の答え」です。
 ただし、仮の答えといっても、思いつきのようなフワッとしたものでは意味がありません。マッキンゼーでいう「仮説=仮の答え」とは「こうすれば、このような理由で、こうなるだろう」という論理的な見通しの立つものです。

 なぜ、そのような「仮説」を立てることが大前提になるのでしょうか。

 たとえば、自社の売り上げ不振の問題を解決したいときに、何の仮説も立てずに情報収集や分析をすると、どこまで何を調べれば「真の問題」を見つけることができ、その問題解決の鍵となる「イシュー(もっとも重要な課題)」につながるのか、なかなか見えてきません。
 情報は調べようと思えば、どこまでも調べられるし、問題もあげていこうと思えばいくつでもあげることができてしまいます。

 そうなってしまうと、時間の無駄ですし、なかなか問題解決ができないことでモチベーションが下がったり、やっと解決の糸口が見つかったと思っても、解決策(打ち手)のクオリティが低くなってしまいます。
 そこで必要になるのが「仮説」です。何が「真の問題」なのかを発見するときも、問題解決の鍵となる「イシュー(もっとも重要な課題)」を探すときも、どちらも「仮説」を立てることから入っていくのです。

 たとえば、あなたが「毎日、1時間ウォーキングをしよう」と決めたのに、続けられないという問題を抱えていたとしましょう。
 ウォーキングそのものは「健康のため」「体形を維持するため」によいことなので、自分でも続けたいと思っています。なのに続けられないのは、どこに「問題」があるのでしょうか。それを探るのが「問題発見のための仮説」です。
 問題発見のための仮説

・ウォーキングのコースに問題がある
・ウォーキングの歩き方に問題がある
・ウォーキングをする時間帯に問題がある

 他にもいくつかあるかもしれませんが、仮説を立てるときには、これまでのリサーチや集めた情報から可能性の高そうな仮説に絞って考えます。そのうえで、検証を行ってみて、もっとも有力な仮説の「当たり」をつけるのです。

 この場合なら、ウォーキングのコースは気に入っているし歩き方はとくに体に負担もなさそうなので、「ウォーキングをする時間帯に問題がある」という仮説がいちばん有力だったとします。
 ここでは、あなたが思いつく「ウォーキングを続けられない要因」の中から、そもそもどこに真の問題があるのかという「問題の在りか(Where)」を特定することがポイントになります。

 ウォーキングの時間を検証すると、夜に帰宅後1時間という設定をしていたのですが、仕事の都合で、どうしても帰りが遅くなったときは疲れているので、ついウォーキングをサボってしまったり、実行してもなんとなく気分が乗らないことが多かったのです。
 そうすると、「ウォーキングをする時間帯に問題がある」という問題に対して、何をすれば「問題解決」につながるのかを考えることができます。つまり、より課題解決策につながる本質的な仮説に進むわけです。

 この場合なら「ウォーキングをする時間帯を見直すこと」がウォーキング継続の鍵となるイシュー(もっとも重要な課題)を探すための仮説です。
 「夜は疲れているので、朝の出勤前のウォーキングにすれば必ず時間が確保できるのでは?」「電車に乗らずに通勤そのものをウォーキングにしてしまうといいのでは?」といった、問題の本質から外れない仮説を立てることができれば、問題解決に大きく弾みがつきます。

 「問題解決のためのノート術」では、常に仮説を意識することが重要な要素だと覚えておきましょう。



マッキンゼーのエリートはノートに何を書いているのか
トップコンサルタントの考える技術・書く技術
大嶋 祥誉 著



大嶋祥誉(おおしま さちよ)
センジュヒューマンデザインワークス代表取締役。エグゼクティブ・コーチ、組織開発・人材育成コンサルタント。上智大学外国語学部卒業。米国デューク大学Fuqua School of Business MBA取得。米国シカゴ大学大学院人文科学学科修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーでは、新規事業のフィージビリティスタディ、全社戦略立案、営業戦略立案などのコンサルティングプロジェクトに従事。その後、ウイリアム・エム・マーサー、ワトソンワイアット、グローバル・ベンチャー・キャピタル、三和総合研究所にて、経営戦略や人材マネジメントへのコンサルティングおよびベンチャー企業支援に携わる。2002年より独立し、エグゼクティブ・コーチング、組織変革コンサルティング、チームビルディングやリーダー開発に従事する。著書に『マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書』『マッキンゼー流 入社1年目ロジカルシンキングの教科書』(SBクリエイティブ)がある。
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