カルチャー
2015年4月7日
実は危険! 薬を飲むときに、ついやってしまう3つのこと
文・小谷寿美子
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(2)風邪薬をドリンク剤と一緒に飲む


 風邪を引いて熱が出た。
 しかし、明日は大事な会議で休めない。
 こんなときは、風邪薬とドリンク剤を飲んで、寝てしまおう!

 こういう方、意外といると思います。ドリンク剤ではなく、養命酒派、もしくは酒飲んで寝ちゃえなんて、豪快な方もいるかもしれません。
 でも、これは、薬剤師的にはお勧めできない方法です。

 「アルコールは肝臓に悪い」ということはみなさんご存じのことと思います。

 アルコールは解毒されるために肝臓に集まります。そこでアルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドができます。アセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素により酢酸に変わります。酢酸は筋肉や心臓に移行して熱エネルギーを作る経路の中に取り込まれます。その経路で熱エネルギーを作って、その燃えカスが二酸化炭素と水です。

 途中でできるアセトアルデヒドはとても不安定な物質です。不安定だから、何かとくっついて安定しようとします。たとえば、たんぱく質とくっついてたんぱく質を変性させます。脂質とくっつくと脂質も変性します。肝臓の細胞はたんぱく質と脂質でできていますね? そのため、たんぱく質と脂質が変性してしまうと、肝臓が通常通りに機能ができなくなります。

 アルコールは腸内細菌が出す毒素(エンドトキシンという)を小腸から門脈へ移行させる働きがあります。そして、門脈からエンドトキシンが肝臓に集まってきます。

 エンドトキシンを攻撃しようと免疫システムが起動します。攻撃のための化学物質がたくさん出されるのですが、エンドトキシンのみならず肝細胞も破壊されてしまいます。戦場で発射されたバズーカで敵のみならず味方もやられてしまうイメージです。

 そんなことで、養命酒+風邪薬や、お酒+風邪薬は、肝臓を痛めるので、薬剤師としてはやめていただきたいのです。

●薬にだってアルコールが入っている
 こうしたアルコールですが、実は薬にも含まれているのです。
 では、アルコールはどんなところに含まれているのでしょうか。

◎1瓶中のアルコール量(g)
 大正胃腸薬内服液:0.7
 ソルマック:0.68
 グロンサン強力内服液:0.6
 エスカップE100:1.27
 新グロモント:0.8
 リポビタンDスーパー:0.59
 リポビタンD:0.34
 ユンケルD:0.96
 ユンケル黄帝液:0.64
 (参考)ビール350mL:15.4

 少量ですがドリンク剤にもアルコールが含まれているのです。

 それだけではありません。
 風邪薬に含まれているアセトアミノフェンは肝障害を引き起こす可能性があります。代謝の途中でできる不安定な物質が肝臓を破壊するのです。

 肝障害を引き起こすアルコールとアセトアミノフェンが同時にあったらどうでしょうか? 答えは簡単です。ダブルで肝臓を攻撃します。

 そんな些細なことでしょ、と思うかもしれませんが、こうしたことが度重なって、大きな症状を引き起こすことだってあるわけです。

 風邪薬を飲んだら、アルコールはとらない! が正しいのです。



その薬があなたを殺す!
薬剤師が教える“知らないと毒になる”薬の話
小谷寿美子 著



【著者】小谷寿美子(こたにすみこ)
薬剤師。NRサプリメントアドバイザー。薬局界のセカンドオピニオン。明治薬科大学を505人いる学生のなか5位で卒業。薬剤師国家試験を240点中224点という高得点で合格した。市販薬も調剤も取り扱う、地域密着型の薬局チェーンに入社。社歴は10年以上。入社1年目にして、市販薬販売コンクールで1位。管理薬剤師として配属された店舗では半年で売り上げを2倍に上げた実績がある。市販薬、調剤のみならずサプリメントにも詳しい。薬やサプリメントの効かない飲み方、あぶない自己判断に日々、心を痛め、正しい薬の飲み方、飲み合わせを啓蒙中。
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