カルチャー
2015年11月17日
専門外の薬に対して、あまりにも無知な日本の医者の実態
[連載] だから医者は薬を飲まない【3】
文・和田 秀樹
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かかりつけ薬局があれば、薬の量が減らせる


『だから医者は薬を飲まない』(和田秀樹 著)

 総合的な診療ができないために、必要以上に薬が増えてしまうのを防ぐ方法があります。それは、かかりつけの薬局をつくることです。

 複数の病院を利用している場合、それぞれの病院の近くの薬局で薬をもらうという人もいるかもしれません。また、自宅や勤め先の近所の薬局で、まとめて薬をもらうという人もいるでしょう。

 基本的に医者に書いてもらった処方箋を持っていけば、どこの薬局でも薬を出してくれるわけですが、自宅や勤め先の近所などに、かかりつけの薬局があると、何かと便利だと思います。

 かかりつけの薬局のいいところは、まず薬の一元管理ができることです。

 複数の薬局で薬をもらうと、お薬手帳も複数になりますが、かかりつけの薬局で手帳を1つにしてもらうと、自分が服用した履歴がわかりやすくなります。特に複数の慢性疾患を抱えている患者さんの場合は、同じ薬が重複して処方されることがあるのですが、かかりつけの薬局があれば、薬剤師が重複使用を未然に防いでくれるでしょう。

 もちろん、かかりつけの薬局でなくてもお薬手帳を見せれば、重複使用を避けられると思います。それでも、かかりつけの薬局で顔なじみになった薬剤師は、患者さんがどんな薬を使っているのか、わりとよく覚えているものです。そのため重複だけでなく、飲み合わせが悪い場合などでも、気の利いた対処をしてくれるはずです。

 私自身も経験したことがありますが、ときには薬剤師さんがわざわざ病院に電話をしてくることがあります。
「いま患者さんはこの薬を飲んでいるのですが、こちらの薬を出しても大丈夫ですか」
 このように医者に確認を入れてくるのですから、患者さんとしても安心でしょう。

 かかりつけ薬局のメリットは厚生労働省も注目しており、2016年に「かかりつけ薬局」を認定する制度を導入すると発表しています。2015年6月3日の読売新聞に、次のような記事が載っています。

「一定の基準を満たす薬局は『健康情報拠点薬局(仮称)』を名乗れるようにして、利用者が薬の相談をしやすい環境を作る。薬の重複使用や飲み残しを減らし、医療費の抑制にもつなげたい考えだ。」

「利用者が薬の相談をしやすい環境を作る」と書いてありますが、その後に書かれている「薬の重複使用や飲み残しを減らし、医療費の抑制にもつなげたい」というところが、実はポイントではないかと思います。

 それはともかく、薬剤師は薬の専門家ですから、副作用のことだとか、いろいろと薬に関する相談をすることもできます。そういったメリットを考えると、やはりかかりつけの薬局を持つのがいいと思います。

(了)





だから医者は薬を飲まない
和田秀樹 著



和田 秀樹(わだ・ひでき)
1960年大阪府生まれ。1985年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在は精神科医。和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学大学院教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。著書に『だから、これまでの健康・医学常識を疑え! 』(ワック)、『医者よ、老人を殺すな!』(KKロングセラーズ)、『老人性うつ』(PHP研究所)、『医学部の大罪』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『東大の大罪』(朝日新聞出版)など多数。
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