カルチャー
2015年4月7日
実は危険! 薬を飲むときに、ついやってしまう3つのこと
文・小谷寿美子
(3)風邪が治らないときに、だらだらと薬を飲み続ける
風邪薬は、正しく使えば不快な症状がなくなり、体力の温存に役立ついい薬です。
しかし、市販薬の副作用発生件数が堂々1位であると同時に、死亡発生件数が1位 であるのもまた風邪薬です。
たとえば、(1)で紹介した食道潰瘍も、風邪薬は消炎鎮痛剤を含むわけですから起こりえるわけです。
また、風邪薬でさらに恐い病気として「薬剤性肝障害」があります。
「薬剤性肝障害」とは、薬の副作用で肝機能が悪くなってしまうことをいいます。肝臓は、生命維持に必要な様々な働きをする大切な臓器です。薬の代謝(化学変化)は肝臓で行なわれることが多く、様々な代謝産物が肝臓に出現するため、副作用として肝機能障害が多いのです。
初期症状としては、「倦怠感」「発熱」「黄疸」「発疹」「吐き気・おう吐」「かゆみ」などがみられ、これらの症状が急に出現したり、持続したりします。
肝臓は、色々な働きをしている臓器です。ここがダメになると影響は多岐にわたります。ひどいときは、黄疸、出血が起こりやすくなる、意識を失う、静脈瘤をつくる、最悪、高い頻度で死亡する劇症肝炎という症状もあります。
●「風邪だと思ったら、薬剤製肝障害だった」というケースも多い
こんなふうに恐い薬剤性肝障害ですが、やっかいなところは、初期の症状が風邪の症状と似ているところです。
薬剤性肝障害になる患者さんのほとんどは、最初は軽い風邪で風邪薬を飲むのですが、その時飲みすぎたり、体質的な問題で薬剤性肝障害になることが多いです。
つまり、風邪がなかなか治らないなぁと思って風邪薬を使い続けているうちに薬剤性 肝障害の症状が進んでいることがあるのです。
そもそも風邪は3日で治るものです。長いものでも5日あれば治ります。3日分や5日分で使い終わる薬が多いのはそのためです。風邪薬を使い終わってもまだ熱が下がらなかったり、体にだるい症状が出ている時は薬剤性肝障害を疑ってください。
さらに大事なのは、治らないからといって、薬を必要以上に飲まないこと。
用法用量というのは動物実験からはじまり、治験をやっていく中で「効果が最大に出て、副作用が最小になる量」として決まったものです。したがって風邪薬を必要以上に飲んでも、効果は出ないのです。
●風邪薬は「1番目か2番目の症状」で選べ
なお、風邪薬に関するお勧めは、「一番目か二番目の症状」に関連する薬を買うことです。
風邪はあなたの弱い部分から症状が出てきます。私はのどですが、あなたは鼻かもしれません。
しかし、時がたつと、その症状は変わっていきます。
「のど」→「熱」かもしれませんし、
「のど」→「鼻」かもしれません。
「鼻」→「のど」かもしれませんし、
「鼻」→「熱」かもしれません。
実は「二番目に起こる症状」があなたの風邪でのメインの症状ということになります。ちなみに私は「のど」→「鼻」と進みます。のど痛は経過が早いので薬を使わず、鼻水に移行したら、鼻水の薬を使っています。
メインの症状を5日ほど過ごすと、ほぼ治るのですが、まれに違う症状が出ることがあります。咳が出る人もいれば鼻水が続く人もいます。これはもはや風邪ではありません。
具体的には、次のようなケースが疑われます。
1 風邪の症状で体力が落ちている時にかかってしまった細菌感染
2 体力が落ちている時に、現われてしまったアレルギー性鼻炎
3 どんどん気道の奥まで進んでいって気管支炎
4 薬の副作用
ちなみに、私は、細菌感染と気管支炎の両方が3番目に現われます。ここまできたらおとなしく病院を受診します。
話は戻りますが、風邪薬はこうした色々な症状に効くように、様々な成分を組み合わせています。「風邪薬」といっても、得意分野、不得意分野というのがあります。したがって、1番目と2番目に現われる症状によって、薬を使い分けるとよいでしょう。
はじめにのどが痛くてのど痛に高い効果のある薬を使ったとしても、のど痛が治ればもはやいらない薬。次の症状に合わせた薬を使ったほうがいいです。
「風邪薬」を選ぶ時の考え方として覚えておいていただけたらと思います。
(了)
【著者】小谷寿美子(こたにすみこ)
薬剤師。NRサプリメントアドバイザー。薬局界のセカンドオピニオン。明治薬科大学を505人いる学生のなか5位で卒業。薬剤師国家試験を240点中224点という高得点で合格した。市販薬も調剤も取り扱う、地域密着型の薬局チェーンに入社。社歴は10年以上。入社1年目にして、市販薬販売コンクールで1位。管理薬剤師として配属された店舗では半年で売り上げを2倍に上げた実績がある。市販薬、調剤のみならずサプリメントにも詳しい。薬やサプリメントの効かない飲み方、あぶない自己判断に日々、心を痛め、正しい薬の飲み方、飲み合わせを啓蒙中。
薬剤師。NRサプリメントアドバイザー。薬局界のセカンドオピニオン。明治薬科大学を505人いる学生のなか5位で卒業。薬剤師国家試験を240点中224点という高得点で合格した。市販薬も調剤も取り扱う、地域密着型の薬局チェーンに入社。社歴は10年以上。入社1年目にして、市販薬販売コンクールで1位。管理薬剤師として配属された店舗では半年で売り上げを2倍に上げた実績がある。市販薬、調剤のみならずサプリメントにも詳しい。薬やサプリメントの効かない飲み方、あぶない自己判断に日々、心を痛め、正しい薬の飲み方、飲み合わせを啓蒙中。