カルチャー
2015年11月13日
酵素を含まない「死んだ食品」を口にしないほうがいい理由
[連載]
認知症がイヤなら「腸」を鍛えなさい【6】
文・新谷弘実
いい食材のカギ「酵素」――選ぶときの3つの基準
現代社会に生きる私たちは、たくさんの食材、たくさんの食品に囲まれています。それは、食糧が不足していた時代や、いまも食糧不足で苦しんでいる国や地域があることを思えば、大変に恵まれているといえるでしょう。
けれども、それゆえにかえって健康を損ねてしまうといった皮肉な状況にも陥っています。多くの食べ物や食と健康に関する情報が氾濫し、手軽に食べられる環境が揃っている中で、年を重ねてもなお頭も身体も健康であることを望むのであれば、本当によいものを選ぶ知恵が大切になってきます。
「そうはいっても、これだけ食べ物や情報があふれていると、何を基準に選べばよいのかわからない」という方もいるかもしれません。
しかし本当によいものを選ぶ基準は、実際はシンプルなのです。
ここまで説明してきたように、何を食べてきたか、これから何を食べていくかという食歴で、老後の健康は決定づけられます。
私が長い時間をかけて集めた患者さんたちの食歴データでは、腸相がよく、心身ともに健康な人たちは、長年にわたって酵素を含む新鮮な食べ物をたくさん摂り続けていたこと、そうした食生活を続けることで、酵素をつくり出す腸内細菌が活発に働ける腸内環境になるという好循環ができあがっていたことがわかっています。
ということは食材選びの基準はシンプルです。「酵素」があるかないかです。
私自身も、これを基準にしています。
・それは酵素の補給に役立つか
・それは酵素の働きを助けるか
・それは酵素を消耗しないか
この3つの視点に立って食材や食べるものを選んでみてください。そうすれば「健康のために何を食べたらよいのか」という迷いや疑問は減っていくはずです。
夜9時以降の食事は健康を遠ざける
酵素をポイントに食べ物を選んでいくと同時に、ぜひ、よい食べ物が健康維持に生かされるような生活も心がけていただきたいと思います。
なかでも重要となってくるのが夕食を摂る時間です。できれば就寝時間の5時間前には食べ終わっていることが理想です。寝るときには胃がからっぽになっていたほうがよいからです。
理由はいくつかありますが、夜間は自律神経のうち副交感神経が優位になり、身体がリラックスモードに入って活動量が落ちます。胃に食べ物が残っている状態で寝ると、インシュリンが急激に大量分泌されます。しかし細胞にエネルギーとして糖を回す量は少なくて済むので、残りはすべて脂肪に変えて蓄えてしまいます。
同時に夜9時を過ぎた頃から、体内にはBMAL1(ビーマルワン)という脂肪を蓄えるためのタンパク質が分泌され始めます。寝る前に食べ物が胃にあると、この2つの働きで生活習慣病の元である肥満になりやすいのです。
もうひとつの理由は睡眠の質が低下することです。
胃に食べ物が入った状態で横になると、内容物が喉まで逆流します。それが気管に入らないように身体は気道を狭めますから、寝ている間に断続的に無呼吸状態が起きる「睡眠時無呼吸症候群」を招くことになります。また胃がもたれて睡眠の質が悪くなり、慢性的な疲労も残りやすくなります。
睡眠は認知症とも関連が深いといわれているため、睡眠不足の状態は脳の健康にも影響します。肥満防止や睡眠の質を考えると、床につく5時間前には食べ終わっているほうがよいのです。
とはいえ仕事などがあるとそれもむずかしいでしょう。夕食が遅くなりがちという人は、せめて夜9時以降は食事をしないように心がけてください。
どうしてもお腹が空いてしまうときは果物を摂るようにします。果物は消化がよく、1時間程度で胃から腸へと移動しますし、酵素も豊富に摂ることができるからです。
(了)
新谷 弘実(しんや・ひろみ)
1935年福岡県出身。医学博士。ベス・イスラエル病院名誉外科部長。米国アルバート・アインシュタイン医科大学外科元教授。1960年順天堂大学医学部卒業後、1963年に渡米。1968年に「新谷式」と呼ばれる大腸内視鏡の挿入技術を考案し、世界で初めて開腹手術をすることなく内視鏡による大腸ポリープ切除に成功。その技術によりガン発症リスクを大きく減少させ、医学界に大きく貢献する。日米で35万例以上の胃腸内視鏡検査と10万例以上のポリープ除去手術を行ったこの分野の世界的権威。著書にミリオンセラーになった『病気にならない生き方』シリーズ(サンマーク出版)、『胃腸は語る』(弘文堂)、監修に『免疫力が上がる!「腸」健康法』(三笠書房)など多数ある。
1935年福岡県出身。医学博士。ベス・イスラエル病院名誉外科部長。米国アルバート・アインシュタイン医科大学外科元教授。1960年順天堂大学医学部卒業後、1963年に渡米。1968年に「新谷式」と呼ばれる大腸内視鏡の挿入技術を考案し、世界で初めて開腹手術をすることなく内視鏡による大腸ポリープ切除に成功。その技術によりガン発症リスクを大きく減少させ、医学界に大きく貢献する。日米で35万例以上の胃腸内視鏡検査と10万例以上のポリープ除去手術を行ったこの分野の世界的権威。著書にミリオンセラーになった『病気にならない生き方』シリーズ(サンマーク出版)、『胃腸は語る』(弘文堂)、監修に『免疫力が上がる!「腸」健康法』(三笠書房)など多数ある。