カルチャー
2015年9月10日
政治家、芸能人にも人気の「断食道場」とは?──断食道場体験記パート1
[連載] “レアメタル王”の世界裏読み・逆読み・斜め読み【1】
文・中村繁夫
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断食道場二日目「お腹がへって寝られない夜」


 入院の前にシンガポールから帰国したのだが、断食の練習のつもりで2日間はサラダだけしか摂らずに胃袋を慣らすことにした。

 ただでさえ胃拡張気味なので一気に断食にはいると空腹感に耐えられず3年前のように夜に抜け出し娑婆に出て居酒屋めぐりを決行するかもしれないと思ったからだ。ところが、そんな遊び半分の雰囲気は断食道場には微塵もない。何しろ自然に恵まれた人里離れた山の中であるからそんな気にはならなかったのだ。

 それでも2日目は空腹感のために夜は3回も目が覚めた。深夜でも温泉とサウナは開いているので朝の4時から温泉に浸かって空腹を紛らわせた。さて、2日目の朝一番の診療では問診と血圧測定と血糖値の測定である。

 体重は80.2Kg、身長が165.5CmでBMIは29.3である。

 血圧は下が85、上が135であった。

 食前血糖値は151(HbA1Cは8.5)で中性脂肪は170であった。

 診断の結果は堂々たる「メタボ」で、いずれの数値も健康な人の標準値と比べてかなり高めの数値である。

 僕の身長の場合は標準体重が60.3Kg、標準血圧は84~129、標準の血糖値は75~110、(標準HbA1Cは4.6~6.2)標準中性脂肪は30~149、であるから、いずれの数値も大幅オーバーという訳である。

 今回の断食の主な目的は糖尿病と高脂血症と高血圧の改善であるが、そのためには体重を絞るしかないからスリムになる副次効果も期待した。

 そもそも、日本の終戦時には糖尿病患者は全国で500人しかいなかったのが、今や予備軍を入れると2000万人以上である。高脂血症は3200万人、高血圧の人は少なく見積もって4000万人といわれている。いずれも日本人の過食と食生活の西洋化による生活習慣病であり、この現代病を退治することが健康な生活を送るためには何が何でも必要といっても過言ではないのだ。

人参ジュースを飲む筆者

 さて、人参ジュースを日に3回、黒糖の入った生姜茶も適宜に3回も摂ることに実は糖尿病の自分としては正直に言えば懐疑的であった。石原ドクターは私の常備薬の三種類の糖尿の薬を暫く止めて下さいという。一方、人参ジュースも黒糖入り生姜茶も甘いので「ヤバい」のではないかと不安感が先に立った。これは糖尿病で悩んでいる人でなければ判らない感覚だと思う。

 無論、主食のごはんやパンなどの炭水化物は食べていないのだから糖分を補給することは理解できるが「それなら断食修行にならない」という思いも一方にはあったのだ。

 ところが石原ドクターの話を聞いて得心したことが以下である。

 人間の空腹感というのは血糖値が下がった時に脳の視床下部の「空腹中枢」が感じるのである。従って、適切な時間に適当量の糖を摂取することが空腹感を遠ざけて、血糖値が上がった時に「満腹中枢」が満腹を感じるという仕組みが備わっているのである。

 変に思ったが、確かに食事はしていないのにそれほどお腹が減らないのである。
 不思議なもので人体には「低たんぱく発作」や「低脂肪発作」はないが「低血糖発作」が起こると「イライラ感、不安感、動機」で悩まされることは事実である。よって断食道場のメニューである「3回の人参ジュースと生姜茶」だけになっているのである。断食が終われば昼食に「そば」だけでビタミンやミネラルの補給は充分だとしているのもどうやら断食療法の隠れた戦略のようである。






中国との付き合い方はベトナムに学べ
中村繁夫 著



【著者】中村繁夫(なかむらしげお)
京都府生まれ。大学院在学中に世界35カ国を放浪。専門商社の蝶理に入社し、以後30年間レアメタル部門で輸入買い付けを担当する。2004年、部門ごとMBOを実施し、日本初のレアメタル専門商社アドバンストマテリアルジャパンの代表取締役社長に就任する。「レアメタル王」として、世界102 カ国で数多くの交渉を経験するなかで、ベトナム人の交渉術が日本人に参考になることを説く。近著は、『中国との付き合い方はベトナムに学べ』(SBクリエイティブ)。
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