カルチャー
2015年9月10日
政治家、芸能人にも人気の「断食道場」とは?──断食道場体験記パート1
[連載] “レアメタル王”の世界裏読み・逆読み・斜め読み【1】
文・中村繁夫
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 日本人中年男性の2人に1人が「メタボリックシンドローム」に悩んでいる。別名「死の四重奏」と呼ばれている。すなわち、豊かな飽食の時代の生活習慣病であり「糖尿病」「高脂血症」「高血圧」「肥満」のカルテットである。

 気がついた時には僕もこの「メタボ」に侵されていた。

なぜ断食道場に入門したのか?


 3年前に「無呼吸症候群」という病気で検査入院をした。肥満のために寝ている間に2分くらい呼吸が停止してしまう病気である。

 当時の掛かりつけの医師の診断では生活習慣病による肥満が原因であるから食事制限を身体で覚えるために病院食で4泊5日の入院が決定したわけである。

 ところが、夜になると「娑婆」が恋しくて夜な夜な近所の居酒屋で一杯やって深夜に病室に戻るということとなったために退院してもいっこうにダイエット効果はみられなかった。

 実は今年の春からも無呼吸症候群と腰痛と肩こりが酷くなり、しかも臨界型の糖尿病も悪化したため、掛かりつけの病院に相談に行ったところ即刻「入院の必要性がある」とのお達しが出た。

 理由は無呼吸睡眠や腰痛や肩こりではなく「正真正銘の糖尿病」の治療ということだった。肥満はいうに及ばず血圧も高めで高脂血症の立派な「死の四重奏」の徹底治療が入院の目的であった。

 仕方なく入院の日程を夏休み中に設定したが、ふと頭によぎったのが3年前の深夜の居酒屋通いのことである。病院から歩いて5分の場所に「和風居酒屋」「パブ風居酒屋」「中華レストラン」と、誘惑の3点セットがあるために、とてもじゃないが療養に打ち込むことは不可能であると直感した。

断食道場「ヒポクラテック サナトリウム」

 都会の病院では自己管理は困難であると思ったので知人に相談してみた。そこで初めて聞いたアイデアが伊豆山中にある人里離れた断食道場への緊急入院である。

 そういえば1年前に当社の社員が断食道場に通い喘息が完治しスリムになって出社してきたことを思い出した。即刻、7泊8日で盆明けの時期に緊急入院することになった。

 これまでここの断食道場に来た患者は30年で5万人といわれている。その中の政治家で首相経験者では安倍晋三首相と細川護煕氏と羽田孜氏がいる。他にも多くの政治家先生(順不同、尊称は省略)が来ているらしい。石原慎太郎、大島理森、枝野幸男、岡田克也、佐藤信二、山東昭子、仙石由人らがいる。まだまだ多くの政治家が来ているようだ。

 中曽根康弘氏もゴルフコースのついでに立ち寄ったらしい。この断食道場には多数の患者が訪れているから政治家の先生が来ていても不思議はない。政党や信条や宗教的な要素もないし、特定の地縁や血縁や人脈があるわけではない。しかも、多くの人々はリピーターであるのが面白い。要するに効くということなのだろう。

 一方、芸能人や文化人も多くこの断食道場に来ているようだ。坂本龍一、田中康夫、竹村健一、田中健、加賀美幸子、林真理子、浅野ゆう子、磯村みどり、千明子、上坂冬子、野口健、中村福助、樹木希林、十朱幸代、音無紀美子など数え上げれば切りがない。

 中村勘三郎さんは予約まで受けたが、残念ながら時遅く間に合わなかった由。これらの方々には成功例も多く在るが結果が出ていない方々もいるようだ。

 政治家にしても芸能人にしても断食道場に来た方々のタイプには何か良く似た傾向を示している気がする。一部の例外はあるかも知れないが、一般的にインテリタイプ、明るい性格で心根の優しいタイプ、バランス感覚のあるタイプの母集団がリピーターになっているようだ。道場主の石原結實ドクター自身がそうだから類は類を呼ぶという事かもしれない。

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中国との付き合い方はベトナムに学べ
中村繁夫 著



【著者】中村繁夫(なかむらしげお)
京都府生まれ。大学院在学中に世界35カ国を放浪。専門商社の蝶理に入社し、以後30年間レアメタル部門で輸入買い付けを担当する。2004年、部門ごとMBOを実施し、日本初のレアメタル専門商社アドバンストマテリアルジャパンの代表取締役社長に就任する。「レアメタル王」として、世界102 カ国で数多くの交渉を経験するなかで、ベトナム人の交渉術が日本人に参考になることを説く。近著は、『中国との付き合い方はベトナムに学べ』(SBクリエイティブ)。
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